株式会社の資本・配当・税金

資本金・繰越利益剰余金・配当と利益準備金・法人税等の流れを、設立から決算までの順で整理していきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:資本を集め、利益を分け、税金を納める

株式会社は、株式を発行して株主からお金を集め、それを元手に事業を行います。事業で得た利益は、そのまま会社に残す部分と、株主に配当として還元する部分に分けられます。また、利益が出れば、法人税等という税金を国や自治体に納める義務も生じます。この単元では、株式会社の設立・増資で資本金がどう決まるか、決算で確定した利益(繰越利益剰余金)がどのように配当や利益準備金へ振り分けられるか、そして法人税等をどのタイミングでどう計算・納付するかを、順を追って確認していきます。

株式会社と資本金

株式会社は、株式を発行して株主から資金の払い込みを受けます。会社を新しく作るときの発行を設立、すでにある会社がさらに株式を発行して資金を集めることを増資と呼びます。資本金は、株主が会社に払い込んだ金額を表す純資産の勘定です。

簿記3級の範囲では、設立・増資のどちらでも、払込金額の全額を資本金として計上します。一部を資本金以外に振り分ける特例は2級以降で扱うため、3級ではまず「払込金額=資本金」という基本形を徹底しましょう。払い込まれた資金は、通常、当座預金や普通預金の増加として処理します。

設立・増資の仕訳の型
場面借方科目借方金額貸方科目貸方金額
設立時当座預金1,000,000資本金1,000,000
増資時普通預金500,000資本金500,000

表の読み方:設立でも増資でも、仕訳の形は同じです。払込金額の全額を、そのまま資本金(貸方)として計上します。

繰越利益剰余金と配当

繰越利益剰余金は、これまでに稼いだ利益のうち、まだ配当や積立てに回していない分を積み上げた純資産の勘定です。決算で当期純利益が確定すると、損益勘定から繰越利益剰余金へ振り替えられ、残高が積み上がっていきます。

この繰越利益剰余金をどう使うかは、株主総会で決議します。多くの場合、一部を株主への配当に、一部を利益準備金という純資産の勘定に積み立てます。決議した時点では、まだ実際にお金は支払われていないため、配当額は「未払配当金」という負債でいったん受け止めます。

繰越利益剰余金の振替フロー:損益、繰越利益剰余金、配当・準備金の3段階 決算で確定した当期純利益が損益勘定から繰越利益剰余金へ振り替えられ、株主総会の決議で未払配当金と利益準備金に振り分けられることを示した図。 ① 損益(決算) 当期純利益が確定 繰越利益剰余金へ振替 ② 繰越利益剰余金 利益の蓄積(純資産) 株主総会で使い道を決議 ③ 配当・準備金 未払配当金(負債) 利益準備金(純資産) ポイント:配当も利益準備金も、繰越利益剰余金(純資産)を取り崩して生まれます。 配当は費用ではなく、利益の分配です。

図の見方:①決算で確定した利益が②繰越利益剰余金に積み上がり、株主総会の決議で③未払配当金・利益準備金に振り分けられます。実際の送金は、この後の支払時にはじめて行われます。

ユイ配当はなぜ費用ではないのですか?

サクラ先生配当は、会社が稼いだ利益を株主に分け与える「利益の分配」だからです。費用は売上を得るために使った支出ですが、配当は先に利益が確定したあとで、その使い道を決める純資産の内訳の変更にすぎません。

法人税等(中間納付・決算・納付)

株式会社の利益には、法人税・住民税・事業税がかかります。これらをまとめて「法人税等」と呼び、勘定科目としては「法人税、住民税及び事業税」を使います。法人税等は、期の途中で見積額のおおよそ半分を納める中間申告と、決算で1年分の税額を確定させる確定申告の2段階で納付します。

中間申告で納付した金額は、まだ1年分の税額が確定していないため、いったん資産の勘定である「仮払法人税等」で処理します。決算で年間の税額が確定したら、法人税、住民税及び事業税という費用を計上し、貸方では中間納付分の仮払法人税等を精算し、残りの金額を「未払法人税等」という負債で計上します。納付時には、未払法人税等を取り崩します。

法人税等の一連の流れ(中間申告150,000円→決算で年税額400,000円が確定した例)
場面借方科目借方金額貸方科目貸方金額
中間申告仮払法人税等150,000現金 等150,000
決算法人税、住民税及び事業税400,000仮払法人税等150,000
未払法人税等250,000
納付未払法人税等250,000現金 等250,000

表の読み方:中間申告では仮払法人税等(資産)が増え、決算では年税額の全額を費用に計上したうえで、仮払法人税等を精算し、残りを未払法人税等(負債)とします。仮払法人税等をそのまま残す(両建てにする)のはミスです。

