固定資産(取得・減価償却・除売却・圧縮記帳)

固定資産は、取得原価を正しくつかむところから始まり、使用しながら減価償却で費用にし、最後は除却や売却で帳簿から外します。ここでは定額法と200%定率法による償却、期中取得の月割、除却・売却の損益、そして圧縮記帳(直接控除方式)までを、例題で順に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:一生の流れで固定資産をつかむ

固定資産の処理は、論点をばらばらに覚えると混乱しがちです。そこで「取得 → 使用 → 減価償却 → 除却・売却」という一生の流れ(ライフサイクル)に沿って見ていきます。取得のときは付随費用まで含めて減価償却の基礎になる取得原価を決め、使っている間は毎期の減価償却で費用に振り替え、手放すときは帳簿価額と受取額の差を損益にします。国などから補助金をもらって資産を買ったときは、圧縮記帳という調整も加わります。まずはこの流れ全体を頭に入れましょう。

固定資産の取得から除売却までのライフサイクルを示す図 取得、使用、減価償却、除却または売却へと進む固定資産の流れを4つの段階で示し、この単元で扱う取得原価・月割・除売却・圧縮記帳の要点を並べます。 「取得 → 使用 → 減価償却 → 除却・売却」の流れで追うと整理できます 1. 取得 購入代金に付随費用を 含めて取得原価にします (引取運賃・据付費など) 2. 使用 耐用年数・残存価額と、 期中取得なら月割を 確認します 3. 減価償却 定額法・200%定率法で 費用にし、累計額で 簿価を下げます 4. 除却・売却 帳簿価額と受取額を 比べ、売却益・売却損 を決めます この単元で押さえる4つのチェックポイント ① 取得原価に付随費用を含める ② 期中取得は月割で償却する ③ 除売却は累計額を取り崩してから損益を出す ④ 圧縮記帳は直接控除方式で簿価を減らす

図の見方:上段の4つが取得から除売却までの流れです。減価償却や除売却だけを個別に覚えるより、下段のチェックポイントとあわせて流れ全体で追うと、金額の計算が安定します。

取得原価と減価償却(定額法・200%定率法)

固定資産の取得原価は、購入代金だけでなく、引取運賃・据付費・登記費用など、使えるようにするまでにかかった付随費用も含めた金額です。この取得原価を、使用できる期間(耐用年数)にわたって費用に配分するのが減価償却で、記帳は間接法(相手科目は減価償却累計額)を基本にします。取得後に生じた支出は、機能を高めたり寿命を延ばしたりするなら資本的支出として資産に加え、維持・修繕にとどまるなら収益的支出として費用にします。

2級では、償却方法として定額法200%定率法を押さえます。定額法は毎期同じ額を償却し、200%定率法は期首の帳簿価額に一定の償却率を掛けるので、初めの年ほど償却額が大きくなります。200%定率法の償却率は「(1÷耐用年数)×200%」で、定額法の償却率をちょうど2倍にした値です。

定額法と200%定率法の比較
方法毎期の減価償却費特徴
定額法(取得原価−残存価額)÷耐用年数毎期同じ額。計算がやさしい
200%定率法期首の帳簿価額×償却率(=1÷耐用年数×200%)初めの年ほど大きく、年々減る

確認:定額法は取得原価を基礎に毎期同額、200%定率法は期首の帳簿価額に償却率(定額法の率の2倍)を掛けます。掛ける相手が取得原価か帳簿価額かを取り違えないことが要点です。

期中取得の月割と除却・売却

固定資産を期の途中で取得したときは、1年分をそのまま計上せず、取得日から決算日までの月数で月割します。年間の減価償却費に「使用月数÷12」を掛けるだけです。使い終わった資産を帳簿から外すのが除却、代金を受け取って手放すのが売却で、いずれも先に減価償却累計額を取り崩して帳簿価額(取得原価−累計額)を確定させ、そのうえで受取額との差を固定資産売却益・売却損(除却なら固定資産除却損)にします。

