原価の3要素と直接費・間接費
製造原価を材料費・労務費・経費の3要素に分け、さらに製品への跡付けで直接費・間接費を判定します。基本計算の型もここで固めます。
この単元で身につくこと
- ある費用が材料費・労務費・経費のどれにあたるかを判定できます。
- 製品への跡付けができるかどうかで、直接費・間接費を判定できます。
- 材料費(消費数量×消費単価)・労務費(作業時間×賃率)の基本計算ができます。
まずイメージ:先に費目、次に直接・間接の2段階
製造原価を分けるときは、順番が大切です。まず材料費・労務費・経費のどれか(費目)を決め、そのあとで直接費か間接費かを判定します。この2段階を混ぜてしまうと、第1問の分類問題で迷いやすくなります。原価計算初級の第1問は、この3要素と直接費・間接費の判定が中心で、配点のもっとも大きい大問です。まずは下の流れを頭に入れましょう。
図の見方:左から右へ「費目を決める → 直接費/間接費を判定する」の順です。迷ったら「特定の製品にそのまま結び付くか」を基準にしてください。
まず3要素に分ける(材料費・労務費・経費)
製造原価は、消費するものの種類で材料費・労務費・経費の3つに分けます。材料費は製品に投入した材料の消費額、労務費は製造に従事する人の賃金・給料など、経費は材料費・労務費以外の製造にかかった費用です。経費は「残り全部」なので、減価償却費・電力費・外注加工賃など幅広い項目が入ります。
たとえば、いすの脚に使う木材は材料費、組み立てる工員の賃金は労務費、工場の機械の減価償却費や電力費は経費です。まずはこの3つのどれにあたるかを、迷わず言えるようにしましょう。
確認:目の前の費用を見て「材料費・労務費・経費のどれか」を一言で言えるか確かめましょう。経費は「材料費でも労務費でもない製造費用」と押さえます。
次に直接費・間接費に分ける(製品への跡付け)
費目を決めたら、次は直接費か間接費かを判定します。基準は特定の製品に直接ひも付けられるかです。ある製品のためだけに使ったと跡付けできるなら直接費、複数の製品に共通して発生し、そのままでは1つの製品に結び付けられないなら間接費です。間接費はいったん製造間接費として集め、あとで配賦基準にもとづいて各製品へ割り当てます。3要素それぞれに直接・間接があるので、下の表で整理しましょう。
| 要素 | 直接費 | 間接費 |
|---|---|---|
| 材料費 | 直接材料費(製品の主材料) | 間接材料費(潤滑油・工場消耗品) |
| 労務費 | 直接労務費(組立工の賃金) | 間接労務費(工場長の給料) |
| 経費 | 直接経費(特定製品の外注加工賃) | 間接経費(工場の電力費・減価償却費) |
確認:直接・間接は金額の大小ではなく「特定の製品に跡付けできるか」で決まります。同じ材料費でも、主材料は直接材料費、潤滑油は間接材料費です。
基本計算(消費数量×単価・作業時間×賃率)
3要素の金額は、いずれも「量 × 単価」で求めます。材料費は消費数量 × 消費単価、労務費は作業時間 × 賃率です。まず量、次に単価という順番は、基礎概念で見た「資源の消費(量)」の考え方そのままです。
たとえば、材料を150kg消費し、消費単価が1kgあたり200円なら、材料費は150kg × 200円 = 30,000円です。工員が20時間作業し、賃率が1時間あたり1,500円なら、労務費は20時間 × 1,500円 = 30,000円です。なお、材料を仕入れたときの運賃などの付随費用(材料副費)や、材料の受け払いを記録する材料元帳といった用語も第1問で問われることがありますが、まずは3要素と直接・間接の判定、そして「量 × 単価」の計算を確実にしましょう。
確認:材料費は消費数量×消費単価、労務費は作業時間×賃率。式を「量が先、単価が後」で言えるようにします。
ユイ先生、直接費と間接費って、金額が大きいほうが直接費……ではないんですよね?
サクラ先生はい、金額の大小は関係ありません。見るのは「特定の製品にそのまま結び付けられるか」です。結び付けられれば直接費、共通で使うものなら間接費です。
ユイじゃあ、いろいろな製品に使う機械の潤滑油は間接費ですね。
サクラ先生そのとおりです。1つの製品に跡付けできないので、間接材料費としていったん集めてから配賦します。
例題で型をつかむ
次の①〜④について、材料費・労務費・経費のどれか、また直接費・間接費のどちらかを判定しなさい。①製品の本体に使う買入部品の消費額 ②複数の製品に共通して使う機械の潤滑油 ③製品を組み立てる工員の賃金 ④工場長の給料
- まず費目を決める:①買入部品=材料費、②潤滑油=材料費、③工員の賃金=労務費、④工場長の給料=労務費。
- 次に跡付けを判定する:①は製品本体に使うので跡付けできる、②は共通で使う、③は組み立てる製品に跡付けできる、④は工場全体を管理する。
- 直接・間接を決める:①直接材料費、②間接材料費、③直接労務費、④間接労務費。
- まとめる:買入部品は直接材料費、潤滑油は間接材料費、組立工の賃金は直接労務費、工場長の給料は間接労務費です。
ここで迷ったら:必ず「費目 → 直接・間接」の順で判定します。同じ材料費でも、製品に跡付けできる主材料は直接、共通で使う潤滑油は間接になります。
ある製品について、材料を150kg消費し消費単価は1kgあたり200円、直接工の作業時間は20時間で賃率は1時間あたり1,500円であった。材料費と労務費を求めなさい。
- 材料費の式を使う:消費数量 × 消費単価=150kg × 200円。
- 材料費を計算する:150 × 200=30,000円。
- 労務費の式を使う:作業時間 × 賃率=20時間 × 1,500円。
- 労務費を計算する:20 × 1,500=30,000円。
ここで迷ったら:材料費と労務費は式の形が違います。材料は「数量×単価」、労務は「時間×賃率」。単位(kg・時間)を式の左に置くと取り違えを防げます。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 製品を組み立てる工員に支払う賃金は、原価の3要素のうちどれにあたりますか?(答えを見る)
労務費です。製造に従事する人に支払う賃金・給料は労務費に分類します。
Q2. 機械の減価償却費や工場の電力費のように、材料費・労務費以外の製造費用をまとめて何といいますか?(答えを見る)
経費です。材料費でも労務費でもない製造費用は、まとめて経費として扱います。
Q3. 直接費と間接費を分ける基準として正しいものはどれですか?(答えを見る)
特定の製品に直接ひも付けられるか(直接費)、共通に発生して配賦するか(間接費)で分けます。金額の大小では決まりません。
Q4. 材料費を計算する式はどれですか?(答えを見る)
消費数量 × 消費単価です。労務費は作業時間 × 賃率で計算します。
Q5. 複数の製品に共通して使われる工場の機械の潤滑油は、どのように分類されますか?(答えを見る)
間接材料費です。材料費のうち、特定の製品に跡付けできず共通で使うものは間接材料費になります。
製造原価は、まず材料費・労務費・経費の3要素に分け、次に製品への跡付けができるかで直接費・間接費を判定します。金額は「量 × 単価」で求め、材料費は消費数量×消費単価、労務費は作業時間×賃率です。間接費はいったん製造間接費に集めてから配賦します。次の単元では、作った原価が売上原価となり利益になる流れを学びます。
簿記2級(工業簿記)では、材料費・労務費・経費の記帳と消費額の計算をさらに詳しく学びます。2級工業簿記の「原価の3要素と直接費・間接費」で確認できます。