製造間接費と予定配賦
予定配賦率→予定配賦額→配賦差異→売上原価加減法という一本の流れで、製造間接費の配賦を仕訳まで含めて固めていきましょう。
この単元で身につくこと
- 配賦基準の選び方を説明し、予定配賦率(予算額÷予定配賦基準量)を計算できます。
- 予定配賦額(予定配賦率×実際配賦基準量)を計算し、仕掛品への振替仕訳が書けます。
- 配賦差異の有利・不利を判定し、売上原価加減法で処理する仕訳が書けます。
まずイメージ:間接費は予定の率で「ならして」配る
前の単元「原価の3要素と直接費・間接費」で見たとおり、間接費は特定の製品に跡付けできない費用です。そこでいったん製造間接費勘定に集めてから、各製品へ配賦します。ただし、実際発生額が確定するのを待って配ると、計算が月末まで進まないうえ、操業や季節でブレる金額がそのまま製品原価に乗ってしまいます。そこで2級では、予算から先に決めた予定配賦率で配り、実際発生額とのズレはあとで配賦差異として処理します。
図の見方:矢印は振替を表します。1段目が月中の流れ(予定配賦)、2段目が期末の流れ(差異の処理)です。有利差異は売上原価の貸方(減額)へ、不利差異なら借方(加算)へ入ります。
原価計算の基礎から確認するなら、原価計算初級の「製造間接費と配賦」へ戻れます。
直課と配賦——配賦基準の選び方
直接費はどの製品のために使ったかが分かるので、そのまま仕掛品へひも付けます(直課・賦課)。間接費は跡付けできないので、配賦基準を決めて配ります。配賦基準には、間接費の発生と因果関係の強いものを選びます。人手中心の工程なら直接作業時間、機械中心の工程なら機械運転時間が代表です。
| 間接費の例 | よく使う配賦基準 | 理由(因果関係) |
|---|---|---|
| 動力費(電気代) | 機械運転時間 | 機械を動かすほど発生する |
| 機械の減価償却費 | 機械運転時間 | 機械の使用に伴って価値が減る |
| 監督者の給料 | 直接作業時間 | 作業量が増えるほど管理の手間が増える |
| 工場消耗品費 | 直接作業時間 | 作業量の増減に連動して使われる |
配賦のやり方には、実際発生額をもとにする実際配賦と、予定配賦率による予定配賦があります。2級の中心は予定配賦です。理由は2つで、①実際発生額の確定を待たずに計算を進められること、②月ごとの発生額や操業度のブレをならして製品原価を安定させられることです。
確認:「直接費は直課、間接費は配賦」。基準は因果関係で選び、「なぜその基準か」を一言で説明できるようにしましょう。
予定配賦率と予定配賦額
予定配賦率は、期首に「製造間接費の予算額÷予定配賦基準量(基準操業度)」で決めます。当月の予算額が360,000円、予定直接作業時間が1,800時間なら、予定配賦率は360,000円÷1,800時間=200円/時です。
当月の配賦額は「予定配賦率×実際配賦基準量」で計算します。実際直接作業時間が1,420時間なら、予定配賦額は200円/時×1,420時間=284,000円で、仕訳は(借)仕掛品 284,000/(貸)製造間接費 284,000です。率は予定で作り、掛ける基準量は実際を使う——この組み合わせが崩れると答えがすべてずれます。
計算のたびに単位を書くのもおすすめです。円/時×時間=円のように単位がつながっていれば、分母・分子の取り違えにすぐ気づけます。
確認:率=予算額÷予定基準量(期首に確定)、配賦額=率×実際基準量(月末に計算)。「予定で割り、実際に掛ける」と唱えて固定しましょう。
配賦差異と売上原価加減法
予定の率で配っているので、月末には予定配賦額と実際発生額のあいだにズレが出ます。これが配賦差異です。「予定配賦額−実際発生額」で計算し、プラスなら配りすぎ=過大配賦(有利差異)、マイナスなら配り足りない=過少配賦(不利差異)です。さきほどの例なら284,000−280,000=+4,000円で、4,000円の有利差異です。
| 大小関係 | 名称 | 売上原価加減法での処理 |
|---|---|---|
| 予定配賦額 > 実際発生額 | 過大配賦(有利差異) | 売上原価から減額 |
| 予定配賦額 < 実際発生額 | 過少配賦(不利差異) | 売上原価に加算 |
差異の向きには意味があります。固定費が中心のラインでは、操業度が下がると固定費を配賦しきれず未吸収が生じ、不利差異が出やすくなります。差異は単なる計算誤差ではなく、操業や予算の状態を知らせるシグナルでもあるのです。
月中は予定配賦のまま走り、把握した配賦差異は製造間接費勘定から製造間接費配賦差異勘定へ振り替えておきます。そして会計期末に、差異をまとめて売上原価に賦課します。これが売上原価加減法で、2級で問われる差異の処理はこの方法です。有利差異は売上原価から差し引き、不利差異は売上原価に加えます。有利差異4,000円なら、期末の仕訳は(借)製造間接費配賦差異 4,000/(貸)売上原価 4,000です。
