売掛金・買掛金と債権債務

掛け取引からクレジット売掛金・立替金・仮払金まで、債権債務の科目選びを固めます。

この単元で身につくこと

まずイメージ:後払い・先払いの科目には地図がある

前の単元「仕訳の基本ルール」で扱った売掛金買掛金の決済は、この単元で練習します。実際の取引には、「あとで受け取る・支払う」お金にも「先に受け取る・支払う」お金にも、似たような科目がいくつも登場します。まずは、資産側と負債側をペアで整理した地図を見ておきましょう。

債権・債務の科目マップ(資産側と負債側のペア)
資産側負債側使う場面
売掛金買掛金商品の掛け取引(後払いの基本形)
未収入金未払金商品以外の後払い(備品売却の代金など)
前払金前受金商品を渡す前に受け渡す手付金
立替金預り金他人の代わりに一時的に払う・預かる
仮払金仮受金内容や金額がまだ確定していない
貸付金借入金資金の貸し借り(利息を伴う)

図の見方:左の資産側は「あとで受け取る・すでに払った」お金、右の負債側は「あとで支払う・すでに受け取った」お金です。同じ行のペアは対になる場面で使います。

売掛金・買掛金の決済とクレジット売掛金

売掛金・買掛金を決済するときは、代金を受け取って売掛金(資産)を減らすか、代金を支払って買掛金(負債)を減らします。現金や預金が動く一方で、売掛金・買掛金が同額だけ減る、という組み合わせで考えましょう。

クレジットカードで商品を販売した場合は、少し違う科目を使います。お客様から直接代金を受け取るのではなく、信販会社(カード会社)を通じて後日代金を受け取る仕組みだからです。この場合に増える資産は、売掛金ではなくクレジット売掛金です。信販会社に代金を請求する権利という点で売掛金と似ていますが、相手が「お客様」ではなく「信販会社」である点が異なります。信販会社からの入金は手数料が差し引かれた残額になるのが一般的で、この支払手数料(費用)は、代金が入金された時点で計上します。

確認:商品代金の後払いは売掛金・買掛金、カード払いはクレジット売掛金。手数料は入金時に費用として計上します。

未収入金・未払金(商品以外の後払い)

売掛金・買掛金は、あくまで商品の売買で生じる後払いに使う科目です。不要になった備品の売却代金など、商品以外の後払いは、資産側なら未収入金、負債側なら未払金を使います。科目を選ぶときは「商品の代金かどうか」を最初に確認し、商品なら売掛金・買掛金、それ以外(備品・車両など)なら未収入金・未払金、という判定順で迷いを減らせます。

確認:商品の代金=売掛金・買掛金、それ以外=未収入金・未払金。まず「商品かどうか」で仲間分けしましょう。

前払金・前受金(手付金と経過勘定の違い)

前払金は、商品やサービスをまだ受け取っていない段階で、代金の一部または全部を先に支払う手付金です。特注品を注文するときに予約金を払うようなケースが典型例で、実際に商品を受け取った時点で、前払金という資産が減り、仕入などの科目に振り替わります。前受金は、この逆で、商品を渡す前に代金を受け取ったときに増える負債です。

ここで注意したいのは、前払金は「決算時に見越し・繰り延べで計上する前払費用(経過勘定)」とは別の科目だという点です。前払金は、特定の商品・サービスの手付金という具体的な取引にひもづく資産であるのに対し、前払費用は保険料のように時間の経過にもとづいて処理する科目です。前払費用のような経過勘定の処理は、3級で学びます。

確認:前払金・前受金は「商品・サービスの手付金」。時間の経過で計算する前払費用などの経過勘定とは別物です。

立替金・預り金、仮払金・仮受金、貸付金・借入金

立替金は、社員が個人的に負担すべき代金を会社がいったん立て替えたときに使う資産で、あとで給料から差し引くなどして精算します。預り金は逆に、源泉所得税や社会保険料など他人のお金を一時的に預かる負債です。

仮払金は、金額や使いみちが未確定なお金をとりあえず支払ったときに使う資産です。出張前の旅費概算払いが代表例で、実際の金額が判明した時点で内容を確定させます(精算)。仮受金は逆に、理由がまだ分からない入金をとりあえず処理する負債です。

貸付金は他者に貸したお金の資産、借入金は他者から借りたお金の負債です。返済時には、貸付金なら受取利息(収益)、借入金なら支払利息(費用)という利息も合わせて計上します。

確認:立替金・仮払金・貸付金は資産、預り金・仮受金・借入金は負債。「会社から見てどちら向きのお金か」で判断しましょう。

ユイ前払金も仮払金も「先にお金を払う」感じがして、違いがよく分かりません。

サクラ先生前払金は、買う物やサービスがすでに決まっていて、その手付金として払うお金です。

ユイでは仮払金は、何が違うのでしょうか。

サクラ先生仮払金は、金額や使いみちがまだ決まっていないときに、とりあえず払っておくお金です。出張前の概算払いが代表例で、あとで実際の金額が分かってから精算します。

