標準原価計算の差異(材料・労務・間接費)
標準原価と実際原価の差異を起点に、材料価格差異・材料数量差異・労務差異・製造間接費差異へ分けて読み解けるようにしていきましょう。
このページの使い方
- 先に見る:用語集:標準原価の差異
- 後で解く:ミニ問題(M-IND-12 / M-IND-14 / M-IND-15)
- つなぎ:勘定連絡図
本文骨子
はじめに
標準原価は、先に「こうありたい基準」(価格・数量/時間)を決め、実際と比べて差を原因別に読み解く仕組みです。月々のブレを「価格」と「数量(能率)」に分けて眺めると、現場の改善点が見えてきます。
理解の道筋
まず標準原価と実際原価の差異を全体で捉え、その後に材料は価格差異と数量差異、労務はレート差異と能率差異、間接費は予算差異/能率差異等へ分けます。難しく見える式も、「値段のズレ×買った量」「かかった時間のズレ×標準賃率」といった日本語の式に言い換えられます。
手を動かす視点
有利/不利は、式に数字を入れて片側が小さくなる方向を確認するのが最短です。符号に迷ったら、具体的な数値で一度テストしましょう。
まとめ(要点)
- 標準原価と実際原価の差異を先に捉え、その内訳として各差異へ分解します。
- 材料では材料価格差異と材料数量差異を先に安定させます。
- 有利/不利は式に数値を入れて確認し、製造間接費差異は配賦差異との関係も押さえます。
差異の区分と式(早見)
| 区分 | 日本語の式 | 数式 |
|---|---|---|
| 材料価格差異 | 買った値段のズレ × 実際に買った量 | (実際価格 − 標準価格)× 実際数量 |
| 材料数量差異 | 使った量のズレ × 標準価格 | (実際数量 − 許容標準数量)× 標準価格 |
| 労務レート差異 | 支払賃率のズレ × 実際時間 | (実際賃率 − 標準賃率)× 実際時間 |
| 労務能率差異 | かかった時間のズレ × 標準賃率 | (実際時間 − 許容標準時間)× 標準賃率 |
ミニ例
材料:標準価格500、実際価格480、実際数量1,200 → 価格差異(480−500)×1,200=−24,000(有利)。標準数量1,150 → 数量差異(1,200−1,150)×500=+25,000(不利)。
解説(導出の手順)
- 区分を決める:材料は価格差異と数量差異に分けます。
- 価格差異=(実際価格−標準価格)×実際数量=(480−500)×1,200=−24,000。実際の方が安いので有利です。
- 数量差異=(実際数量−許容標準数量)×標準価格=(1,200−1,150)×500=+25,000。予定より多く使っており不利です。
- 符号の解釈:数値に代入して「小さくなる側=有利」と覚えると、迷いにくくなります。
完全版(数値つき・製造間接費差異)
変動と固定を分けて差異を読みます。ここでは4差異法(変動:予算/能率、固定:予算/容量)で示します。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 標準変動OH率(SVOR) | 300円/h |
| 固定OH予算(FOHB) | 200,000円 |
| 基準操業度(時間) | 1,000h |
| 実際時間(AH) | 1,050h |
| 許容標準時間(SH) | 980h |
| 実際変動OH(AVOR) | 315,000円 |
| 実際固定OH(AFOH) | 210,000円 |
| 差異 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| 変動OH 予算差異 | AVOR − (SVOR×AH)=315,000 −(300×1,050) | 0(±0) |
| 変動OH 能率差異 | (AH−SH)×SVOR =(1,050−980)×300 | +21,000(不利) |
| 固定OH 予算差異 | AFOH − FOHB = 210,000 − 200,000 | +10,000(不利) |
| 固定OH 容量(操業度)差異 | FOHB −(標準固定OH率×SH)=200,000 −((200,000/1,000)×980) | +4,000(不利) |
メモリヒント:変動=価格×時間で2差異、固定=予算/容量で2差異。容量差異は基準時間を使って固定費配賦額を求めます。
間接費4差異(早見)
| 区分 | 式 | 不利/有利の出方 |
|---|---|---|
| 変動OH 予算差異 | AVOR − SVOR×AH | 実際の変動OHが高い→不利 |
| 変動OH 能率差異 | (AH − SH)×SVOR | 実際時間が多い→不利 |
| 固定OH 予算差異 | AFOH − FOHB | 実際固定OHが高い→不利 |
| 固定OH 容量差異 | FOHB − R×SH | 稼働(SH)が基準より小さい→不利 |
完全版(数値つき・材料差異)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 標準価格 | 500円/kg |
| 実際価格 | 480円/kg |
| 実際数量 | 1,200kg |
| 許容標準数量 | 1,150kg |
| 差異 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| 価格差異 | (480−500)×1,200 | −24,000(有利) |
| 数量差異 | (1,200−1,150)×500 | +25,000(不利) |
