原価の3要素と直接費・間接費

工場で発生したお金を材料費・労務費・経費の3つに分け、さらに直接費と間接費に区分します。工業簿記のすべての計算の土台になる仲間分けを、この単元で固めていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:どんな費用も「3要素×直間」のマスに入る

工業簿記は、工場で発生したお金を製品の原価として集計する簿記です。その最初の一歩が、この単元で扱う費用の仲間分けです。発生した費用は、まず中身によって材料費・労務費・経費の3要素に分かれます。さらにそれぞれが、特定の製品への跡付けができるかどうかで直接費・間接費に分かれます。つまり、工場で発生したどんな費用も「3要素×直間」の6つのマスのどれかに必ず入ります。

原価の3要素×直接費・間接費のマトリクス(代表例)
費目直接費になる例間接費になる例
材料費主要材料費・買入部品費補助材料費(接着剤など)・工場消耗品費
労務費直接工の直接作業分の賃金間接工の賃金・工場長など管理者の給料
経費外注加工賃・特定製品専用の型代工場建物の減価償却費・電力料・保険料

図の見方:行は「中身で分けた3要素」、列は「跡付けできるかで分けた直間区分」です。判定は必ず、行(何の消費か)→列(跡付けできるか)の順で進めます。

原価計算の基礎から確認するなら、原価計算初級の「原価の3要素と直接費・間接費」へ戻れます。

3要素の定義と見分け方

3要素は「そのお金が何の消費の対価か」で決まります。材料費は物品の消費で発生する原価です。製品の本体になる主要材料費や、外部から買ってそのまま取り付ける部品(買入部品費)のほか、塗料・接着剤のような補助材料費、軍手や機械油のような工場消耗品費も材料費の仲間です。

労務費は労働力の消費で発生する原価で、賃金・給料・賞与・法定福利費などが入ります。工業簿記では、製品の加工に直接携わる工員を直接工、運搬・修繕・清掃などを担当する工員を間接工と呼び分けます。経費は材料費・労務費以外のすべてで、工場建物や機械の減価償却費、電力料・水道料、保険料、外注先に支払う外注加工賃などが代表です。

たとえば机を作る工場なら、木材は材料費、組立をする工員の賃金は労務費、工場の電気代は経費です。「形になる物の消費か・人の働きの消費か・それ以外か」と順に問いかけると、素早く区分できます。

確認:材料費=物品の消費、労務費=労働力の消費、経費=それ以外。まず「何を消費した対価か」を言えるようにしましょう。

直接費・間接費の判定——跡付けできるかがすべて

直間区分の基準はひとつだけです。「特定の製品(製造指図書)にいくら使ったかを跡付けできるか」——跡付けできる費用が直接費で、仕掛品勘定へそのまま賦課(直課)します。跡付けできない費用が間接費で、いったん製造間接費勘定に集め、あとで配賦基準に従って各製品へ配賦します。配賦の手順は次の単元「製造間接費と予定配賦」で学びます。

注意したいのは、同じ品目でも使い方の記録しだいで区分が変わることです。塗料をロットごとに計量して使えば、使用量を製品に跡付けできるので直接材料費です。同じ塗料でも、各ラインへ一括補充してまとめて使うなら跡付けできないので間接材料費になります。また、工場長の給料は労務費ですが、仕事は工場全体の管理なので特定の製品には跡付けできず、間接労務費です。

代表的な費用の判定例(中身と跡付け可否で決める)
品目・費用費目直間区分判定の理由
机用の木材(製品に組み込む)材料費直接材料費使った数量を製品ごとに跡付けできる
接着剤(全ラインへ一括補充)材料費間接材料費製品別の使用量を跡付けできない
組立作業員の賃金(直接作業分)労務費直接労務費作業時間が製造指図書に結び付く
工場長の給料労務費間接労務費工場全体の管理で個別に跡付けできない
工場設備の減価償却費経費間接経費製造に必要だが個別に跡付けできない

確認:品目名で覚えず、「跡付けできるか」を毎回問い直します。直接費→仕掛品へ直課、間接費→製造間接費へ、という行き先もセットで覚えましょう。

ユイ接着剤は材料の仲間なのに、間接費になることがあるんですか?

