小口現金

日々の少額の支払いを担当する小口現金のしくみと、支払報告・補給の仕訳を、例題とミニ演習で順番に確認していきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:少額の支払い専用の「小さな財布」

会社のお金を経理部が一括管理していると、電車代や文房具代のような少額の支払いのたびに経理へ申請するのは手間がかかります。そこで、各部署などに少額の資金をあらかじめ渡しておき、日々の細かい支払いはそこから行う方法がとられます。この資金が小口現金で、管理を担当する係を用度係(小口係)と呼びます。手元の現金とは別の資産の勘定として管理する点がポイントです。

小口現金のしくみ(定額資金前渡法)

小口現金の代表的な運用方法が定額資金前渡法(インプレスト・システム)です。あらかじめ一定額(例:30,000円)を用度係に前渡ししておき、用度係は1週間などの期間中、交通費・通信費・消耗品費といった少額の経費をそこから支払います。期間の終わりに用度係が支払の明細を経理へ報告し、経理は使った分と同じ金額だけを補給します。こうすると週明け(期間の初め)には手元の資金が必ず定額に戻るため、残高の管理がとても簡単になります。

小口現金の補給サイクル 定額を前渡しして設定し、用度係が支払い、週末に支払報告を受け、使った分だけ補給して定額に戻す、という4段階が繰り返されることを示した図。 ① 設定 定額(例:30,000円)を 用度係へ前渡しする ② 支払 用度係が交通費・通信費 などを小口から支払う ③ 報告 週末に支払の明細を 経理へ報告する ④ 補給 使った分だけ補給して 定額に戻す 補給後は定額に戻り、翌週も②〜④のサイクルを繰り返します

図の見方:①で定額を渡した後は、②支払→③報告→④補給が毎週繰り返されます。④の補給額は定額ではなく「使った分」で、その結果として残高が定額に戻る、という関係を押さえましょう。

支払報告と補給の仕訳

経理(会社側)が仕訳を書くタイミングは、「設定したとき」「報告を受けたとき」「補給したとき」の3つです。用度係が期中に支払っただけの段階では、経理はまだ仕訳をしません。支払報告を受けた時点で、はじめて通信費などの費用を計上するのが最大のポイントです。

定額資金前渡法の仕訳の型(設定・報告・補給)
場面借方科目借方金額貸方科目貸方金額
設定時小口現金30,000当座預金 等30,000
報告時通信費 等(費用)13,000小口現金13,000
補給時小口現金13,000当座預金 等13,000

表の読み方:設定時は小口現金という資産を作り、報告時に費用を計上して小口現金を減らし、補給時に使った分だけ小口現金を戻します。小切手を振り出して渡す場合、貸方は当座預金になります。

なお、報告を受けてただちに補給する場合は、報告時の貸方(小口現金)と補給時の借方(小口現金)が打ち消し合うため、「借方 通信費 等/貸方 当座預金」と1本の仕訳にまとめることもできます。試験では、報告と補給が別のタイミングか同時かを問題文から読み取りましょう。

例題で型をつかむ

例題1(設定→支払報告→補給)

定額30,000円の小口現金制度を採用し、小切手を振り出して用度係に渡した。週末、用度係から通信費8,000円・消耗品費5,000円の支払報告を受けた。週明け、使った分と同額の小切手を振り出して補給した。設定時・報告時・補給時の仕訳を示しなさい。

  1. 設定時を考える:小口現金(資産)を新しく作り、小切手の振出により当座預金(資産)を減らします。
  2. 報告時を考える:報告を受けた時点で通信費・消耗品費という費用を計上し、支払合計13,000円だけ小口現金を減らします。
  3. 補給額を決める:使った分(8,000+5,000=13,000円)だけ補給すれば、残高17,000円が定額30,000円に戻ります。
  4. 補給時を考える:小口現金を13,000円増やし、小切手の振出により当座預金を減らします。
例題1の答え(設定時→報告時→補給時)
タイミング借方科目借方金額貸方科目貸方金額
設定時小口現金30,000当座預金30,000
報告時通信費8,000小口現金13,000
消耗品費5,000
補給時小口現金13,000当座預金13,000

ここで迷ったら:費用を計上するのは「支払報告を受けたとき」です。報告時の貸方は費用合計と同じ13,000円の小口現金、補給額も同じ13,000円(使った分)で、これにより残高が定額30,000円に戻ります。

よくあるミス

報告時に費用を計上しない支払報告を受けた時点の仕訳を書かず、補給時にまとめて処理しようとしてしまうミスです。実際にお金(当座預金)が動くのは補給時なので、そのタイミングで費用も書きたくなることが原因です。費用の計上タイミングは「報告を受けたとき」と固定し、報告時=費用/小口現金、補給時=小口現金/当座預金、と2段階に分けて覚えましょう。
補給額を定額としてしまう補給時に、使った分(支払合計)ではなく定額の全額(例:30,000円)を補給してしまうミスです。「定額を維持する」という言葉の印象から、定額そのものを動かしたくなることが原因です。補給額=期間の支払合計であり、「残高+補給額=定額」になるかを検算する習慣をつけましょう。

ミニ演習(3問・即時採点)

Q1. 定額20,000円の小口現金制度を採用し、小切手を振り出して用度係に渡した。仕訳はどれか?(答えを見る)

借方 小口現金20,000/貸方 当座預金20,000です。小口現金という資産が増え、小切手の振出により当座預金が減ります。手元の現金は動いていないため、現金勘定は使いません。

Q2. 用度係から旅費交通費6,000円・通信費4,000円の支払報告を受けた。仕訳はどれか?(答えを見る)

借方 旅費交通費6,000・通信費4,000/貸方 小口現金10,000です。報告を受けた時点で費用を計上し、支払合計だけ小口現金を減らします。当座預金が動くのは補給時です。

Q3. 上記の報告の後、使った分と同額の小切手を振り出して補給した。仕訳はどれか?(答えを見る)

借方 小口現金10,000/貸方 当座預金10,000です。補給額は定額ではなく使った分(支払合計10,000円)で、この補給により残高が定額に戻ります。

小口現金は少額の支払い専用に前渡しする資産で、定額資金前渡法では「使った分だけ補給」して定額に戻します。費用を計上するのは支払報告を受けたとき(費用/小口現金)、補給時は小口現金/当座預金です。補給額=期間の支払合計、という関係を必ず確認しましょう。

対応する演習