損益分岐点の基本

損益分岐点は「ここから利益が出る」という折り返し地点です。図と式を行き来しながら、数字の意味を体で覚えていきましょう。

まずはイメージをそろえましょう

損益分岐点は「固定費を回収しきれる販売数量・売上高」を指す合図です。固定費変動費貢献利益という3つの言葉がどうつながるのか、順に確認します。

固定費
生産量にかかわらず一定のコスト。工場の家賃や基本給など、売上ゼロでも必要な費用です。
変動費
1個作るごとに増えていく費用。材料費や出来高給が該当します。単価から引くと1個あたりの「残り」が見えてきます。
貢献利益
単価 − 単位変動費。1個販売するたびに固定費の穴埋めへ積み上がる“貯金”だと考えると分かりやすくなります。

式で損益分岐点をとらえる

数量・売上高のいずれで求める場合も、で割るだけです。慣れるまでは「固定費 ÷ 1個あたりの貢献利益」と唱えてください。

  • 損益分岐点数量 = 固定費 ÷(単価 − 単位変動費
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷

求めた数量に単価を掛けても損益分岐点売上高が確認できます。計算式とセットで声に出しながら覚えていきましょう。

式の読み方

分母の(単価 − 単位変動費)は「1個売ると固定費が◯円減る」と読み替えましょう。で計算するときは、売上高の何割が固定費の回収に使えるかを確認する発想です。

単価が単位変動費より低いと分母が0以下になり、損益分岐点は成立しません。価格設定の妥当性チェックにも使える指標です。

小さな練習

単価2,000円・単位変動費1,200円・固定費320,000円の設定で、一緒に数量の損益分岐点を求めてみましょう。

考え方: 固定費を1個あたりの貢献利益で割ります。貢献利益は 2,000 − 1,200 = 800円です。

解: 320,000 ÷ 800 = 400個

売上高バージョン: 貢献利益率は 800 ÷ 2,000 = 0.4(40%)なので、固定費 ÷ 0.4 = 800,000円損益分岐点売上高です。さきほど求めた 400個 に単価 2,000円 を掛けても 800,000円 となり、同じ答えが得られます。

関連ページ

関連用語(用語集)

図で感じる損益分岐点

スライダーを動かして、売上線(青)と費用線(オレンジ)が交わる地点を体感しましょう。右側は利益、左側はまだ固定費が回収できていない領域です。

損益分岐点チャート
青い線は売上高、オレンジの線は総費用(固定費変動費)です。交点が損益分岐点であり、右側が利益の領域です。

会話で理解する:チャートの見方

ユイ: グラフのどこを見れば損益分岐点が分かりますか?

サクラ先生: 売上線(青)と総費用線(オレンジ)の交点です。右側が利益、左側が損失の領域。スライダーで条件を変えながら感覚を掴みましょう。

ユイ: 何と何の差で利益が生まれる?

サクラ先生: 売上−変動費貢献利益固定費を回収し、超えた分が営業利益です。

ポイント:交点=分岐点。貢献利益固定費回収。

損益分岐点数量:400個 損益分岐点売上高:800,000円 貢献利益率40%

仕上げの小問

自力で声に出しながら解いてみましょう。秒数ではなく「手順の理解」を優先します。

  1. 単価2,000円・単位変動費1,200円・固定費320,000円。損益分岐点数量は?(個)
  2. 貢献利益率40%・固定費320,000円。損益分岐点売上高は?(円)
解答の確認
1) 320,000 ÷ (2,000 − 1,200) = 400個
2) 320,000 ÷ 0.4 = 800,000円

演習へ

関連

対応する演習