例題で型をつかむ

例題1(設立時の仕訳)

株式会社の設立にあたり、株式100株を1株につき@50,000円で発行し、払込金額は全額当座預金とした。設立時の仕訳を示しなさい。

  1. 払込金額を計算する:100株×@50,000円=5,000,000円です。
  2. 資本金の額を決める:3級では払込金額の全額を資本金とします。
  3. 資産の増加を確認する:払込金額は当座預金で受け取ったため、当座預金(資産)が増えます。
  4. 仕訳を組み立てる:借方に当座預金、貸方に資本金を、同額で計上します。
例題1の答え(設立時)
場面借方科目借方金額貸方科目貸方金額
設立時当座預金5,000,000資本金5,000,000

ここで迷ったら:発行株数×発行価額で払込金額を出し、そのまま全額を資本金にします。一部を資本金以外に振り分ける特例は3級の範囲外です。

例題2(配当決議と支払)

株主総会で、繰越利益剰余金を財源として配当金200,000円の支払いと、利益準備金20,000円の積立てを決議した。後日、配当金を普通預金から支払った。決議時と支払時の仕訳を示しなさい。

  1. 決議時に動く勘定を確認する:配当は未払配当金(負債)、積立ては利益準備金(純資産)が増えます。
  2. 繰越利益剰余金の減少額を計算する:配当200,000円+利益準備金20,000円=220,000円です。
  3. 決議時の仕訳を決める:借方に繰越利益剰余金220,000円、貸方に未払配当金200,000円・利益準備金20,000円を計上します。
  4. 支払時を考える:未払配当金(負債)が減り、普通預金(資産)が減ります。
例題2の答え(決議時→支払時)
場面借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決議時繰越利益剰余金220,000未払配当金200,000
利益準備金20,000
支払時未払配当金200,000普通預金200,000

ここで迷ったら:決議時点ではまだお金は動きません。「決議時(未払配当金の計上)」と「支払時(実際の送金)」を2段階に分けて考えましょう。

よくあるミス

配当を費用にしてしまう配当金の支払いを「お金が出ていくから費用」と考え、損益計算書の費用科目で処理してしまうミスです。配当は利益の分配であり、繰越利益剰余金(純資産)を取り崩すだけで、費用は一切発生しません。
利益準備金を負債として扱ってしまう「準備金」という名前から、引当金のような負債をイメージしてしまうミスです。利益準備金は、会社法で積立てが求められる内部留保であり、純資産の一部です。負債ではありません。
仮払法人税等を精算せず両建てにする決算で未払法人税等を計上する際、中間納付分の仮払法人税等をそのまま残してしまうミスです。決算仕訳では必ず仮払法人税等を貸方に置いて精算し、差額だけを未払法人税等として計上しましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 株式50株を1株につき@60,000円で発行し、払込金額は全額普通預金とした。設立時の仕訳は?(答えを見る)

借方 普通預金3,000,000/貸方 資本金3,000,000です。3級では払込金額の全額を資本金とします(50株×60,000円=3,000,000円)。

Q2. 株主総会で、繰越利益剰余金を財源に配当100,000円・利益準備金10,000円の積立てを決議した。決議時の仕訳は?(答えを見る)

借方 繰越利益剰余金110,000/貸方 未払配当金100,000・利益準備金10,000です。決議時は繰越利益剰余金(純資産)を減らし、未払配当金(負債)と利益準備金(純資産)に振り分けます。

Q3. 上記の配当金100,000円を、後日普通預金から支払った。支払時の仕訳は?(答えを見る)

借方 未払配当金100,000/貸方 普通預金100,000です。支払時は、決議時に計上した未払配当金(負債)を取り崩すだけで、繰越利益剰余金は登場しません。

Q4. 法人税等の中間申告として150,000円を現金で納付した。仕訳は?(答えを見る)

借方 仮払法人税等150,000/貸方 現金150,000です。中間申告時点では年税額が確定していないため、いったん仮払法人税等(資産)で処理します。

Q5. 決算で当期の法人税等の年税額が400,000円と確定した(中間納付額は仮払法人税等150,000円)。決算時の仕訳は?(答えを見る)

借方 法人税、住民税及び事業税400,000/貸方 仮払法人税等150,000・未払法人税等250,000です。年税額の全額を費用に計上し、仮払法人税等を精算したうえで、残りを未払法人税等とします。

設立・増資では払込金額の全額を資本金とします。株主総会の決議で繰越利益剰余金を未払配当金・利益準備金に振り分け、支払時に未払配当金を取り崩します。法人税等は中間申告で仮払法人税等、決算で年税額を確定させて未払法人税等を計上し、納付時に取り崩します。

対応する演習