サクラ先生あります。直接か間接かは「材料かどうか」ではなく、特定の製品への使用量を跡付けできるかで決まるからです。

ユイでは、同じ接着剤でもロットごとに計量して記録すれば、直接材料費になりますか?

サクラ先生なります。品目の名前ではなく使い方の記録で判定する——ここが試験でもよく狙われるポイントです。

費目別の基本計算——材料費・労務費・経費

材料は「買ったとき」と「使ったとき」を分けて記録します。買ったときの取得原価は、購入代価に材料副費を加えた金額です。仕入先の請求書に買入運賃が含まれていることがありますが、この運賃は材料副費として材料の取得原価に含めます。使ったとき(払い出したとき)は、直接材料費なら仕掛品へ、間接材料費なら製造間接費へ振り替えます。たとえば材料100,000円と買入運賃5,000円を掛けで購入し、当月60,000円分を直接材料費として払い出すと、材料勘定は次のようになります。

材料費の消費額は「消費単価×消費数量」で計算します。消費単価は先入先出法や平均法で求めるほか、あらかじめ定めた予定価格を使うこともできます(予定価格×実際消費数量)。予定価格を使うと計算を早く進められ、実際価格との差は差異として把握します。

労務費も同じ発想です。直接工の直接作業分(直接労務費)は仕掛品へ、間接工の賃金や直接工の間接作業分(間接労務費)は製造間接費へ振り替えます。消費額は「賃率×作業時間」で計算し、予定賃率×実際作業時間による計算もよく出題されます。現場の作業日報から「直接工の消費額80,000円・間接工の消費額20,000円」のように集計され、それぞれ仕掛品と製造間接費へ向かいます。

経費は、支払額・月割額・測定額で当月の消費額をとらえます。外注加工賃や特定製品専用の型代は直接経費として仕掛品へ、減価償却費・電力料などは間接経費として製造間接費へ集めます。

確認:「買ったら材料勘定、使ったら行き先を直間で分ける」。材料費・労務費・経費のどれでも、直接費→仕掛品、間接費→製造間接費という行き先は共通です。

例題で型をつかむ

例題1(3要素×直間の判定と仕訳)

次の(1)〜(4)について費目と直間区分を判定し、仕訳を示しなさい。(1) 机用の木材8枚20,000円を製造指図書#A102向けに倉庫から出庫した。(2) 全ラインで使う接着剤2L 3,000円を現金で購入し、ただちに使用した。(3) 工場長の当月給与300,000円を未払計上した。(4) 直接工の賃金消費額は、#A102向けの直接作業120時間×1,200円であった。

  1. 中身で3要素を決める:(1)(2)は物品の消費で材料費、(3)(4)は労働力の消費で労務費です。
  2. 跡付け可否で直間を決める:(1)は#A102に数量で跡付けできるので直接費、(2)は一括使用で跡付けできず間接費、(3)は工場全体の管理で間接費、(4)は#A102の作業時間に結び付くので直接費です。
  3. 行き先を決める:直接費は仕掛品へ、間接費は製造間接費へ向かいます。
  4. 金額を計算する:(4)は120時間×1,200円=144,000円です。
例題1の答え(仕訳)
取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
(1) 木材の出庫仕掛品20,000材料20,000
(2) 接着剤の購入・使用製造間接費3,000現金3,000
(3) 工場長の給与製造間接費300,000未払費用300,000
(4) 直接工の賃金消費仕掛品144,000賃金144,000

ここで迷ったら:「材料だから直接費」「給料だから間接費」のように名前で決めないことです。(2)は材料費の仲間でも跡付けできないので製造間接費へ、(3)は労務費でも管理業務なので製造間接費へ向かいます。

