損益計算の基本

製造原価と販管費を区別し、売上総利益・営業利益と「売上原価/製品」の振替仕訳まで通して押さえます。

この単元で身につくこと

まずイメージ:作った原価は「売れて初めて」利益につながる

製品を作るのにかかった原価(基礎概念で見た製造原価)は、作った時点ではまだ費用になりません。製品として倉庫にあるあいだは資産で、売れた分だけが「売上原価」に変わり、売上と対応して利益を生みます。第1問では、この売上原価への振り替えや売上総利益・営業利益の意味が頻出です。まずは「作る→在庫→売れる→利益」という流れと、下の勘定の動きを結び付けておきましょう。

図の見方:製品勘定の貸方(右)から出ていく600,000円が、そのまま売上原価勘定の借方(左)に入ります。ここが第1問で必ず問われる振り替えの流れです。

製造原価と販管費を分ける(工場か本社か)

損益計算の第一歩は、費用を製造原価販売費及び一般管理費(販管費)に分けることです。判定の基準はシンプルで、工場で製品を作るために発生したか(製造原価)、それとも販売や本社の活動で発生したか(販管費)です。工場の工員の賃金・材料費・工場設備の減価償却費は製造原価、営業担当者の給料・広告費・本社事務員の給料は販管費になります。

たとえば同じ「給料」でも、製品を組み立てる工員の賃金は製造原価、本社の事務員に支払う給料は販管費です。支払う名目ではなく、どこで何のために発生したかで分かれる点に注意しましょう。

確認:迷ったら「工場の中で製品を作るために発生したか」を問い直します。中なら製造原価、外なら販管費です。

2段階の利益(売上総利益 → 営業利益)

原価計算初級の損益計算書では、利益を2段階で求めます。まず売上高から売上原価を引いて売上総利益(いわゆる粗利)を出し、そこからさらに販売費及び一般管理費を引いて営業利益を出します。売上総利益は「作って売る」段階のもうけ、営業利益は「売るための費用や本社の費用まで引いた後」のもうけ、という違いです。

2段階の利益の並び(数値例)
項目金額(円)
売上高1,000,000
売上原価600,000
売上総利益400,000
販売費及び一般管理費300,000
営業利益100,000

確認:上から順に引き算するだけです。売上高−売上原価=売上総利益、売上総利益−販管費=営業利益、という2回の引き算を固定しましょう。

売れた分だけが売上原価になる(算式と振替仕訳)

当期に作った製品(当期製造原価)が、そのまま売上原価になるわけではありません。前期の売れ残り(期首製品有高)に当期完成分を足し、当期末の売れ残り(期末製品有高)を差し引いた売れた分が売上原価です。式にすると次のとおりです。

売上原価 = 期首製品有高 + 当期製造原価 − 期末製品有高

先ほどの数値なら、期首100,000円+当期700,000円−期末200,000円=600,000円が売上原価です。そしてこの売れた分を製品勘定から売上原価勘定へ移す仕訳が、第1問でくり返し問われる(借)売上原価/(貸)製品の振替仕訳です。製品という資産が減り、売上原価という費用が立つ、と読めば向きを覚えやすくなります。

確認:算式の「+期首・−期末」の向きと、振替仕訳が「(借)売上原価/(貸)製品」であることをセットで押さえましょう。

ユイ先生、「製造原価」と「売上原価」って似ていますが、何が違うんですか?

サクラ先生製造原価は当期に作った製品にかかった原価の合計、売上原価はそのうち当期に売れた分だけ、という違いです。

ユイ作っても売れ残ったら、その分は売上原価にならないんですね。

サクラ先生そうです。売れ残りは製品という資産として残ります。「作った量」と「売れた量」を分けて考えるのがコツです。

例題で型をつかむ

例題1(売上原価の算式と振替仕訳)

期首製品有高は100,000円、当期製造原価は700,000円、期末製品有高は200,000円であった。当期の売上原価を求め、売上原価に振り替える仕訳を示しなさい。

  1. 算式を思い出す:売上原価=期首製品有高+当期製造原価−期末製品有高です。
  2. 数値を入れる:100,000+700,000−200,000=600,000円が売上原価です。
  3. 動く勘定を決める:売れた分だけ製品(資産)が減り、売上原価(費用)が立ちます。
  4. 仕訳にする:(借)売上原価 600,000/(貸)製品 600,000。
例題1の答え(振替仕訳)
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売上原価600,000製品600,000

ここで迷ったら:算式の符号は「+期首・−期末」です。期首と期末の向きを逆にすると答えがずれるので、売れ残りが増えた分だけ売上原価は減る、と意味で確認しましょう。

例題2(売上総利益から営業利益まで)

当期の売上高は1,000,000円、売上原価は600,000円、販売費及び一般管理費は300,000円であった。売上総利益と営業利益を求めなさい。

  1. 売上総利益を出す:売上高1,000,000−売上原価600,000=400,000円。
  2. 販管費を確認する:販売費及び一般管理費は300,000円です。
  3. 営業利益を出す:売上総利益400,000−販管費300,000=100,000円。
  4. 意味を確認する:粗利は400,000円、売るための費用まで引いた後のもうけは100,000円です。

ここで迷ったら:2回の引き算の順番を固定します。1回目で売上総利益、2回目で営業利益。販管費を売上原価と一緒に引いてしまわないよう、段階を分けましょう。

よくあるミス

本社事務員の給料を製造原価に入れる「給料だから工員と同じ」と考えてしまうミスです。製造原価は工場で製品を作るために発生した費用だけです。本社事務員の給料は販売費及び一般管理費に入れます。「工場の中か外か」で判定しましょう。
製造原価と売上原価を同じものと考える当期に作った原価がそのまま売上原価になると思い込むミスです。売上原価は売れた分だけで、算式は「期首製品+当期製造原価−期末製品」です。作った量と売れた量を分けてとらえましょう。
振替仕訳の借方・貸方を逆にする「(借)製品/(貸)売上原価」と書いてしまうミスです。売れた分は製品(資産)が減り、売上原価(費用)が立つので、正しくは(借)売上原価/(貸)製品です。減る資産が貸方、と結び付けましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 次のうち、製造原価ではなく販売費及び一般管理費に入るものはどれですか?(答えを見る)

本社の事務員に支払う給料です。工場で製品を作るために発生した費用が製造原価、販売や本社の活動で発生した費用が販管費です。

Q2. 売上総利益はどのように計算しますか?(答えを見る)

売上高から売上原価を引いて求めます。ここからさらに販管費を引くと営業利益になります。

Q3. 売上原価の算式として正しいものはどれですか?(答えを見る)

期首製品有高+当期製造原価−期末製品有高です。売れ残り(期末)を差し引いた「売れた分」が売上原価です。

Q4. 製造した製品のうち、当期に売れた分を製品勘定から振り替える仕訳の組み合わせはどれですか?(答えを見る)

(借)売上原価/(貸)製品です。製品という資産が減り、売上原価という費用が立ちます。

Q5. 売上総利益から営業利益を求めるとき、差し引くものはどれですか?(答えを見る)

販売費及び一般管理費です。売上総利益から販管費を引いた残りが営業利益になります。

費用は工場か本社かで製造原価と販売費及び一般管理費に分けます。利益は2段階で、売上高−売上原価=売上総利益、売上総利益−販管費=営業利益です。売上原価は「期首製品+当期製造原価−期末製品」で求め、売れた分を(借)売上原価/(貸)製品で振り替えます。次の単元では、間接費を製品へ割り当てる配賦を学びます。

対応する演習