引当金(貸倒・賞与・保証・退職給付)

引当金は、将来の費用や損失のうち、当期に負担すべき分を見積って前もって計上しておく仕組みです。代表は貸倒引当金で、これは債権のマイナスを表す評価勘定として差額補充法で設定します。賞与・商品保証・退職給付の各引当金は負債として計上します。要件と設定の型を押さえていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:将来の負担を、当期のうちに見積って積む

引当金は、まだ支払っていない将来の費用や損失でも、その原因が当期にあるなら、当期の費用として見積り計上しておく考え方です。たとえば売掛金の一部は将来回収できないかもしれません。そこで、期末に見積った回収不能見込額を貸倒引当金として設定し、同額を費用(繰入)に計上します。設定したあと、実際に貸倒れが起きたら引当金を取り崩し、期末にはまた見積り直して差額を補います。

図の見方:①で見積り設定し、②で実際の発生に充て、③で期末にまた見積り直して不足分を補います。この「設定→使用→補充」の循環を、各引当金に当てはめて考えます。

引当金の要件と貸倒引当金(差額補充法)

引当金を計上するのは、将来の費用・損失で、その原因が当期以前にあり、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積れるとき、という要件を満たす場合です。代表が貸倒引当金です。貸倒引当金は、売掛金や受取手形などの債権が回収できなくなる見込みに備えるもので、債権のマイナスを表す評価勘定として資産の側に置きます(負債ではありません)。

設定は差額補充法で行います。まず期末の債権残高に実績率などを掛けて設定額(あるべき引当金残高)を求め、そこから現在の引当金残高を差し引いた不足額だけを、貸倒引当金繰入(費用)として計上します。設定額をそのまま全額繰り入れないことがポイントです。

確認:設定額(あるべき残高)−現在の引当金残高=繰入額。貸倒引当金は債権のマイナスを表す評価勘定で、繰入額は費用です。

賞与引当金・商品保証引当金

賞与引当金は、翌期に支給する賞与のうち、当期の労働に対応する分(当期負担分)を見積って計上する負債です。支給見込額に、支給対象期間のうち当期に属する月数の割合を掛けて、当期負担分を求めます。計上は(借)賞与引当金繰入/(貸)賞与引当金です。

商品保証引当金は、販売した商品の無償修理などに将来かかる費用を、当期の売上に対応させて見積り計上する負債です。計上は(借)商品保証引当金繰入/(貸)商品保証引当金で、実際に修理費が発生したら、この引当金を取り崩して充てます。いずれも「当期の売上や労働に対応する将来費用を、当期に前もって費用にする」という共通の考え方です。

確認:賞与引当金は当期負担分を月数で按分します。商品保証引当金は当期の売上に対応させて設定し、修理発生時に取り崩します。

退職給付引当金

従業員の退職金は、退職時にまとめて支払いますが、その負担は在職している各期に発生していると考えます。そこで、当期に対応する退職給付費用を見積り、(借)退職給付費用/(貸)退職給付引当金として計上します。2級では、この「当期分の費用を退職給付引当金として積む」という型を押さえれば十分です。将来支払額を割り引く数理計算などの詳細は、1級(簿記1級)の範囲です。

確認:退職給付引当金も、将来の退職金のうち当期負担分を費用計上する引当金です。(借)退職給付費用/(貸)退職給付引当金の型で押さえます。

ユイ差額補充法では、設定額をそのまま繰り入れてはいけないのですか?

サクラ先生はい。すでに引当金の残高があるので、設定額から残高を差し引いた不足分だけを繰り入れます。残高の控除を忘れると、繰入額が多くなりすぎます。

ユイ貸倒引当金は負債ではなく、資産のマイナスなのですね。

サクラ先生そのとおりです。貸倒引当金は債権のマイナスを表す評価勘定です。一方で賞与・保証・退職給付の引当金は負債です。

例題で型をつかむ

例題1(貸倒引当金・差額補充法)

