予算実績差異分析

予算と実績の売上高の差を、販売数量差異と販売価格差異に分けて計算できるようにします。

この単元で身につくこと

まずイメージ:差を「数量の差」と「価格の差」に分ける

第2問はCVP分析だけでなく、予算実績差異分析が出ることもあります(第2問は複数の小問で構成され、CVPと入れ替わる形で出題される可能性があります)。売上高が予算どおりにならなかったとき、その差が「売れた数量が違ったから」なのか「売った単価(価格)が違ったから」なのかを分けて見るのが差異分析です。原価計算初級では、この売上高の差異分析を扱います。まず図で、2つの差がどこにあたるのかをつかみましょう。

売上高差異を販売数量差異と販売価格差異に分ける面積図 横軸を数量、縦軸を単価とし、予算単価500円×予算数量1,000個の予算売上高を基準に、右へ広がった部分が販売数量差異(予算単価×増えた数量)、上に届かなかった部分が販売価格差異(下がった単価×実際数量)であることを示した模式図です。差は見やすいように誇張しています。 予算売上高 500,000円 予算単価500円 × 予算数量1,000個 販売価格差異 −22,000円(不利) 販売数量差異 +50,000円(有利) 予算単価500円 × 増えた100個 予算単価 500 実際単価 480 予算 1,000 実際 1,100 単価(円) 数量(個)

図の見方:予算の長方形(500円 × 1,000個 = 500,000円)を基準に、右へ広がった分=販売数量差異(増えた数量を予算単価で評価)、上に届かなかった分=販売価格差異(下がった単価を実際数量で評価)です。差は見やすいよう誇張しています。

売上高の差を「数量の差」と「価格の差」に分ける

まず、比べる2つの売上高を確認します。予算売上高=予算単価 × 予算数量、実際売上高=実際単価 × 実際数量です。この2つの差(売上高差異)を、数量が違ったことによる差と、単価が違ったことによる差の2つに分けます。

たとえば予算が「1,000個 × 500円」、実際が「1,100個 × 480円」だったとします。予算売上高は 1,000 × 500 = 500,000円、実際売上高は 1,100 × 480 = 528,000円で、売上高差異は 528,000 − 500,000 = +28,000円です。この+28,000円が、数量の差と価格の差のどちらからどれだけ生じたのかを、次の2つの式で分けていきます。

確認:予算売上高と実際売上高を、それぞれ「単価 × 数量」で先に出しておきます。

販売数量差異と販売価格差異の式

2つの差異は、掛け合わせる相手が決まっています。数量の違いは予算単価で、価格の違いは実際数量で掛ける、と覚えます。

売上高差異 = 販売数量差異 + 販売価格差異
差異
販売数量差異(実際数量 − 予算数量)× 予算単価
販売価格差異(実際単価 − 予算単価)× 実際数量

さきほどの例(予算1,000個×500円/実際1,100個×480円)で計算すると、販売数量差異は(1,100 − 1,000)× 500 = +50,000円、販売価格差異は(480 − 500)× 1,100 = −22,000円です。掛ける相手を取り違えないことが最大のポイントで、数量差異には予算単価、価格差異には実際数量を掛けます。

確認:数量差異は予算単価、価格差異は実際数量。掛ける相手を声に出して確かめましょう。

有利・不利を判定して合計する

差異の符号で、有利差異か不利差異かを判定します。プラスなら売上を押し上げた有利差異、マイナスなら押し下げた不利差異です。実際が予算を上回れば有利、下回れば不利、と考えても同じです。

先の例では、販売数量差異 +50,000円(有利)と販売価格差異 −22,000円(不利)を合計すると、+50,000 − 22,000 = +28,000円(有利)。これは売上高差異(実際売上高528,000円 − 予算売上高500,000円 = +28,000円)と一致します。2つの差異の合計が売上高差異に一致するかどうかは、よい検算になります。

確認:プラスは有利、マイナスは不利。2つの差異の合計が「実際売上高 − 予算売上高」と合うかを確かめます。

ユイ販売数量差異と販売価格差異で、どっちの式に実際数量を掛けるんでしたっけ?

サクラ先生「価格の差」のほうに実際数量を掛けます。値下げ・値上げの影響は、実際に売れた数量ぶんだけ効くからです。

ユイでは、数量の差のほうは?

