製造間接費と配賦基準

共通に発生する費用を、合理的な基準で各製品へ割り振る考え方を整理し、第3問の配賦問題につなげていきましょう。

配賦は第3問の得点源

詳細分析レポートでは、第3問の半数以上が「配賦率 × 作業時間」の計算と期末在庫の処理でした。予定配賦率・配賦差異・基準の三点をセットで押さえておきましょう。

予定配賦率

予定製造間接費 ÷ 予定基準量。基準は直接労務時間・機械作業時間・直接材料費など、工程に合うものを選びます。

配賦差異

配賦額 − 実際発生額で求め、プラスなら過大配賦、マイナスなら過少配賦です。符号を言葉で説明できるようにしておきましょう。

資料の読み方

第3問では基準量(作業時間など)が別表に載ることがあります。配賦率 → 配賦額 → 在庫処理の順でメモすると混乱しません。

データは「日商簿記 原価計算初級 第3問 詳細分析レポート」を参照しています。

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製造間接費とは

  • 材料費労務費以外、または個々の製品に直接ひも付かない費用の総称です。
  • 例)間接材料費・間接労務費、電力費、減価償却費、修繕費 など。
  • 製品ごとの便益に対応する基準で配賦します(合理性がポイント)。

配賦基準の選び方

  • 直接労務時間(人手中心の工程)
  • 機械作業時間(機械中心の工程)
  • 直接材料費直接労務費(金額に比例させる場合)
  • 工程の実態に合い、測定が容易で、期間を通じて安定する基準を選びます。

予定配賦率の算定

  • 式:予定配賦率 = 予定製造間接費 ÷ 予定基準量
  • 例)予定製造間接費 600,000円、予定直接労務時間 3,000時間 → 200円/時
  • 各製品への配賦:予定配賦額 = 予定配賦率 × 実際基準量
予定配賦率の流れ 予定製造間接費を予定基準量で割って予定配賦率を求める手順の図 予定間接費 600,000 分子 ÷ 予定基準量 3,000h 分母 = 200円/時

会話で理解する:率→掛け算の流れ

ユイ: 図の分子・分母・結果は何を表していますか?

サクラ先生: 予定間接費÷予定基準量=予定配賦率です。配賦はこの率に実際基準量を掛けるだけ。のちほど差は過大・過少で調整します。

ユイ: まず覚えることは?

サクラ先生: 「率を先に決める→実績を掛ける→差を整える」。この3語をセットで口に出せればOKです。

ポイント:率→掛け算→差の調整。

差異の考え方(概念)

  • 期末に「配賦した額」と「実際に発生した額」の差が出ます。
  • 差がプラスなら過大配賦マイナスなら過小配賦(概念を掴めば十分です)。
  • 簿記初級では差異の詳細処理は深追いせず、配賦の合理性を重視しましょう。
本講座では「配賦率の算定」と「配賦の流れ」を確実に再現できることを目標にします。

配賦のイメージ(例)

製造間接費の配賦例 予定配賦率200円/時で、Job A(40h)に8,000円、Job B(60h)に12,000円を配賦 予定配賦率 200円/時= 600,000 ÷ 3,000h Job A 40h → 8,000円 Job B 60h → 12,000円

覚え方のコツ

  • 配賦率は前もって作る(予定)。当月の実績基準で配賦。
  • 配賦の根拠(基準)を言えるようにしておくとブレません。
  • 差異は「配賦合計」と「実際発生」の差額です。

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学習のヒント

  • 「基準→率→配賦」の順番を意識して手を動かす。
  • 配賦基準は工程の実態に合わせて選ぶと覚えやすいです。

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よくある質問

予定配賦率はいつ設定しますか?

期首に年間計画を基に設定し、月次ではその率を使って配賦します。試験では資料に示された予定額をそのまま利用しましょう。

配賦差異の符号が覚えられません

計算を「配賦額 − 実際発生額」で統一し、プラスなら過大配賦、マイナスなら過少配賦と覚えます。差が出た理由を言葉で説明できると定着します。

基準は何を優先して選べばよいですか?

工程の主役が人か機械かで判断しましょう。作業時間が測りやすいなら時間基準、材料費に比例するなら金額基準を選ぶと合理的です。

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