現金・預金と小口現金

現金・普通預金・当座預金・小口現金の使い分けを仕訳で押さえます。

この単元で身につくこと

まずイメージ:現金と名の付く資産は4種類ある

前の単元「仕訳の基本ルール」では、現金を基点に仕訳の3ステップを練習しました。ここからは、現金以外にもよく登場する「お金にまつわる資産」を仲間に加えていきます。ひとくちに「現金」といっても、簿記では置き場所や使い道によって科目を使い分けます。まずは4つの科目の役割を整理しておきましょう。

現金・預金・小口現金の使い分け
科目主な内容増えるとき/減るとき
現金手元の紙幣・硬貨受け取ると増加、支払うと減少
普通預金銀行の普通口座の残高入金で増加、引出・引落しで減少
当座預金小切手決済などに使う口座入金で増加、小切手の振出・引落しで減少
小口現金各部署に前渡しする少額の現金前渡しで増加、使った分だけ減少

図の見方:どれも資産という点は共通です。試験では、問題文に出てきた言葉(現金・普通預金・当座預金・小口現金)に対応する科目をそのまま使いましょう。

普通預金・当座預金の入出金

売上代金を現金でその場で受け取らず、銀行口座に振り込んでもらうことはよくあります。振込先が普通の銀行口座であれば普通預金、小切手による支払いに使う口座であれば当座預金という科目で処理します。どちらも現金と同じ資産なので、入金があれば借方で増加、出金・引落しがあれば貸方で減少と、考え方は現金と同じです。

当座預金は、取引先への支払いに小切手を振り出すときにも使います。振り出した小切手が銀行で決済されると、当座預金が減少します。なお、当座預金の残高を超えて小切手を振り出した場合の処理(当座借越)や、帳簿上の現金残高と実際の手元有高がずれた場合の処理(現金過不足)は、初級の範囲外です。3級で学びます。

確認:普通預金・当座預金とも、入金は借方、出金・引落しは貸方。「現金」と同じ資産グループの仲間として扱いましょう。

小口現金と定額資金前渡法

小口現金は、簿記初級の出題範囲表に科目としては明記されていませんが、初級の演習問題での出題実績があるため、基本の流れだけ押さえておきましょう(本格的には3級で学びます)。

切手代や事務用品代など、少額の支払いのたびに経理担当者へ申請するのは手間がかかります。そこで、各部署の窓口となる社員(小口現金係)に、あらかじめ決まった金額の現金を渡しておく仕組みが小口現金です。この「決まった金額を渡しておく」やり方を定額資金前渡法(インプレスト・システム)と呼びます。

小口現金係は、月末(または決めた期間ごと)に「何にいくら使ったか」を経理担当者へ報告します。報告を受けた時点で、使った内容に応じた費用(旅費交通費や消耗品費など)を計上し、その金額だけ小口現金の残高を減らします。そのあと、使った金額と同額を小口現金係に渡して(補給)、小口現金の残高をもとの定額に戻します。

確認:小口現金は「報告時」に費用を計上して残高が減り、「補給時」に使った金額だけ戻って、もとの定額に戻ります。

例題で型をつかむ

例題1(売上代金の普通預金入金)

商品30,000円を売り上げ、代金は先方振込により普通預金口座に入金された。仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:商品を売り上げ、代金が普通預金口座に振り込まれています。
  2. 動いた項目を探す:普通預金と売上です。
  3. 仲間を決める:普通預金は資産、売上は収益です。
  4. 増減を決める:普通預金(資産)が増え、売上(収益)が増えます。
例題1の答え
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金30,000売上30,000

ここで迷ったら:「振り込まれた」という言葉から、資産側の科目が現金ではなく普通預金になる点に注目しましょう。

例題2(小口現金の補給)

小口現金係から、今月の支払い(旅費交通費2,000円、消耗品費1,000円)の報告を受けた。ただちに、使った金額と同額を当座預金から補給した。報告時・補給時、それぞれの仕訳を示しなさい。

  1. 報告時を考える:報告を受けた時点で旅費交通費・消耗品費という費用を計上し、合計3,000円だけ小口現金を減らします。
  2. 仲間を決める:旅費交通費・消耗品費は費用、小口現金・当座預金は資産です。
  3. 補給額を決める:使った分(2,000+1,000=3,000円)だけ補給すれば、小口現金の残高がもとの定額に戻ります。
  4. 補給時を考える:小口現金を3,000円増やし、当座預金を3,000円減らします。
例題2の答え(報告時→補給時)
タイミング借方科目借方金額貸方科目貸方金額
報告時旅費交通費2,000小口現金3,000
消耗品費1,000
補給時小口現金3,000当座預金3,000

ここで迷ったら:費用を計上するのは「報告を受けたとき」です。報告時の貸方(小口現金の減少)と補給時の借方(小口現金の増加)は、どちらも使った金額の合計3,000円で一致します。

よくあるミス

当座預金の残高不足の処理をしようとしてしまう当座預金の残高が足りなくなったらどうなるのか、気になって立ち止まってしまうミスです。この処理(当座借越)は初級の範囲外です。初級では、当座預金も残高がある前提の資産として、他の預金と同じように処理すれば十分です。
小口現金の補給額を毎回変えてしまう定額資金前渡法の「定額」を忘れ、報告のたびに好きな金額を渡してよいと思い込むミスです。補給額は必ず「報告時に計上した費用の合計」と一致させ、小口現金の残高をもとの定額に戻すことを徹底しましょう。
普通預金と当座預金の科目名を書き間違えるどちらも銀行預金という点で似ているため、問題文の言葉を確認せずに書いてしまうミスです。問題文に「普通預金」「当座預金」のどちらが出てきたかを、そのまま科目名として使うと徹底しましょう。

ミニ演習(4問・即時採点)

Q1. 小切手を振り出して支払うために使う口座はどれですか?(答えを見る)

当座預金です。当座預金は、小切手による決済に使う銀行口座です。

Q2. 商品30,000円を売り上げ、代金が普通預金口座に振り込まれた。借方科目はどれですか?(答えを見る)

普通預金です。現金ではなく、口座に振り込まれた時点で普通預金(資産)が増えます。

Q3. 小口現金の「定額資金前渡法」で、補給時に小口現金を増やす金額はどれですか?(答えを見る)

報告時に計上した費用の合計と同じ金額です。補給によって、小口現金の残高はもとの定額に戻ります。

Q4. 小口現金として10,000円を小口現金係に前渡しした(当座預金から支払い)。正しい仕訳はどれですか?(答えを見る)

借方 小口現金10,000/貸方 当座預金10,000です。小口現金(資産)が増え、当座預金(資産)が減ります。

現金・普通預金・当座預金は、どれも資産として入金で増え、出金・引落しで減ります。小口現金は定額資金前渡法で管理し、報告時に費用を計上したあと、補給時に使った分だけ戻してもとの定額に戻します。問題文に出てきた科目名をそのまま使うことが、ミスを防ぐ一番の近道です。

3級では、ここで扱わなかった現金過不足や当座借越の処理も含めて、現金・預金の範囲がさらに広がります。3級の「現金・預金と現金過不足」で確認できます。

対応する演習