CVPの応用(目標利益・安全余裕率)
目標利益からの逆算と単価改定の影響、安全余裕率の見方までCVP分析を一歩進めます。
この単元で身につくこと
- 目標利益を達成するために必要な販売数量・売上高を逆算できます。
- 単価や費用が変わると、損益分岐点がどちらへ動くかを判断できます。
- 安全余裕率で、いまの売上が損益分岐点からどれだけ離れているかを読めます。
まずイメージ:基本の式を少し変えるだけ
「CVP分析の基本」では、固定費を貢献利益で割って損益分岐点を求めました。実務や第2問では、そこから一歩進んだ問いが出ます。「利益を◯円出すには何個売ればよいか」「値上げすると損益分岐点はどう動くか」。いずれも、基本の式の分子や条件を少し変えるだけで答えられます。損益分岐点は「利益ゼロ」の点なので、目標利益があるときは固定費に目標利益を足してから割る、というのが出発点です。
図の見方:分子は共通で「固定費 + 目標利益」。数量で答えるなら単位貢献利益で、売上高で答えるなら貢献利益率で割ります。
目標利益から必要数量・売上高を逆算する
損益分岐点の式は「固定費 ÷ 貢献利益」でした。ここに目標利益を組み込むと、狙った利益を出すために必要な販売量が分かります。ポイントは、分子を「固定費 + 目標利益」に変えるだけだという点です。
- 必要販売数量 =(固定費 + 目標利益)÷(単価 − 単位変動費)
- 必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 貢献利益率
たとえば単価2,000円・単位変動費1,200円・固定費320,000円で、目標利益80,000円を出したいとします。単位貢献利益は 2,000 − 1,200 = 800円、貢献利益率は 800 ÷ 2,000 = 0.4 です。必要販売数量は(320,000 + 80,000)÷ 800 = 500個、必要売上高は(320,000 + 80,000)÷ 0.4 = 1,000,000円となります。500個 × 単価2,000円 = 1,000,000円で、数量版と売上高版の答えが一致することも確認できます。
確認:損益分岐点は「利益ゼロ」なので分子は固定費だけ。目標利益があるときだけ、分子に目標利益を足します。
単価や費用が変わると損益分岐点はどう動くか
損益分岐点数量は「固定費 ÷ 単位貢献利益」です。だから、単位貢献利益が大きくなれば分岐点は下がり(少ない数量で固定費を回収できる)、単位貢献利益が小さくなれば分岐点は上がります。第2問では、条件を1つ変えたときに分岐点がどちらへ動くかを問う出題もあります。まず方向をつかみましょう。
- 単価を上げる(他が同じ)→ 単位貢献利益が増える → 損益分岐点は下がる
- 単位変動費が上がる → 単位貢献利益が減る → 損益分岐点は上がる
- 固定費が増える → 分子が増える → 損益分岐点は上がる
数値でも確かめてみましょう。単価2,000円・単位変動費1,200円・固定費320,000円のとき、損益分岐点数量は 320,000 ÷ 800 = 400個でした。ここで単価を2,200円へ値上げすると、単位貢献利益は1,000円に増え、分岐点は 320,000 ÷ 1,000 = 320個へ下がります。逆に固定費が400,000円へ増えると、分岐点は 400,000 ÷ 800 = 500個へ上がります。会社にとって有利な変化(値上げ・変動費の削減)は分岐点を下げ、不利な変化(固定費や変動費の増加)は分岐点を上げる、と整理できます。
確認:迷ったら「単位貢献利益が増えるか減るか」に戻ります。増えれば分岐点は下がり、減れば上がります。
安全余裕率で余裕を測る
安全余裕率は、いまの売上が損益分岐点からどれだけ離れているかを割合で表す指標です。式は次のとおりで、分母は実際売上高です。
安全余裕率 =(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高
値が0に近いほど、少し売上が落ちただけで赤字に近づく危うい状態です。逆に大きいほど、売上が下振れしても利益が残りやすい「余裕のある」状態と読めます。たとえば実際売上高が1,000,000円、損益分岐点売上高が800,000円なら、安全余裕率は(1,000,000 − 800,000)÷ 1,000,000 = 0.20(20%)です。もし損益分岐点売上高が900,000円まで上がっていれば、(1,000,000 − 900,000)÷ 1,000,000 = 0.10(10%)となり、余裕は小さくなります。
