現金・預金と現金過不足

現金過不足の処理、当座預金と当座借越の扱いを、例題とミニ演習で順番に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:現金は範囲がやや広く、預金にはクセがある

現金というと紙幣・硬貨だけをイメージしがちですが、簿記上の現金はもう少し範囲が広く、他人が振り出した小切手なども含みます。また、金庫の中の実際有高と帳簿の残高が一致しないことも実務ではよく起こり、その差はいったん「現金過不足」という勘定で受け止めてから原因を追いかけます。当座預金についても、残高が足りずマイナスになる「当座借越」という決算処理があります。この単元では、現金の範囲の確認から、現金過不足の処理、当座借越の振替までを順番に押さえていきます。

現金の範囲と預金の種類

簿記上の現金は、紙幣・硬貨(通貨)に加えて、他人が振り出した小切手や郵便為替証書のように、すぐに換金できるものを含みます。一方で、自分(自社)が振り出した小切手は、まだ相手が銀行へ呈示していなくても現金には含めません。

預金にも役割の違いがあります。普通預金は日常の入出金に使う口座で利息が付きますが、当座預金は小切手・手形の決済専用で、利息が付きません。試験では、この2つと現金を混同しないことが第一歩です。

確認:「他人が振り出したか、自分が振り出したか」を先に判定すると、現金と当座預金の混同を防げます。

ユイ自分が振り出した小切手も現金ですか?

サクラ先生いいえ。自分が振り出した小切手は、まだ銀行に呈示されていなくても当座預金の減少として処理します。現金として扱うのは、取引先など他人が振り出した小切手です。

現金過不足

金庫の実際有高と帳簿残高が一致しないとき、いったん「現金過不足」という勘定で差額を受け止め、原因が分かった時点で本来の科目へ振り替えます。実際有高が帳簿より少ない(不足)場合は、帳簿上の現金を減らし、差額を現金過不足の借方に計上します。実際有高の方が多い(過剰)場合は逆に、現金過不足の貸方に計上します。

期末(決算)まで原因が分からないまま残った分は、不足なら雑損、過剰なら雑益へ振り替えて、現金過不足の残高をゼロにします(雑損・雑益は、雑損失・雑収入と呼ばれることもあります)。ここで重要な例外があります。決算日になってはじめて差異を発見した場合は、現金過不足を経由せず、直接雑損・雑益で処理します。すでに期中で現金過不足を計上済みのケースと、決算日に初めて発見したケースを区別しましょう。

図の見方:①→②→③の順に処理が進みます。②で原因が分かった分はその場で振り替え、③の決算では、それでも残っている分だけを雑損・雑益にします。決算日に初めて発見した差異は、①②を経由せず直接③の雑損・雑益で処理します。

当座借越

当座預金は、あらかじめ銀行と契約(当座借越契約)を結んでおくと、残高を超えて小切手を振り出せることがあります。振り出しすぎて当座預金がマイナス(貸方残高)になった状態を当座借越と呼びます。これは実質的に銀行からの短期の借入れです。

期中はマイナスのまま当座預金勘定で処理してかまいませんが、決算時には、貸方残高になっている当座預金を負債の「当座借越(または借入金)」へ振り替えます。そして翌期首には、逆向きの仕訳(再振替仕訳)を行い、当座預金の状態に戻します。当座預金がマイナスのまま試算表・貸借対照表に残らないようにする、という決算整理の代表例です。

例題で型をつかむ

例題1(現金過不足の発生と原因判明)

金庫の実際有高を数えたところ、帳簿残高より2,000円少ないことが分かった。後日、通信費2,000円の記帳漏れが原因と判明した。発生時と原因判明時の仕訳を示しなさい。

  1. 発生時を考える:実際有高が帳簿より2,000円少ない=現金が超過計上されている状態です。帳簿の現金を2,000円減らし、差額を現金過不足で受け止めます。
  2. 発生時の仕訳を決める:現金(資産)の減少は貸方、現金過不足は借方に計上します。
  3. 原因判明時を考える:通信費の記帳漏れ=本来計上すべきだった費用が漏れていたということです。
  4. 原因判明時の仕訳を決める:通信費(費用)の発生は借方、現金過不足の解消は貸方に計上します。
例題1の答え(発生時→原因判明時)
日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
発生時現金過不足2,000現金2,000
判明時通信費2,000現金過不足2,000