メモリヒント:価格は実際価格−標準価格×実際数量/数量は実際数量−許容標準数量×標準価格。
完全版(数値つき・労務差異)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 標準賃率(SR) | 1,200円/h |
| 実際賃率(AR) | 1,280円/h |
| 実際時間(AH) | 1,500h |
| 許容標準時間(SH) | 1,420h |
| 差異 | 式 | 結果 |
|---|---|---|
| レート差異 | (AR−SR)×AH =(1,280−1,200)×1,500 | +120,000(不利) |
| 能率差異 | (AH−SH)×SR =(1,500−1,420)×1,200 | +96,000(不利) |
メモリヒント:レートは実際時間で評価/能率は標準賃率で評価。符号は数値を代入して方向(有利/不利)を確認。
演習はミニ問題(差異分析)へ。
1分で型
- 総差異を見ずに、いきなり材料価格差異や能率差異へ飛んでいませんか。
- 材料差異は「価格」と「数量」、労務差異は「レート」と「能率」に言い換えられますか。
- 最後に、差異をどこへ振り替えるかまで一続きで説明できますか。
答えの並びは図と同じです。標準設定 → 総差異 → 内訳 → 差異処理、の順が崩れなければ計算式も取り違えにくくなります。
1行ミニチェック
「標準設定 → 総差異 → 内訳 → 差異処理」と口に出して言えればOKです。
この章のゴール
- 標準原価と実際原価の差異を説明できる
- 材料価格差異・材料数量差異・製造間接費差異の計算ができる
- 差異の意味(有利/不利)を解釈できる
学ぶ順番
- 標準の設定(標準価格・標準数量 等)
- 標準原価と実際原価の差異を全体で確認
- 材料価格差異・材料数量差異へ分解
- 労務差異・製造間接費差異の読み解きと処理
図解:標準原価計算の全体フロー
この図で先に見る点: 標準原価計算は 標準を決める → 総差異を見る → 内訳を分ける → 差異処理を決める の順で読むと崩れません。次の差異分解図は、その「4」の部分を細かくしたものです。
取り違え注意
- 価格要因か数量(能率)要因かを必ず切り分ける
- 符号で混乱しない(式に数字を入れて方向を確認)
- 間接費差異の分解(予算/能率 等)は指示に従う
そのまま手を動かす5問
- 材料価格差異の式を日本語で。
- 労務能率差異の式を日本語で。
- 価格差異が有利になるのはどんな時?
- 数量差異が不利になるのはどんな時?
- 配賦差異の方向の読み方を一言で。
参考解答(折りたたみ)
1) 材料価格差異の式(日本語)
買った値段のズレ×実際に買った量。式は(実際価格−標準価格)×実際数量。
2) 労務能率差異の式(日本語)
かかった時間のズレ×標準賃率。式は(実際時間−許容標準時間)×標準賃率。
3) 価格差異が有利になるのは?
実際価格が標準価格より低いとき(安く買えたとき)。
4) 数量差異が不利になるのは?
実際数量が許容標準数量より多いとき(予定より多く使ったとき)。
5) 配賦差異の方向の読み方
配賦額>実際発生=過大配賦(有利)/配賦額<実際発生=過少配賦(不利)。
やさしい読み替え
- 価格差異=「買った値段のズレ部分」
- 数量差異=「使った量のズレ部分」
- 能率差異=「かかった時間のズレ部分」
図解:価格差異と数量(能率)差異
この図で先に見る点: 何の差異かを決めてから、さらに 価格系 と 数量・能率系 に分けます。順番を逆にすると式を取り違えやすくなります。
図解(テキスト版):製造間接費の総差異→内訳
- 変動間接費=予算差異(AVOR − SVOR×AH)+ 能率差異((AH−SH)×SVOR)
- 固定間接費=予算差異(AFOH − FOHB)+ 容量差異(FOHB − R×SH)
- 総差異=変動の2差異+固定の2差異
まずは式の位置関係を固定化し、数値は上の完全版で確認していきましょう。
対話でつかむ:標準原価と差異の読み方
講師/学習者の会話で、価格要因と数量(能率)要因を切り分ける感覚を磨きます。
学習者:材料差異はどう分けますか?
講師:価格差異(実際価格−標準価格)×実際数量 と、数量差異(実際数量−許容標準数量)×標準価格 です。
学習者:労務もレート差異と能率差異に分ける、と。
講師:はい。どちらの要因でズレたかが見えるのが標準原価の価値です。
学習者:有利/不利の判定は?
講師:コスト観点では、実際が小さければ有利、大きければ不利。式に数字を入れて方向を確かめましょう。
学習者:配賦差異(間接費)はどんな位置付けですか?
講師:予定配賦と実際のズレです。能率差異や予算差異など内訳を問う問題もありますが、まずは総額と処理方針を押さえます。
学習者:差異が出ても、改善につなげてこそ意味がある、と。
講師:まさに。原因→対策まで言えると実務でも強いです。
現場での使い所は「第6話:差異分析」も参考にしてください。
差異の分解(型)
| 区分 | 計算式(概念) | 方向 |
|---|---|---|
| 材料価格差異 | (実際価格 − 標準価格)× 実際数量 | 実際価格が高ければ不利 |
| 材料数量差異 | (実際数量 − 許容標準数量)× 標準価格 | 実際数量が多ければ不利 |
| 労務レート差異 | (実際賃率 − 標準賃率)× 実際時間 | 実際賃率が高ければ不利 |
| 労務能率差異 | (実際時間 − 許容標準時間)× 標準賃率 | 実際時間が多ければ不利 |