期末の売掛金残高は800,000円で、貸倒実績率は2%である。決算整理前の貸倒引当金残高は6,000円である。差額補充法により、当期の貸倒引当金繰入の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:期末の債権残高に実績率を掛けて、あるべき引当金残高(設定額)を求めます。
  2. 増減を決める:設定額は800,000×2%=16,000円。すでに残高6,000円があるので、不足額は16,000−6,000=10,000円です。
  3. 左右を決める:不足分を補うので、費用(貸倒引当金繰入)を借方、貸倒引当金を貸方に計上します。
  4. 照合する:繰入10,000円を足すと、引当金残高が設定額16,000円にそろいます。
例題1の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金繰入10,000貸倒引当金10,000

ここで迷ったら:設定額16,000円をそのまま繰り入れないこと。差額補充法では、残高6,000円を差し引いた不足分10,000円だけを繰り入れます。

例題2(賞与引当金)

翌期の6月に支給予定の賞与の見込額は600,000円で、支給対象期間は6か月である。このうち当期に属するのは4か月分である。当期末に計上する賞与引当金繰入の仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:翌期支給の賞与のうち、当期に対応する分だけを当期の費用にします。
  2. 増減を決める:当期負担分は600,000×4か月÷6か月=400,000円です。
  3. 左右を決める:費用(賞与引当金繰入)を借方、賞与引当金を貸方に計上します。
  4. 照合する:残り2か月分(200,000円)は翌期の負担で、当期には計上しません。
例題2の答えの仕訳
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
賞与引当金繰入400,000賞与引当金400,000

ここで迷ったら:見込額600,000円の全額を計上しないこと。当期に属する4か月分だけを、月数で按分して計上します。

よくあるミス

差額補充法で設定額の全額を繰り入れてしまう差額補充法では、あるべき引当金残高(設定額)から現在の残高を差し引いた不足分だけを繰り入れます。残高の控除を忘れて設定額をそのまま繰り入れると、費用も引当金も多くなりすぎます。まず設定額を求め、残高を引く、の順で計算します。
賞与の当期負担を月数で按分し忘れる翌期支給の賞与は、支給見込額の全額ではなく、支給対象期間のうち当期に属する月数分だけが当期の負担です。見込額に「当期の月数÷対象期間の月数」を掛けて、当期負担分を求めます。全額を計上すると、翌期の負担まで先取りしてしまいます。
引当金(負債・評価勘定)と繰入(費用)の対応を崩す設定のときは、繰入という費用と、引当金という貸方項目がペアになります。貸倒引当金は債権のマイナスを表す評価勘定、賞与・保証・退職給付の各引当金は負債です。費用の相手が資産の評価勘定か負債かを、引当金の種類ごとに押さえます。

ミニ演習(4問・即時採点)

Q1. 差額補充法で貸倒引当金を設定するとき、繰入額の求め方はどれですか?(答えを見る)

設定額から引当金の残高を差し引いた不足分を繰り入れます。あるべき引当金残高(設定額)を求め、現在の残高を引いた差額だけを繰入額とします。設定額をそのまま全額繰り入れないようにします。

Q2. 売掛金期末800,000円、実績率2%、貸倒引当金残高6,000円のとき、差額補充法による繰入額はいくらですか?(答えを見る)

10,000円です。設定額は800,000×2%=16,000円で、そこから残高6,000円を差し引いた10,000円が繰入額です。設定額16,000円をそのまま繰り入れません。

Q3. 翌期に支給予定の賞与のうち、当期の負担分を見積って計上する引当金はどれですか?(答えを見る)

賞与引当金です。翌期支給の賞与のうち、支給対象期間のうち当期に属する月数分を当期の負担として計上します。負担月数で按分して求めます。

Q4. 貸倒引当金の分類として正しいものはどれですか?(答えを見る)

資産の評価勘定(マイナスの資産)です。貸倒引当金は債権のマイナスを表します。繰入額(費用)とは区別します。賞与・商品保証・退職給付の各引当金は負債です。

引当金は、原因が当期にある将来の費用・損失を、当期のうちに見積り計上する仕組みです。貸倒引当金は債権のマイナスを表す評価勘定で、差額補充法により設定額から残高を引いた不足分を繰り入れます。賞与・商品保証・退職給付の各引当金は負債として、当期の負担分を計上します。次の単元では、銀行勘定調整表を学びます。

対応する演習