有価証券(売買目的・満期保有・その他・評価差額金)

有価証券は、まず「何のために持っているか(保有目的)」で3つに分け、その区分ごとに期末の評価方法と損益の置き場が決まります。売買目的・満期保有・その他の判定を軸に、時価評価・償却原価法(定額法)・全部純資産直入法と、評価差額金の位置づけまでを順に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:保有目的を決めると評価方法が決まる

有価証券の会計処理では、時価で評価するのかしないのか、評価の差額を当期の損益(P/L)に入れるのか純資産に入れるのか——これらが区分ごとに違います。そして区分は、値上がり益をねらう短期売買なのか、満期まで持つ債券なのか、それ以外かという保有目的で決まります。先に保有目的を決めてしまえば、あとは対応に沿って処理できます。

有価証券の区分ごとの評価方法と損益の置き場を示す図 売買目的・満期保有・その他の3区分と売却時について、期末の評価方法と評価差額・損益をどこに計上するかを並べて比較します。 保有目的を先に決めると、評価方法と損益の置き場が決まります 売買目的 期末に時価で評価 評価差額は当期の 損益(P/L)へ 科目:有価証券 評価益/評価損 満期保有目的債券 償却原価法(定額法) 差額を期間で均等配分 時価評価はしない 科目:有価証券利息 (当期の損益) その他有価証券 期末に時価で評価 評価差額は純資産へ (P/Lを通さない) 科目:その他有価証券 評価差額金 売却時 帳簿価額と売却額 の差を計上 評価とは別物 科目:有価証券 売却益/売却損

図の見方:左の3つが保有中の期末評価、右端が手放したときの処理です。売買目的とその他はどちらも時価評価ですが、差額の置き場(P/Lか純資産か)が違います。満期保有だけは時価評価をしません。

保有目的による分類

有価証券は保有目的で、売買目的有価証券満期保有目的債券・その他有価証券に分けます(このほか子会社株式・関連会社株式もありますが、まずはこの3区分を軸にします)。区分が決まると、期末の評価方法と、評価差額をどこに計上するかが自動的に決まります。判定は「短期で売買してもうけるか」「満期まで持つ債券か」「どちらでもないか」の順で考えると迷いにくいです。

区分ごとの期末評価と評価差額の置き場
区分期末評価評価差額の置き場代表科目
売買目的時価評価当期の損益(P/L)有価証券評価益/評価損
満期保有目的債券償却原価法(定額法)当期の損益有価証券利息
その他有価証券時価評価純資産その他有価証券評価差額金
(売却時)帳簿価額との差当期の損益有価証券売却益/売却損

表の見方:売買目的とその他はどちらも時価評価ですが、差額の行き先が「損益」か「純資産」かで分かれます。満期保有だけは時価評価をしません。

売買目的有価証券の期末評価

売買目的有価証券は、期末に時価で評価替えします。時価が取得原価より高ければ、差額だけ帳簿価額を増やして有価証券評価益を計上します。低ければ、帳簿価額を減らして有価証券評価損を計上します。いずれも当期の損益(P/L)に反映します。ここで大切なのは、保有中の時価変動による損益(評価益・評価損)と、実際に手放したときの損益(有価証券売却益・売却損)を、別の科目で使い分けることです。

確認:売買目的は時価評価し、評価差額は当期の損益へ。保有中は評価益・評価損、売却時は売却益・売却損と科目を分けます。

公社債を売買したときの端数利息の処理

公社債(国債・社債など)は利払日以外の日にも売買され、そのときは直前の利払日の翌日から売買日までの利息相当額を、売買代金と区分して受け払いします。この利息相当額を端数利息(経過利息)といい、証券本体の価額とは別に有価証券利息勘定で処理します。端数利息は「額面金額×年利率×経過日数÷365日」で日割計算します。

処理の向きは買い手と売り手で逆になります。買い手は、支払った端数利息を有価証券利息の借方に計上し、売り手は、受け取った端数利息を有価証券利息の貸方に計上します。なお、受取配当金や利息の期中受け取りの仕訳は基礎論点のため、本ページでは扱いません。

確認:端数利息は額面金額×年利率×経過日数÷365日で日割計算し、売買代金と区分して有価証券利息で処理します。買い手は借方、売り手は貸方に計上します。

満期保有目的債券(償却原価法=定額法)