手順は「①累計額を取り崩す → ②帳簿価額を出す → ③受取額と比べて差額を損益に」の順で固定すると迷いません。除却は受取額が原則ゼロなので、帳簿価額がそのまま除却損になります。

確認:除売却は帳簿価額が出発点です。累計額の取り崩しを忘れると、差額の損益がずれます。期中取得の償却は年額×使用月数÷12で月割します。

圧縮記帳(直接控除方式)

国庫補助金や工事負担金を受け取って固定資産を取得したとき、その補助金相当額にすぐ課税されると、せっかくの補助の効果が薄れてしまいます。そこで課税を将来へ繰り延べるしくみが圧縮記帳です。2級では直接控除方式だけを扱います。

直接控除方式では、補助金相当額を固定資産圧縮損(費用)として計上し、同額だけ固定資産の帳簿価額を直接減らします。補助金の受取時は(借)現金など/(貸)国庫補助金受贈益(収益)、圧縮時は(借)固定資産圧縮損/(貸)機械などとし、圧縮後に下がった帳簿価額を基礎にして、その後の減価償却を計算します。積立金方式は1級(簿記1級)の範囲なので、2級では直接控除方式を押さえれば十分です。

確認:直接控除方式は、固定資産圧縮損を計上して簿価を直接減らします。以後の減価償却は、圧縮前ではなく圧縮後の帳簿価額を基礎に計算します。

ユイ200%定率法だと、耐用年数5年なら償却率は1÷5の0.2でよいのですか?

サクラ先生いいえ。定額法の率0.2を2倍した0.4が償却率です。しかも掛ける相手は取得原価ではなく期首の帳簿価額です。ここを取り違えると初年度から金額がずれます。

ユイ圧縮記帳をした後の償却も、つい元の取得原価で計算してしまいそうです。

サクラ先生そこも要注意です。圧縮後は帳簿価額が下がっているので、以後の償却は圧縮後の金額を基礎にします。

例題で型をつかむ

例題1(200%定率法)

備品1,000,000円を取得した(耐用年数5年・200%定率法・記帳は間接法・残存価額は考慮しない)。1年目末の減価償却の仕訳を示し、あわせて2年目の減価償却費を求めなさい。

  1. 取引を読む:200%定率法なので、償却率=定額法の率(1÷5=0.2)を2倍した0.4です。
  2. 増減を決める:1年目は取得原価1,000,000円×0.4=400,000円を費用にします(期末の帳簿価額は600,000円)。
  3. 左右を決める:減価償却費(費用)が借方、減価償却累計額(資産の評価勘定)が貸方です。
  4. 照合する:2年目は期首の帳簿価額600,000円×0.4=240,000円で、償却額は年々減っていきます。
例題1の答えの仕訳(1年目末)
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費400,000減価償却累計額400,000

ここで迷ったら:定率法は取得原価ではなく「期首の帳簿価額」に償却率を掛けます。償却率も0.2のままにせず、2倍した0.4を使います。

例題2(期中取得の月割)

備品720,000円を7月1日に取得し、ただちに使用を始めた(耐用年数6年・残存価額0・定額法・間接法・決算は3月31日)。当期の減価償却費を求め、決算の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:7月1日取得で決算は3月31日なので、当期の使用期間は7月から3月までの9か月です。
  2. 増減を決める:1年分は720,000円÷6年=120,000円。当期は月割で120,000円×9÷12=90,000円です。
  3. 左右を決める:減価償却費(費用)が借方、減価償却累計額が貸方です。
  4. 照合する:期首から保有していれば120,000円ですが、9か月分に按分して90,000円になります。
例題2の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費90,000減価償却累計額90,000

ここで迷ったら:期中取得は1年分をそのまま計上しません。取得日から決算日までの月数を数え、年額×月数÷12で月割します。

例題3(圧縮記帳・直接控除方式)

