決算整理と財務諸表(表示区分・株主資本等変動計算書・期中財務諸表2026)
1年間の記録は、決算整理を加えてはじめて正しい財務諸表になります。ここでは、売上原価の算定・貸倒れの見積り・減価償却・経過勘定といった決算整理仕訳の一巡から、損益計算書と貸借対照表の表示区分、株主資本等変動計算書、そして期の途中で作成する期中財務諸表の位置づけまでを、順に整理していきましょう。
この単元で身につくこと
- 売上原価・貸倒れ・減価償却・経過勘定の決算整理仕訳を一巡で処理できます。
- 損益計算書・貸借対照表の表示区分を整理できます。
- 期中財務諸表(第37号)の位置づけを説明できます。
まずイメージ:試算表に決算整理を加えて財務諸表へ
期末の帳簿には、まだ整えていない部分が残っています。売れた分の原価がまとまっていなかったり、家賃の前払分が費用のままだったり、固定資産の当期の価値の減りが記録されていなかったりします。これらを整えるのが決算整理です。決算整理前の残高試算表に決算整理仕訳を加え、収益・費用は損益計算書へ、資産・負債・純資産は貸借対照表へ振り分けます。まずこの「試算表 → 決算整理 → 財務諸表」という大きな流れを地図として持っておきましょう。
図の見方:出発点は決算整理前の残高試算表です。ここに決算整理仕訳を加えてから、収益・費用は損益計算書へ、資産・負債・純資産は貸借対照表へ振り分けます。整理を先に済ませてから表示を考えるのがコツです。
決算整理の一巡
2級の決算整理でまず外せないのが売上原価の算定です。三分法では、期中は仕入と売上をそのまま記録しておき、決算で期首商品と期末商品を使って売上原価に組み替えます。期首商品を仕入へ振り替え(借方 仕入/貸方 繰越商品)、期末商品を繰越商品へ振り替えます(借方 繰越商品/貸方 仕入)。この2本を入れると、仕入勘定の残高が当期の売上原価になります。売上原価=期首商品+当期仕入−期末商品、という関係で確かめられます。
続いて、貸倒れの見積り(貸倒引当金の設定)、減価償却(当期の価値の減りを費用に計上)、経過勘定(前払費用・未払費用・前受収益・未収収益で、費用・収益を発生した期間に合わせる)を反映します。順番に決まりはありませんが、「売上原価・貸倒れ・減価償却・経過勘定」をひとまとまりとして先に仕上げると、あとの表示がスムーズになります。
確認:三分法の売上原価は「仕入⇄繰越商品」の2本で組み替えます。売上原価=期首商品+当期仕入−期末商品。方向を逆にすると原価がずれるので注意します。
財務諸表の表示区分
決算整理が終わったら、各勘定を損益計算書と貸借対照表へ表示します。ここで大切なのが表示区分です。貸借対照表では、資産を流動資産・固定資産に、負債を流動負債・固定負債に分けて並べます。前払費用や未収収益は流動資産、未払費用や前受収益は流動負債に入るのが基本です。
もう一つ押さえたいのが控除の表示です。貸倒引当金は、対応する売掛金・受取手形から差し引く形で示します。減価償却累計額も同じように、建物や備品から差し引く形で示します。金額を直接書き換えるのではなく、元の金額と控除額の両方が見えるように並べるのが原則です。純資産の動きは、資本金・準備金・繰越利益剰余金などの変動をまとめた株主資本等変動計算書で示します。
確認:資産・負債は流動と固定に区分します。貸倒引当金・減価償却累計額は、対応する資産から控除する形で表示します。純資産の変動は株主資本等変動計算書にまとめます。
期中財務諸表(第37号)
事業年度の途中で作成する財務諸表を、まとめて期中財務諸表といいます。会社は1年に一度の決算だけでなく、月ごとの月次財務諸表や、上場会社が開示する四半期・中間の財務諸表など、期の途中でも経営成績や財政状態を示す資料を作ります。目的は、経営者が早めに業績をつかんで判断に生かすことや、投資家などの外部の利害関係者へ最新の情報を届けることです。
近年、上場会社の期中開示の制度は、3か月ごとの四半期から、半年ごとの中間を基本とする形へと見直されました。これにあわせて、期の途中で作成する財務諸表を扱う「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号)が整備されています。この基準は、期中に作る財務諸表の位置づけと作成のルールを定めるものです。
2級で押さえたいのは、期中財務諸表も、原則として年度末の決算と同じ会計方針・手続で作成するという考え方です。期の途中だからといって特別な簡便法で作るのではなく、売上原価の算定や減価償却、経過勘定といった決算整理の考え方を、期中でも同じように当てはめます。ですから、ここまで学んだ決算整理と表示区分の知識が、そのまま期中財務諸表の土台になります。
確認:期中財務諸表は事業年度の途中で作る財務諸表(月次・四半期・中間)の総称です。2級では、期中も年度末と同じ会計方針・手続で作成する、という位置づけを押さえれば十分です。なお、法人税等の中間納付で計上する仮払法人税等は、税金の前払いに関する別の論点であり、期中財務諸表そのものとは分けて考えます。
ユイ売上原価の決算整理で、仕入と繰越商品のどちらを先に動かすのか混乱します。
サクラ先生期首の商品は当期に売る分なので仕入へ足し、期末の商品は売れ残りなので仕入から取り出して繰越商品に戻します。「期首は仕入へ、期末は繰越商品へ」と覚えます。
ユイそうすると、仕入勘定の残りが売上原価になるのですね。
サクラ先生そのとおりです。期首商品+当期仕入−期末商品で検算すると安心です。
ユイ期中財務諸表と、法人税等の中間納付は同じ話ですか?