サクラ先生そちらは予算単価で測ります。数量差異は予算単価、価格差異は実際数量、とセットで覚えましょう。

例題で型をつかむ

例題1(差異を2つに分けて合計する)

予算は販売数量1,000個・販売単価500円、実際は販売数量1,100個・販売単価480円だった。販売数量差異・販売価格差異を求め、それぞれ有利・不利を判定し、合計が売上高差異と一致することを確認しなさい。

  1. 予算・実際の売上高を出す:予算 1,000 × 500 = 500,000円、実際 1,100 × 480 = 528,000円。
  2. 販売数量差異を出す:(1,100 − 1,000)× 予算単価500 = +50,000円(有利)。
  3. 販売価格差異を出す:(480 − 500)× 実際数量1,100 = −22,000円(不利)。
  4. 合計して検算する:+50,000 − 22,000 = +28,000円。売上高差異 528,000 − 500,000 = +28,000円と一致します。

ここで迷ったら:価格差異に予算数量1,000を掛けないこと。価格差異は実際数量1,100を掛けます。

例題2(有利と不利が混ざるケース)

予算は販売数量1,000個・販売単価400円、実際は販売数量900個・販売単価450円だった。販売数量差異・販売価格差異を求め、有利・不利を判定しなさい。

  1. 予算・実際の売上高を出す:予算 1,000 × 400 = 400,000円、実際 900 × 450 = 405,000円。
  2. 販売数量差異を出す:(900 − 1,000)× 予算単価400 = −40,000円(不利)。数量が予算より減ったため不利です。
  3. 販売価格差異を出す:(450 − 400)× 実際数量900 = +45,000円(有利)。単価が上がったため有利です。
  4. 合計して検算する:−40,000 + 45,000 = +5,000円。売上高差異 405,000 − 400,000 = +5,000円と一致します。

ここで迷ったら:符号は「実際 − 予算」の向きで決まります。数量が減れば数量差異は不利、単価が上がれば価格差異は有利です。

よくあるミス

販売価格差異に予算数量を掛ける価格差異を「(実際単価 − 予算単価)× 予算数量」としてしまうミスです。価格差異に掛けるのは実際数量です。値下げ・値上げは実際に売れた数量ぶん効くため、実際数量を掛けます。
有利・不利(符号)を取り違えるマイナスの差異を有利と読み違えるミスです。プラスが有利、マイナスが不利。実際売上高が予算売上高を上回れば有利、下回れば不利、と実際 − 予算の向きで確認しましょう。
販売数量差異に実際単価を掛ける数量差異を「(実際数量 − 予算数量)× 実際単価」としてしまうミスです。数量差異に掛けるのは予算単価です。実際単価を使うと価格の影響が混ざってしまいます。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 販売数量差異を求める式はどれですか?(答えを見る)

(実際数量 − 予算数量)× 予算単価です。数量の違いは予算単価で測ります。実際単価を掛けると価格の影響が混ざります。

Q2. 販売価格差異の計算で掛け合わせる数量はどれですか?(答えを見る)

実際数量です。販売価格差異=(実際単価 − 予算単価)× 実際数量。価格の違いは実際に売れた数量ぶん効きます。

Q3. 予算1,000個×500円、実際1,100個×480円のとき、販売数量差異はいくらですか?(答えを見る)

+50,000円(有利)です。(1,100 − 1,000)× 500 = +50,000円。予算単価500円を掛けます。

Q4. 同じ条件(予算単価500円・実際単価480円・実際数量1,100個)で、販売価格差異はいくらですか?(答えを見る)

−22,000円(不利)です。(480 − 500)× 1,100 = −22,000円。予算数量1,000個を掛けると −20,000円になり誤りです。

Q5. 売上高差異の「有利差異」とは、どのような状態を指しますか?(答えを見る)

実際売上高が予算売上高を上回った状態です。数量差異と価格差異を合算した符号がプラスなら有利差異になります。

予算実績差異分析では、売上高の差を販売数量差異=(実際数量 − 予算数量)× 予算単価と、販売価格差異=(実際単価 − 予算単価)× 実際数量に分けます。符号で有利・不利を判定し、2つを合計すると売上高差異(実際 − 予算)に一致します。第2問はCVPと差異分析が入れ替わることがあるため、両方を計算できるようにしておきましょう。

2級工業簿記では、材料費・労務費など原価側の差異分析(標準原価計算)を学びます。工業簿記の「標準原価計算」で確認できます。

対応する演習