原価計算の基礎概念

原価計算の目的と、部門・製品・原価と収益という「見る単位」を最初に固めます。

この単元で身につくこと

まずイメージ:原価は「活動が資源を使った量」から生まれる

原価計算とは、製品やサービスを1つ作るのにいくらかかったかを測る仕組みです。「試験の全体像」で見たとおり、第1問では「目的・活動・資源」という基礎のことばがセットで問われます。ここで大切なのは、原価がいきなり金額として現れるのではなく、活動(作る仕事)が資源(材料・人手・設備)を消費し、その消費した量に単価を掛けて原価になる、という順番です。この三層の流れを先に固めておくと、この先の要素別計算や配賦がすべて同じ考え方の延長だと分かります。

原価が生まれる三層の流れ 目的(何のために測るか)を出発点に、活動(作る仕事)が資源を消費し、その消費量に単価を掛けて原価が計算される流れを示した図です。 目的何のために測るか価格・利益計画・管理 活動作る仕事をする切る・組み立てる など 資源の消費(量)材料・人手・設備を使う消費量 × 単価 = 原価

図の見方:左から右へ「なぜ測るのか(目的)→ 何をしたのか(活動)→ 何をどれだけ使ったか(資源の消費)」と読みます。原価は最後の「消費量 × 単価」で金額になります。

何のために原価を測るのか(目的)

原価計算の目的は、大きく3つあります。1つ目は価格を決めるため、2つ目は利益を計画するため、3つ目は原価のムダを見つけて管理するためです。売価をいくらにすれば利益が残るか、来期はいくら儲かる見込みか、どの工程にコストがかかりすぎているか——こうした判断は、製品1つあたりの原価が分かって初めて下せます。だから会社は手間をかけて原価を集計します。

たとえば1脚のいすを4,000円で作れると分かれば、5,000円で売れば1,000円の利益が見込めると判断できます。原価が分からなければ、売価が高すぎて売れないのか、安すぎて損しているのかも判断できません。

確認:「価格決定・利益計画・原価管理」の3つの目的を、声に出して言えるか確かめましょう。第1問ではこの「目的」がことばとして問われます。

活動が資源を消費する(原価の成り立ち)

原価は、活動資源を消費することで生まれます。ものを作るという活動(切る・削る・組み立てる・塗る)をおこなうと、そのために材料・人の作業時間・機械の電力といった資源が使われます。原価計算では、この「使われた量(消費量)」に単価を掛けて金額に直します。ここでのポイントは、金額そのものより先に「どれだけ使ったか」という量をとらえることです。公式範囲でも「資源の消費(量)」と、量がわざわざ明記されています。

たとえば木材を30kg使ったなら、これが消費量です。木材の単価が1kgあたり250円なら、材料の原価は30kg × 250円 = 7,500円と求まります。人の作業も同じで、作業時間(量)に1時間あたりの賃率(単価)を掛けます。

確認:原価は「消費量 × 単価」でできています。まず量、次に単価、という順番を固定しておきましょう。

どの単位で見るか(部門・製品・原価と収益)

同じ費用でも、どの単位でまとめて見るかで意味が変わります。工場を工程ごとに区切った部門という単位で見れば、どの部門にコストがかかっているかが分かります。製品(サービス)という単位で見れば、製品1つあたりの原価が分かります。原価計算では、この見る単位を目的に応じて切り替えます。部門ごとに費用の使い方に責任を持つ担当者(責任者)を決めることもあります。

そして、製品ごとに収益(売上)と原価を対応させると、その製品でいくら儲かったかという利益が見えてきます。ここで注意したいのが、原価と費用ということばの使い分けです。製造のために消費されたものは原価、販売や本社の活動のように製造の外で発生したものは費用(販売費及び一般管理費)として区別します。どちらも「損益計算の基本」で利益を求めるときにつながっていきます。

確認:部門で見るか製品で見るかは、目的しだいで切り替えます。原価(作るために消費)と費用(売る・本社の活動)の線引きも押さえましょう。

ユイ先生、「原価」と「費用」って、結局どう違うんですか? どちらもお金が出ていく気がします。

サクラ先生着目するのは「製造のために使ったかどうか」です。工場で製品を作るために消費したものが原価、営業や本社のように製造の外で発生したものが費用、と線を引きます。

