重要用語の全体像

5要素(資産負債純資産収益費用)を物語の対話で理解し、仕訳の土台を固めます。

このページは「試験の全体像」の続きです。図と具体例で「どの仲間か」「どちら側で増えるか」を体に入れましょう。

物語 Day 0:開店前夜(地図と3ステップ)

学習者:用語が多すぎて、何から覚えればいいか不安です…。

先生:大丈夫。最初は「言葉の海」に飛び込んだみたいに感じますが、泳ぎ方があります。

学習者:泳ぎ方?

先生:はい。簿記は3ステップで考えます。

  • どの仲間?(資産・負債・純資産・収益・費用)
  • 増えた?減った?(何がどう変化したか)
  • だから左(借)か右(貸)に書く

学習者:3つだけなら覚えられそう。

先生:「左=借方(かりかた)」「右=貸方(かしかた)」という言い方も、今はふーんでOK。大事なのは、仲間決め→増減→置く場所の順番です。

学習者:じゃあ、物語っぽく学べますか?

先生:もちろん。登場人物はあなたが店長の「文具店」。お金(現金)、ノートやペン(商品)、お客さまへのツケ(売掛金)、仕入先へのツケ(買掛金)…これらが日々動きます。

学習者:急に身近になりました!

先生:まずは地図を手に入れましょう。迷子防止の「簿記5要素の地図」です。今日は地図づくり→明日はB/SとP/L→明後日は仕訳の順でいきます。

物語 Day 1:簿記5要素の地図(どちらで増える?)

まずは会計の5要素を地図として掴みます。つまり、 資産負債純資産収益費用の「仲間」を決め、増減と左右(借/貸)を判断します。 ここでは略語や帳票の細かな話は置いておき、仲間→増減→左右だけに集中しましょう。

5要素の地図 図

借方で増える(左) 資産(貸借対照表=B/S) 現金・売掛金・棚卸資産・備品 など 費用(損益計算書=P/L) 仕入・給料・水道光熱費・広告宣伝費 など 貸方で増える(右) 負債(貸借対照表=B/S) 買掛金・未払金・借入金 など 純資産(貸借対照表=B/S) 資本金・繰越利益剰余金 など 収益(損益計算書=P/L) 売上・受取利息 など
迷ったら「仲間 → 増減 → 置く側(借/貸)」で判断。ここはDay 1のゴールです。下のミニクイズ(3問)で、用語がどの仲間かを声に出して確認しましょう。
ミニクイズ(3問)
  • Q1. 「売掛金」はどの仲間? → A. 資産(借方で増)
  • Q2. 「買掛金」はどの仲間? → A. 負債(貸方で増)
  • Q3. 「給料」はどの仲間? → A. 費用(借方で増)

関連用語(5要素)

物語 Day 3:要素→仕訳の3ステップ

学習者:「商品を掛けで売上げたら?」

先生仲間決め売上収益売掛金資産増減→収益が増、資産が増。左右→収益は貸方で増、資産は借方で増。よって 借:売掛金 / 貸:売上

学習者:「現金で備品を買ったら?」

先生備品資産(増は借方)、現金=資産(減は貸方)。借:備品 / 貸:現金

学習者:「給料を当座預金から振り込んだら?」

先生給料費用(増は借方)、当座預金資産(減は貸方)。借:給料 / 貸:当座預金

学習者:「買掛金を支払ったら?」

先生買掛金負債減ると借方)、現金資産(減ると貸方)。借:買掛金 / 貸:現金

よくある間違い(クリックで展開)
  • 「費用はお金が減るから貸方?」→ 費用は借方で増やす要素です。お金が出たことと、費用が発生したことは別の軸。
  • 「左・右が覚えられない」→ 手でL(Left)を作ると左手だけ親指と人差し指がLの形に。Left=借方、とセットで。
  • 「B/SとP/Lの違い」→ B/Sはいまの姿、P/Lは期間の成績。写真と成績表の比喩でOK。
ミニクイズ(3問)
ミニクイズ(3問)

関連用語(仕訳・帳簿)