サクラ先生別の論点です。期中財務諸表は期の途中で作る財務諸表そのもの、中間納付は税金を前払いして仮払法人税等を計上する処理です。名前が似ていても切り分けます。
ユイ「期の途中」という言葉につられないようにします。
サクラ先生はい。何を作るのか、何を払うのか、で区別すると迷いません。
例題で型をつかむ
三分法で記帳している。期首商品棚卸高は80,000円、当期の仕入高は620,000円、期末商品棚卸高は95,000円である。売上原価を算定する決算整理仕訳を示し、売上原価の金額を求めなさい。
- 期首商品を仕入へ振り替える:期首の商品80,000は当期に売る分なので、繰越商品から仕入へ移します。(借)仕入80,000/(貸)繰越商品80,000。
- 期末商品を繰越商品へ振り替える:売れ残った95,000は次期へ繰り越すので、仕入から繰越商品へ移します。(借)繰越商品95,000/(貸)仕入95,000。
- 仕入勘定の残高を確かめる:620,000+80,000−95,000=605,000。これが売上原価です。
- 検算する:売上原価=期首80,000+当期仕入620,000−期末95,000=605,000で一致します。
| 整理 | 借方 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 期首商品 | 仕入 | 繰越商品 | 80,000 |
| 期末商品 | 繰越商品 | 仕入 | 95,000 |
ここで迷ったら:「期首は仕入へ、期末は繰越商品へ」の向きを固定します。逆にすると売上原価が605,000ではなくなります。最後に期首+仕入−期末で検算します。
決算整理後の次の項目を、貸借対照表にどう表示するか整理しなさい。(1)売掛金1,000,000円と、これに対する貸倒引当金20,000円。(2)建物2,000,000円と、これに対する減価償却累計額800,000円。(3)前払保険料と未払利息。
- 評価性の項目を控除表示にする:(1)貸倒引当金は売掛金から差し引く形で示します(回収見込み980,000)。(2)減価償却累計額は建物から差し引く形で示します(帳簿価額1,200,000)。
- 金額を書き換えない:元の金額(売掛金1,000,000・建物2,000,000)と控除額の両方が見えるように並べます。
- 経過勘定を区分する:(3)前払保険料は流動資産、未払利息は流動負債に入れます。
- 表にまとめる:下表のとおり、区分と表示方法を整理します。
| 項目 | 表示する場所 | 表示方法 |
|---|---|---|
| 貸倒引当金 | 資産の部(売掛金の下) | 売掛金から控除(差引980,000) |
| 減価償却累計額 | 資産の部(建物の下) | 建物から控除(差引1,200,000) |
| 前払保険料 | 流動資産 | そのまま資産に計上 |
| 未払利息 | 流動負債 | そのまま負債に計上 |
ここで迷ったら:貸倒引当金・減価償却累計額は「差し引く形で見せる」のが原則です。売掛金を980,000に、建物を1,200,000に書き換えてしまわないよう注意します。
よくあるミス
ミニ演習(4問・即時採点)
Q1. 期首商品80,000円、当期仕入620,000円、期末商品95,000円のとき、売上原価はいくらですか?(答えを見る)
605,000円です。売上原価=期首商品80,000+当期仕入620,000−期末商品95,000=605,000円。三分法では、仕入と繰越商品の振替で仕入勘定の残高を売上原価にそろえます。
Q2. 売掛金1,000,000円に対し貸倒引当金20,000円がある。貸借対照表での正しい表示はどれですか?(答えを見る)
売掛金1,000,000円から貸倒引当金20,000円を差し引く形で示します。金額を直接980,000に書き換えるのではなく、元の金額と控除額の両方が見えるように並べます。
Q3. 2級で押さえる、期中財務諸表の作成方針はどれですか?(答えを見る)
原則として年度末の決算と同じ会計方針・手続で作成します。期の途中でも、売上原価の算定や減価償却、経過勘定といった決算整理の考え方を同じように当てはめます。
Q4. 法人税等の中間納付を行ったとき、計上する科目はどれですか?(答えを見る)
仮払法人税等です。中間納付は税金の前払いなので、資産である仮払法人税等で受けます。これは期中財務諸表そのものとは別の論点です。
決算整理は「売上原価・貸倒れ・減価償却・経過勘定」を一巡で仕上げ、その後に表示区分を整えます。貸倒引当金・減価償却累計額は対応する資産から控除する形で示し、純資産の動きは株主資本等変動計算書にまとめます。期中財務諸表(第37号)は、期の途中で作る財務諸表のことで、2級では年度末と同じ会計方針・手続で作成する、という位置づけを押さえます。