国庫補助金300,000円を現金で受け取り、これに自己資金を加えて機械800,000円を現金で取得した。直接控除方式により圧縮記帳を行う。補助金の受取・機械の取得・圧縮記帳の仕訳を示し、圧縮後の帳簿価額を答えなさい。

  1. 取引を読む:補助金相当額300,000円だけ、機械の帳簿価額を直接減らします(直接控除方式)。
  2. 増減を決める:受取時は現金と国庫補助金受贈益(収益)が増え、圧縮時は固定資産圧縮損(費用)を計上して機械を300,000円減らします。
  3. 左右を決める:圧縮の仕訳は、固定資産圧縮損(借方)と機械の減少(貸方)です。
  4. 照合する:機械800,000円−圧縮300,000円=帳簿価額500,000円になります。
例題3の答えの仕訳(受取・取得・圧縮)
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
現金300,000国庫補助金受贈益300,000
機械800,000現金800,000
固定資産圧縮損300,000機械300,000

ここで迷ったら:圧縮後の減価償却は、圧縮前の800,000円ではなく圧縮後の500,000円を基礎にします。耐用年数5年・残存0の定額法なら、500,000円÷5年=毎期100,000円です。

よくあるミス

200%定率法の償却率を定額法のまま使う耐用年数5年なら定額法の率は0.2ですが、200%定率法ではこれを2倍した0.4が償却率です。0.2のまま計算すると償却額が半分になってしまいます。「定額法の率×200%」を先に求めてから掛けます。
期中取得なのに1年分を償却する取得が期の途中なら、1年分をそのまま計上せず、取得日から決算日までの月数で月割します。年額×使用月数÷12を忘れると、初年度の償却費が過大になります。
圧縮記帳の後も取得原価で償却する直接控除方式では圧縮損の分だけ帳簿価額が下がっています。以後の減価償却は、圧縮前の取得原価ではなく圧縮後の帳簿価額を基礎に計算します。取得原価で計算すると償却費が過大になります。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 耐用年数5年の資産を200%定率法で償却するとき、償却率はどれですか?(答えを見る)

0.4(1÷5×200%)です。定額法の償却率0.2を2倍した値で、これを期首の帳簿価額に掛けます。0.2のままにするミスに注意します。

Q2. 200%定率法で各期の減価償却費を計算するとき、償却率を掛ける金額はどれですか?(答えを見る)

期首の帳簿価額(取得原価−期首までの累計額)です。毎期この額が減るので、償却費も年々小さくなります。定額法と違い、取得原価には掛けません。

Q3. 7月1日に取得し使用を始めた資産を3月31日決算で償却するとき、当期の月数はどれですか?(答えを見る)

9か月です。7月1日から3月31日までを数えます。期中取得は1年分をそのまま計上せず、年額×9÷12で月割します。

Q4. 直接控除方式で圧縮記帳した機械を、その後定額法で償却するとき、償却費の基礎とする金額はどれですか?(答えを見る)

圧縮後の帳簿価額(取得原価−圧縮額)です。圧縮前の取得原価で計算すると償却費が過大になります。補助金を控除した後の金額で計算します。

Q5. 間接法で記帳した固定資産を売却するとき、売却損益を求める前に必要な処理はどれですか?(答えを見る)

減価償却累計額を取り崩し、帳簿価額を確定することです。帳簿価額(取得原価−累計額)と受取額の差を、固定資産売却益・売却損にします。累計額の取り崩しを忘れると損益がずれます。

固定資産は、付随費用を含めた取得原価を基礎に、定額法または200%定率法で減価償却します。200%定率法は期首の帳簿価額に「定額法の率×200%」の償却率を掛ける点が要点です。期中取得は月割し、除却・売却では累計額を取り崩してから帳簿価額と受取額の差を損益にします。圧縮記帳(直接控除方式)では固定資産圧縮損を計上して簿価を直接減らし、その後の償却は圧縮後の帳簿価額で行います。次の単元では、リース会計を学びます。

対応する演習