例題2(材料費・労務費の消費額と仕訳)

当月の取引は次のとおりである。①材料100,000円を掛けで購入し、買入運賃5,000円(材料副費)も掛けとした。②材料60,000円を直接材料費として払い出した。③直接工の賃金消費額は80,000円(すべて直接作業)、④間接工の賃金消費額は20,000円であった。それぞれ仕訳を示し、月末の材料勘定の残高を求めなさい(月初の材料はない)。

  1. 購入時:材料副費も材料勘定に含めます。取得原価は100,000+5,000=105,000円です。
  2. 払出時:直接材料費60,000円は仕掛品へ直課します。
  3. 労務費:直接作業分80,000円は仕掛品へ、間接工分20,000円は製造間接費へ振り替えます。
  4. 残高を求める:材料勘定は105,000−60,000=45,000円が月末残高です。
例題2の答え(仕訳)
取引借方科目借方金額貸方科目貸方金額
① 材料の掛け購入材料100,000買掛金100,000
① 買入運賃(材料副費)材料5,000買掛金5,000
② 直接材料費の払出仕掛品60,000材料60,000
③ 直接労務費の消費仕掛品80,000賃金80,000
④ 間接労務費の消費製造間接費20,000賃金20,000

ここで迷ったら:買入運賃を費用として別処理せず、材料の取得原価に含めるのがポイントです。残高の計算を100,000−60,000=40,000円としてしまったら、材料副費の見落としを疑いましょう。

よくあるミス

費目の名前だけで直間を判断する「材料=直接費」「経費=間接費」のような1対1の暗記が原因で起こるミスです。外注加工賃や専用の型代は経費でも直接費です。必ず「特定の製品に跡付けできるか」を問い直してから区分しましょう。
同じ品目はいつも同じ区分だと思い込む以前の問題で見た品目の区分を、条件を読まずに使い回すために起こるミスです。塗料・接着剤は、ロット別に計量すれば直接材料費、一括補充なら間接材料費と、使い方の記録で変わります。問題文の運用条件(計量しているか)を先に確認しましょう。
直接工の賃金をすべて直接労務費にする「直接工=直接費」と、人に区分を貼り付けてしまうミスです。直間は人ではなく作業の中身で決まるため、直接工でも清掃や手待ちなどの時間分は間接労務費です。資料に作業時間の内訳があれば、直接作業分だけを仕掛品へ向けましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 工場全体を照らす照明の電気代は、どのマスに入りますか?(答えを見る)

間接経費(製造間接費)です。電気代は物品でも人の働きでもないので経費で、個々の製品に跡付けできないため間接費として製造間接費に集めます。

Q2. 製品ロットごとに使用量を計量して記録している塗料は、どのマスに入りますか?(答えを見る)

直接材料費です。物品の消費なので材料費で、ロット別に計量していれば特定の製品へ跡付けできます。同じ塗料でも一括補充なら間接材料費です。

Q3. 工場長の給与はどれに区分されますか?(答えを見る)

間接労務費(製造間接費)です。給与は労働力への支払いなので労務費ですが、仕事は工場全体の管理で特定の製品に跡付けできないため間接費です。

Q4. 特定の製品専用の型(金型)代はどれに区分されますか?(答えを見る)

直接経費です。型代は材料でも労務でもないので経費ですが、特定の製品のためだけに発生し跡付けできるので直接費になります。

Q5. 材料100,000円を掛けで購入し、買入運賃5,000円を現金で支払ったとき、材料勘定に記入する取得原価はいくらですか?(答えを見る)

105,000円です。買入運賃などの材料副費は購入代価に加えて取得原価に含めます。

原価は中身で材料費・労務費・経費に分かれ、跡付け可否で直接費・間接費に分かれます。直接費は仕掛品へ直課し、間接費は製造間接費に集めてから配賦する——この行き先の型は3要素すべてに共通です。次の単元では、集めた製造間接費を予定配賦率で製品へ配る手順を学びます。

対応する演習