確認:差異の計算は「予定−実際」の順で統一します。有利=売上原価からマイナス、不利=プラス、とセットで覚えましょう。
ユイ差異が4,000円と分かっても、有利か不利かでいつも迷ってしまいます。
サクラ先生金額より先に大小関係を見ましょう。予定配賦額が実際発生額より大きければ、費用を多めに見込んで配っていたことになるので有利差異です。
ユイ実際発生額のほうが大きければ、配り足りない過少配賦で不利差異ですね。
サクラ先生そのとおりです。さらに「有利は売上原価から引く、不利は足す」まで一息で言えるようにすると、仕訳で迷いません。
例題で型をつかむ
当月の製造間接費予算額は360,000円、予定直接作業時間(基準操業度)は1,800時間である。当月の実際直接作業時間は1,420時間であった。予定配賦率と予定配賦額を求め、配賦の仕訳を示しなさい。
- 予定配賦率を計算する:360,000円÷1,800時間=200円/時です。
- 予定配賦額を計算する:200円/時×1,420時間=284,000円です。
- 単位を確認する:円/時×時間=円と、単位がつながっています。
- 仕訳にする:製造間接費から仕掛品へ振り替えます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品 | 284,000 | 製造間接費 | 284,000 |
ここで迷ったら:分母は予定の1,800時間です。実際の1,420時間で割ると率そのものが狂います。「予定で割り、実際に掛ける」を確認してから電卓を打ちましょう。
例題1に続き、当月の製造間接費の実際発生額は280,000円であった。配賦差異の金額と向きを判定し、差異を製造間接費配賦差異勘定へ振り替える仕訳と、会計期末に売上原価加減法で処理する仕訳を示しなさい。
- 差異を計算する:予定配賦額284,000−実際発生額280,000=+4,000円です。
- 向きを判定する:予定配賦額のほうが大きいので過大配賦=有利差異です。
- 差異を振り替える:製造間接費勘定に残った貸方超過4,000円を、製造間接費配賦差異勘定へ移します。
- 期末に処理する:有利差異なので売上原価から4,000円を差し引きます。
| 取引 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 差異の振替 | 製造間接費 | 4,000 | 製造間接費配賦差異 | 4,000 |
| 期末(売上原価加減法) | 製造間接費配賦差異 | 4,000 | 売上原価 | 4,000 |
ここで迷ったら:不利差異(実際発生額が大きい場合)は借方・貸方が逆になり、(借)売上原価/(貸)製造間接費配賦差異として売上原価に加算します。向きの言葉(有利・不利)と仕訳の方向を必ずセットで確認しましょう。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 予定配賦率の計算式はどれですか?(答えを見る)
製造間接費予算額÷予定配賦基準量(基準操業度)です。分母に実際操業度を使わない点がポイントです。
Q2. 予定配賦率200円/時・当月の実際直接作業時間1,420時間のとき、予定配賦額はいくらですか?(答えを見る)
284,000円です。予定配賦額=予定配賦率×実際配賦基準量=200円/時×1,420時間で求めます。
Q3. 予定配賦額284,000円・実際発生額280,000円のとき、配賦差異はどうなりますか?(答えを見る)
4,000円の有利差異(過大配賦)です。予定配賦額が実際発生額より大きいので配りすぎの状態です。
Q4. 有利差異4,000円を売上原価加減法で処理する期末の仕訳はどれですか?(答えを見る)
(借)製造間接費配賦差異 4,000/(貸)売上原価 4,000です。有利差異は売上原価から減額します。
Q5. 操業度が予定より大きく下がった月に不利差異が出やすい主な理由はどれですか?(答えを見る)
固定費が配賦しきれず未吸収になるからです。固定費は操業度が下がっても同額発生する一方、配賦額は実際操業度に比例して減るためです。
製造間接費は、予算額÷予定配賦基準量で決めた予定配賦率に、実際配賦基準量を掛けて配賦します。予定配賦額と実際発生額の差が配賦差異で、予定が大きければ有利(過大配賦)、小さければ不利(過少配賦)です。差異は期末に売上原価加減法で処理し、有利は売上原価から減額・不利は加算します。次の単元では、配賦をさらに正確にするために部門ごとに集計する部門別原価計算を学びます。