確認:分母は実際売上高です。損益分岐点売上高で割らないように注意しましょう。
参考:経営レバレッジ
貢献利益と固定費の割合から、売上の変化が利益をどれだけ増幅するかを見る「経営レバレッジ」という考え方もあります。固定費の割合が高い会社ほど、売上が増えたときの利益の伸びは大きくなりますが、売上が減ったときの利益の落ち込みも大きくなります。原価計算初級では計算までは求められません。ここでは「固定費が多い会社ほど、売上の増減が利益に大きく響く」という感覚だけ押さえておけば十分です。
例題で型をつかむ
単価2,000円、単位変動費1,200円、固定費320,000円のとき、目標利益80,000円を達成するために必要な販売数量と必要売上高を求めなさい。
- 分子をつくる:固定費320,000円 + 目標利益80,000円 = 400,000円。
- 単位貢献利益と貢献利益率を出す:2,000 − 1,200 = 800円、800 ÷ 2,000 = 0.4。
- 必要販売数量を出す:400,000円 ÷ 800円 = 500個。
- 必要売上高を出す:400,000円 ÷ 0.4 = 1,000,000円(500個 × 2,000円でも同じ)。
ここで迷ったら:分子は「固定費 + 目標利益」。目標利益を足し忘れて 320,000 ÷ 800 = 400個としないよう注意します。
実際売上高が1,000,000円、損益分岐点売上高が800,000円のとき、安全余裕率を求めなさい。
- 差を出す:実際売上高1,000,000円 − 損益分岐点売上高800,000円 = 200,000円。
- 実際売上高で割る:200,000円 ÷ 1,000,000円 = 0.20。
- 意味を読む:実際売上が損益分岐点を20%上回っている、余裕のある状態です。
ここで迷ったら:分母は実際売上高。損益分岐点売上高800,000円で割ると別の値になり、意味も変わってしまいます。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 目標利益を達成するために必要な販売数量を求めるとき、「固定費」に何を足して分子にしますか?(答えを見る)
目標利益です。必要数量=(固定費 + 目標利益)÷ 単位貢献利益。利益ゼロの損益分岐点に対し、目標利益ぶんを分子へ足します。
Q2. 固定費320,000円・目標利益80,000円・単位貢献利益800円のとき、必要な販売数量は何個ですか?(答えを見る)
500個です。(320,000 + 80,000)÷ 800 = 500個。目標利益を足さずに320,000 ÷ 800とすると400個になり誤りです。
Q3. 他の条件が同じまま販売単価を上げると、損益分岐点数量はどうなりますか?(答えを見る)
下がります。単価が上がると単位貢献利益が増え、固定費 ÷ 単位貢献利益で求める損益分岐点数量は下がります。
Q4. 安全余裕率を求める式はどれですか?(答えを見る)
(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高です。分母は実際売上高で、損益分岐点売上高で割らないよう注意します。
Q5. 実際売上高1,000,000円・損益分岐点売上高800,000円のとき、安全余裕率はいくつですか?(答えを見る)
0.20(20%)です。(1,000,000 − 800,000)÷ 1,000,000 = 0.20。実際売上が損益分岐点を20%上回っています。
CVPの応用では、固定費に目標利益を足して割ると、必要数量・必要売上高を逆算できます。単価アップや変動費ダウンは損益分岐点を下げ、固定費や変動費の増加は分岐点を上げます。安全余裕率=(実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高で、いまの売上の余裕を割合で読みます。次の単元では、予算と実績の差を分析する予算実績差異分析へ進みます。
2級工業簿記では、CVP分析を固変分解や複数製品のケースへ広げて学びます。工業簿記の「CVP分析」で確認できます。