ここで迷ったら:現金が足りない(実際<帳簿)ときは、現金を減らして現金過不足を借方に。原因が分かったら、現金過不足を貸方に置いて消し、借方に本来の科目を計上します。

例題2(当座借越への振替)

決算日、当座預金勘定の残高を確認したところ、貸方残高30,000円になっていた(当座借越契約の範囲内)。決算整理仕訳と、翌期首の再振替仕訳を示しなさい。

  1. 状態を確認する:当座預金が貸方残高=当座預金を使いすぎて、実質的に銀行からの借入れが生じている状態です。
  2. 振替の向きを決める:当座預金の貸方残高(マイナス)を消すには借方に当座預金を計上し、同額を負債の「当座借越」の貸方に計上します。
  3. 決算整理仕訳を書く:借方 当座預金30,000/貸方 当座借越30,000。
  4. 翌期首を確認する:逆向きの仕訳(再振替仕訳)を行い、当座預金の状態に戻します。
例題2の答え(決算整理→翌期首の再振替)
日付借方科目借方金額貸方科目貸方金額
決算当座預金30,000当座借越30,000
翌期首当座借越30,000当座預金30,000

ここで迷ったら:当座預金の貸方残高をそのままにせず、決算では必ず負債の当座借越(または借入金)へ振り替えます。翌期首の再振替を忘れずに行いましょう。

よくあるミス

過不足の借貸方向を逆にする実際有高が帳簿より少ないのに、現金過不足を貸方に計上してしまうミスです。現金の増減と現金過不足の借貸を混同すると起こります。「現金が減る側(貸方)」と同じ側に現金を記入し、その相手(借方)に現金過不足を置く、と機械的に覚えましょう。
原因判明分と不明分を混同する原因が判明した分まで、決算で一括して雑損・雑益に振り替えてしまうミスです。現金過不足の処理を「期中の振替」と「決算の振替」で分けずに扱うと起こります。原因が分かった時点で個別に振り替え、決算では残っている分だけを雑損・雑益にする、と手順を分けましょう。
当座借越を資産のマイナスのまま放置する当座預金が貸方残高のまま、決算整理をせずに試算表・貸借対照表を作ってしまうミスです。当座預金は資産という思い込みから、マイナスのままでよいと考えてしまうと起こります。決算整理の前に、当座預金の残高の向き(借方か貸方か)を必ず確認しましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 取引先が振り出した小切手を代金として受け取った。借方に計上する科目は?(答えを見る)

現金です。他人振出の小切手はすぐに換金できるため現金として扱います。自分が振り出した小切手を受け取った場合は当座預金の増加になります。

Q2. 金庫の実際有高が帳簿残高より3,000円少なかった。発生時の仕訳は?(答えを見る)

借方 現金過不足3,000/貸方 現金3,000。実際有高が少ない=現金を減らし(貸方)、差額を現金過不足の借方で受け止めます。

Q3. 上記の不足額のうち、後日、旅費交通費の記帳漏れ3,000円と判明した。振替の仕訳は?(答えを見る)

借方 旅費交通費3,000/貸方 現金過不足3,000。借方にあった現金過不足を貸方に置いて消し、借方に本来計上すべきだった費用を計上します。

Q4. 決算日当日、実査で初めて現金の不足2,000円を発見し、原因は不明のままだった。決算での仕訳は?(答えを見る)

借方 雑損2,000/貸方 現金2,000。決算日に初めて発見した差異は、現金過不足を経由せず、直接雑損(または雑益)で処理します。

Q5. 決算日、当座預金が貸方残高50,000円だった。決算整理仕訳は?(答えを見る)

借方 当座預金50,000/貸方 当座借越50,000。当座預金の貸方残高を借方で打ち消し、同額を負債の当座借越(または借入金)の貸方に計上します。

現金には紙幣・硬貨だけでなく、他人振出の小切手も含まれます。現金過不足は「発生→原因判明で振替→決算で雑損・雑益」の順で処理し、決算日に初めて見つかった差異は直接雑損・雑益で処理します。当座預金の貸方残高は、決算で当座借越(または借入金)へ振り替え、翌期首に再振替します。

対応する演習