満期保有目的債券は、満期まで持つ前提なので途中の時価変動を評価に反映しません。ただし、額面(満期に受け取る金額)と取得価額に差があるときは、その差額を満期までの期間にわたって少しずつ帳簿価額に足し込み(または差し引き)、満期に額面へそろえます。この方法が償却原価法で、2級では定額法で処理します。定額法では「(額面−取得価額)÷保有年数」を毎期の償却額とし、(借)満期保有目的債券/(貸)有価証券利息として計上します。

利息法による償却は1級(簿記1級)の範囲です。2級では定額法だけを押さえれば十分です。

確認:満期保有目的債券は時価評価しません。額面と取得価額の差を、定額法で毎期の有価証券利息として計上し、帳簿価額を額面に近づけます。

その他有価証券(全部純資産直入法)

その他有価証券は、売買目的でも満期保有でもない区分です。期末には時価で評価しますが、評価差額は当期の損益(P/L)に入れず、その他有価証券評価差額金として純資産に直接計上します。これが全部純資産直入法です。売却などで実際に手放すまでは、もうけや損として確定させない、という考え方です。時価が上がっても下がっても、差額は純資産の項目として表示します。

なお、その他有価証券の評価差額には、税効果会計を加味した正式な処理があります。繰延税金資産・負債を使う形は、税効果会計の単元で扱います。

確認:その他有価証券は時価評価しますが、評価差額はP/Lを通さず、その他有価証券評価差額金として純資産に置きます。

ユイ評価益・評価損と、売却益・売却損は何が違うのですか?

サクラ先生評価は保有中の時価変動、売却は手放したときの差額です。保有中は有価証券評価益・評価損、手放したら有価証券売却益・売却損と、科目を分けて使います。

ユイその他有価証券の評価差額も、評価益として損益に入れてよいのですか?

サクラ先生いいえ。その他有価証券は全部純資産直入法なので、評価差額はP/Lを通さず、評価差額金として純資産に置きます。

例題で型をつかむ

例題1(売買目的の期末評価)

売買目的で株式100株を1株600円で取得していた(取得原価60,000円)。期末の時価は1株680円である。期末の評価替えの仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:売買目的なので、期末に時価で評価替えします。
  2. 増減を決める:時価100株×680円=68,000円で、取得原価60,000円より8,000円高く、帳簿価額を増やします。
  3. 左右を決める:資産(売買目的有価証券)が増えるので借方、相手は有価証券評価益で貸方です。
  4. 照合する:68,000−60,000=8,000円が評価益です。
例題1の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売買目的有価証券8,000有価証券評価益8,000

ここで迷ったら:計上するのは時価そのもの68,000円ではなく、差額の8,000円です。売却していないので、有価証券売却益ではなく有価証券評価益を使います。

例題2(満期保有・定額法)

満期保有目的で、額面500,000円の社債を475,000円で取得した。償還(満期)までの期間は5年である。定額法(償却原価法)による当期末の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:額面500,000円と取得価額475,000円に25,000円の差があり、満期まで5年で少しずつ額面へ近づけます。
  2. 増減を決める:年間の償却額は(500,000−475,000)÷5=5,000円で、帳簿価額を5,000円増やします。
  3. 左右を決める:資産(満期保有目的債券)が増えるので借方、相手は有価証券利息で貸方です。
  4. 照合する:毎期5,000円ずつ増やすと、5年で25,000円増え、帳簿価額が額面500,000円にそろいます。
例題2の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
満期保有目的債券5,000有価証券利息5,000

ここで迷ったら:満期保有は時価評価しません。差額25,000円を一度に計上せず、5年で割った5,000円を毎期の有価証券利息とします。

例題3(その他有価証券・全部純資産直入法)

その他有価証券として株式を100,000円で取得していた。期末の時価は115,000円である。全部純資産直入法による期末の仕訳を示しなさい(税効果は考慮しない)。