例題で型をつかむ

例題1(クレジット売上の入金)

商品50,000円をクレジットカード決済で販売し、販売時にクレジット売掛金として計上した。後日、信販会社から手数料1,000円が差し引かれた残額が普通預金口座に入金された。入金時の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:販売時点ではクレジット売掛金(資産)として計上済みです。ここでは、その代金が入金された場面を考えます。
  2. 動いた項目を探す:普通預金・支払手数料・クレジット売掛金です。
  3. 仲間を決める:普通預金は資産、支払手数料は費用、クレジット売掛金は資産です。
  4. 増減を決める:普通預金(資産)が49,000円増え、支払手数料(費用)が1,000円発生し、クレジット売掛金(資産)が50,000円全額減ります。
例題1の答え
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金49,000クレジット売掛金50,000
支払手数料1,000

ここで迷ったら:クレジット払いの手数料は、商品を売った時点ではなく、代金が入金された時点で費用として計上します。入金額と手数料の合計が、もとのクレジット売掛金の金額と一致するか確認しましょう。

例題2(仮払金の精算)

出張にあたり、旅費の概算額として現金30,000円を仮払いしていた。出張から戻り、実際にかかった旅費交通費が28,000円だったため、仮払金との差額2,000円を現金で受け取り精算した。精算時の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:仮払いしていた仮払金の内容が確定し、使わなかった分を現金で返してもらっています。
  2. 動いた項目を探す:仮払金・旅費交通費・現金です。
  3. 仲間を決める:仮払金は資産、旅費交通費は費用、現金は資産です。
  4. 増減を決める:仮払金(資産)が30,000円全額なくなり、旅費交通費(費用)が28,000円発生し、現金(資産)が2,000円増えます。
例題2の答え
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
旅費交通費28,000仮払金30,000
現金2,000

ここで迷ったら:まず仮払金の金額(30,000円)をいったん全額消すことを考え、実際にかかった費用を借方に、余った現金も借方に置いて、貸借の金額を合わせましょう。

よくあるミス

買掛金と未払金を混同する商品の仕入代金は買掛金、それ以外(備品代など)の後払いは未払金と使い分けるべきところを、後払いならまとめて買掛金にしてしまうミスです。「商品の代金かどうか」を最初に確認する習慣をつけましょう。
前払金と仮払金を混同するどちらも「先に払うお金」という点で似ているため、区別せずに使ってしまうミスです。買う物やサービスが決まっているなら前払金、金額や使いみちが未確定なら仮払金、と分けて考えましょう。
立替金と預り金の資産・負債を逆にするどちらも「他人のお金を一時的に扱う」点で似ているため、資産・負債を逆にしてしまうミスです。会社が肩代わりして立て替えた(あとで返してもらう)なら資産の立替金、他人から預かった(あとで返す)なら負債の預り金と、「お金の流れの向き」で判断しましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. クレジットカード決済で商品を販売し、代金が入金される前の時点で増える資産科目はどれですか?(答えを見る)

クレジット売掛金です。信販会社に代金を請求する権利という点で売掛金と似ていますが、相手が信販会社である点が異なります。

Q2. 不要になった備品を売却し、代金を月末に受け取ることにした。増える資産科目はどれですか?(答えを見る)

未収入金です。商品の売買ではないため、売掛金ではなく未収入金を使います。

Q3. 前払金の説明として正しいものはどれですか?(答えを見る)

商品やサービスを受け取る前に払う手付金です。時間の経過にもとづいて処理する前払費用とは別の科目です。

Q4. 出張旅費の概算額を渡した時点で使う科目はどれですか?(答えを見る)

仮払金です。金額や使いみちが確定していないお金を、とりあえず払ったときに使う資産です。

Q5. 給料から源泉所得税を天引きして一時的に預かった場合に使う科目はどれですか?(答えを見る)

預り金です。他人のお金を一時的に預かっているときに使う負債です。

売掛金・買掛金は商品の掛け取引、未収入金・未払金はそれ以外の後払いに使います。前払金・前受金は手付金、立替金・預り金は他人のお金の一時的な扱い、仮払金・仮受金は内容未確定の一時的な処理で、貸付金・借入金には利息が伴います。科目を選ぶときは、まず「何のお金か」「商品かどうか」「確定しているか」を確認しましょう。

3級では、前払費用や未収収益といった経過勘定の見越し・繰り延べを決算整理の中で学びます。前払金・前受金とは扱いが異なる点は、3級の「決算整理と締切」で確認できます。

対応する演習