ユイじゃあ、工場の電気代は原価で、本社の電気代は費用ですね。

サクラ先生そのとおりです。同じ電気代でも、どこで何のために使ったかで分かれます。まずは「工場の中か外か」で判断してみましょう。

例題で型をつかむ

例題1(活動が消費した資源を見分ける)

家具工房で、いすを組み立てる作業をおこなった。このとき「木材」「組立担当者の作業時間」「電動ドライバーの電力」を使った。これらは原価計算では何にあたるか、活動と資源の関係で説明しなさい。

  1. 活動を読む:おこなった活動は「いすを組み立てる」です。
  2. 消費されたものを探す:木材・作業時間・電力の3つが使われています。
  3. 資源に当てはめる:木材は材料という資源、作業時間は人手という資源、電力は設備を動かす資源です。
  4. 原価への道筋を確認する:それぞれ「消費量 × 単価」で金額に直すと、いすを作るための原価になります。

ここで迷ったら:まず「何をしたか(活動)」を1つに決め、その活動のために「何をどれだけ使ったか(資源の消費量)」を並べます。金額はその後で計算します。

例題2(部門と製品、見る単位を切り替える)

塗装部門で発生した塗料代と電力代の合計90,000円を、この部門で塗装した製品Aと製品Bに分けたい。どの単位で見て、どう考えればよいか説明しなさい。

  1. いまの単位を読む:90,000円は「塗装部門」という部門の単位で集まっています。
  2. 知りたい単位を決める:最終的に知りたいのは「製品Aと製品Bそれぞれの原価」という製品の単位です。
  3. 切り替えを考える:部門でまとまった費用を、塗装した量などの基準で製品A・Bへ割り当てます。
  4. 目的に戻る:製品ごとの原価が分かれば、製品ごとに売上と対応させて利益を計算できます。

ここで迷ったら:「いまどの単位でまとまっているか」と「最後にどの単位で知りたいか」を分けて考えます。割り当ての具体的な計算は「製造間接費と配賦」でくわしく扱います。

よくあるミス

原価と費用をひとまとめにする「どちらも支払いだから同じ」と考えてしまうミスです。原価は製造のために消費したもの、費用(販売費及び一般管理費)は販売や本社など製造の外で発生したものです。まず「工場の中か外か」で線を引きましょう。
販売や本社の活動を原価計算の外だと思い込む原価計算は工場だけの話に見えますが、製品ごとの利益を出すには販売費や一般管理費も対応させます。原価と費用を区別したうえで、最後は両方を使って利益を計算する、と押さえておきましょう。
金額だけを見て「量」を飛ばすいきなり金額で考えると、なぜその原価になったのかが説明できません。原価は「消費量 × 単価」でできています。量と単価に分けてとらえると、増減の理由まで説明できます。

ミニ演習(4問・即時採点)

Q1. 原価計算をおこなう主な目的として、最も適切なものはどれですか?(答えを見る)

製品やサービス1単位あたりの原価を知り、価格の決定や利益計画に役立てるためです。原価が分かって初めて、売価や利益の見込みを判断できます。

Q2. 原価が生まれる流れとして正しいものはどれですか?(答えを見る)

活動が資源を消費し、その消費量に単価を掛けて原価になります。まず量をとらえ、次に単価を掛ける順番が基本です。

Q3. 「製品1個あたりいくらかかったか」を知るために原価を集計する単位はどれですか?(答えを見る)

製品別(サービス別)の単位です。目的に応じて部門別で見ることもありますが、製品1個あたりの原価は製品の単位で集計します。

Q4. 工場で製品を作るために消費されたものは、原価計算では何として扱いますか?(答えを見る)

原価(製造原価)として扱います。販売や本社など製造の外で発生したものは費用(販売費及び一般管理費)として区別します。

原価計算は、価格決定・利益計画・原価管理という目的のためにおこないます。原価は「活動が資源を消費した量 × 単価」で生まれ、部門や製品という単位で見る対象を切り替えます。製造のために消費したものが原価、製造の外で発生したものが費用です。次の単元では、この原価を材料費・労務費・経費の3要素に分けて計算します。

対応する演習