物語 Day 2:やさしいB/SとP/L入門

Day 1の地図を見ながら、「写真」=B/S(いまの姿)「成績表」=P/L(期間の成績)の役割をやさしく確認します。

貸借対照表(B/S)=いまの姿(財産の写真)

損益計算書(P/L)=期間の成績(がんばりの結果)

B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)の2列図解 B/Sは左に資産、右に負債と純資産を上下に。P/Lは右に収益、左に費用と利益を上下に配置。P/Lの利益がB/Sの純資産へつながる。 貸借対照表(B/S)=いまの姿 資産 現金・売掛金・棚卸資産・備品 負債 買掛金・未払金・借入金 純資産 資本金・繰越利益剰余金 損益計算書(P/L)=期間の成績 収益 売上・受取利息 など 費用 仕入・給料・水道光熱費 など 利益(当期純利益) 収益 − 費用 の結果 期末振替(↑)→ 純資産
もう少し詳しく(読まなくてもOK)

「写真(B/S)」と「成績表(P/L)」は役割が違います。たとえば、今日は現金が減って備品を買った(写真の中身が入れ替わった)。同時に、月末までの売上と費用が積み上がって、どれだけ成果が出たか(成績)がわかります。成果は最終的にオーナーの取り分(純資産)へ蓄えられ、翌期のスタート地点になります。

ミニクイズ(3問)
  • Q1. B/Sに載る仲間は? → A. 資産・負債・純資産
  • Q2. P/Lは何を表す? → A. 期間の成績(収益と費用)
  • Q3. 利益は期末にどこへ? → A. B/Sの純資産(繰越利益剰余金など)

増減ルールの早見表

要素 増えるとき 減るとき 代表的な科目(例)
資産 借方 貸方 現金・普通預金・売掛金・棚卸資産・備品 など
負債 貸方 借方 買掛金・未払金・借入金 など
純資産 貸方 借方 資本金・繰越利益剰余金 など
収益 貸方 借方 売上・受取利息 など
費用 借方 貸方 仕入・給料・水道光熱費・広告宣伝費 など
「どちらで増えるか」を先に固定し、次に科目名を覚えると効率的です。

よく使う科目と用語集

混同に注意: 消耗品費備品。少額かつ短期で使い切るものは費用(消耗品費)、長く使うものは資産(備品)。

用語の詳細は上のリンク先で図表つき解説を参照できます。

物語:取引シーンで練習

学習者:商品を掛けで売った(110,000 円・税込)。

先生:収益(売上)が増、資産(売掛金)が増。消費税は初級では科目名を知っておけば十分(税額の精密計算は不要の指示が多い)。

借:売掛金 / 貸:売上(+必要なら 仮受消費税

学習者:備品を現金で購入した。

先生:資産(備品)が増、資産(現金)が減。

借:備品 / 貸:現金

学習者:給料を当座預金から振り込んだ。

先生:費用(給料)が増、資産(当座預金)が減。

借:給料 / 貸:当座預金

学習者:買掛金を支払った。

先生:負債(買掛金)が減=借方、資産(現金/預金)が減=貸方。

借:買掛金 / 貸:現金(または当座/普通預金)

ミニクイズ(クリックで答え)
  • Q. お客さまから前金(前受金)を現金で受け取った → A. 借:現金 / 貸:前受金(資産↑・負債↑)
  • Q. 携帯料金の請求書が届いた(支払いは来月) → A. 借:通信費 / 貸:未払金(費用↑・負債↑)
  • Q. 先月の未払金を現金で支払った → A. 借:未払金 / 貸:現金(負債↓・資産↓)

よくあるつまずき(やさしく回避)

左・右が混乱する

「借方=左」「貸方=右」。Left(左)を指で作ると、左手だけLの形に見えます。Left=借(ひだり)とセットで記憶。

資産と費用の違い

長く使う価値が残るなら資産(例:備品)、使うとその場で効果が尽きるなら費用(例:給料・水道光熱費)。迷ったら用語集へ。

B/SとP/Lの関係

P/L(期間の成績)の結果は期末に純資産へ振り替えられ、B/S(いまの姿)に反映されます。成績表の点数が、次の試合に向けたチームの実力になるイメージです。

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対応する演習