  1. 取引を読む:その他有価証券なので時価評価しますが、差額は純資産に置きます。
  2. 増減を決める:時価115,000円が取得原価100,000円より15,000円高く、帳簿価額を増やします。
  3. 左右を決める:資産(その他有価証券)が増えるので借方、相手はその他有価証券評価差額金で貸方です。
  4. 照合する:115,000−100,000=15,000円を、損益ではなく純資産の評価差額金として計上します。
例題3の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
その他有価証券15,000その他有価証券評価差額金15,000

ここで迷ったら:貸方を有価証券評価益にしないこと。その他有価証券の評価差額はP/Lを通さず、その他有価証券評価差額金(純資産)に置きます。

例題4(端数利息の処理)

売買目的で、額面1,000,000円・年利率7.3%の社債を990,000円で買い入れた。買入日は直前の利払日の翌日から40日経過した日である。端数利息とあわせて代金を当座預金から支払った。買い手側の仕訳を示しなさい(1年365日で日割計算する)。

  1. 取引を読む:利払日以外の日の売買なので、経過した40日分の利息を端数利息として売買代金とは別に支払います。
  2. 増減を決める:端数利息=1,000,000円×7.3%×40日÷365日=8,000円。証券本体の価額は990,000円です。
  3. 左右を決める:資産(売買目的有価証券)990,000円と有価証券利息(借方)8,000円が増え、当座預金が合計998,000円減ります。
  4. 照合する:990,000円+8,000円=998,000円が、当座預金の減少額と一致します。
例題4の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売買目的有価証券
有価証券利息
990,000
8,000
当座預金998,000

ここで迷ったら:端数利息8,000円を証券本体の価額990,000円に含めないこと。売買代金と端数利息は別の科目・別の金額で計上します。売り手側なら貸方に有価証券利息を計上します。

よくあるミス

評価益・損と売却益・損を混同するどちらも有価証券の損益ですが、保有中の時価変動は有価証券評価益・評価損、実際に手放したときの差額は有価証券売却益・売却損です。「保有中か、売ったか」で科目を分けます。まだ売っていないのに売却益を使わないよう注意します。
満期保有目的債券を時価評価してしまう満期まで持つ前提なので、途中の時価変動は評価に反映しません。額面と取得価額の差を、定額法で毎期の有価証券利息として少しずつ計上するだけです。時価が動いても評価替えの仕訳は起こしません。
その他有価証券の評価差額をP/Lに入れてしまうその他有価証券は全部純資産直入法なので、評価差額は当期の損益ではなく、その他有価証券評価差額金として純資産に計上します。売買目的の評価損益と同じつもりで、有価証券評価益・評価損に入れないようにします。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 短期の売買を目的として保有する有価証券の期末評価はどれですか?(答えを見る)

時価で評価し、評価差額を当期の損益に計上します。売買目的有価証券は時価評価し、有価証券評価益・評価損をP/Lに反映します。満期保有は償却原価法、その他有価証券は純資産への直入です。

Q2. 満期保有目的債券を額面より低い価額で取得したとき、2級で用いる償却の方法はどれですか?(答えを見る)

定額法による償却原価法です。取得価額と額面の差を保有期間で均等に配分し、毎期の有価証券利息として計上します。満期保有は時価評価をしません。

Q3. その他有価証券を全部純資産直入法で期末評価したとき、評価差額はどこに計上しますか?(答えを見る)

その他有価証券評価差額金として純資産に計上します。全部純資産直入法はP/Lを通しません。売買目的の評価損益と混同しないようにします。

Q4. 保有中の時価変動による損益と、売却時の損益で使う科目の組み合わせはどれですか?(答えを見る)

保有中は有価証券評価益・評価損、売却時は有価証券売却益・売却損です。「保有中か、手放したか」で科目を分けます。

Q5. 有価証券を3区分に分けるとき、最初に決めるものはどれですか?(答えを見る)

保有目的です。売買目的・満期保有・その他のどれかを先に決めると、それに応じて期末の評価方法と損益の置き場が決まります。

有価証券は、まず保有目的で売買目的・満期保有・その他に分けます。売買目的は時価評価して評価損益を当期の損益へ、満期保有は償却原価法(定額法)で額面との差を有価証券利息へ、その他は時価評価して評価差額を純資産(評価差額金)へ計上します。保有中の評価損益と売却損益は科目を分ける点も押さえます。次の単元では、引当金を学びます。

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