勘定連絡図でつかむ:仕掛→製品→売上原価
勘定の流れを先に掴み、仕訳と表示の往復で理解を固めていきましょう。
このページの使い方
- 先に見る:用語集:製造原価報告書
- 後で解く:ミニ問題(勘定連絡)
- つなぎ:CVP分析
1分で型
- 材料・賃金・間接費はまず仕掛品に集約
- 完工=仕掛から製品へ/販売=製品から売上原価へ
- 期首+当期投入−期末=当期減少の関係を各勘定で確認
この章のゴール
- 仕掛→製品→売上原価の連関を説明できる
- 完工・売上原価の仕訳の型を示せる
- 試算表から流れを復元できる
学ぶ順番
- 材料・賃金・間接費→仕掛品
- 完工時:製品へ振替
- 販売時:売上原価へ振替
製造原価報告書(テンプレート)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 期首材料棚卸高 | |
| 当期材料仕入高 | |
| 材料費小計 | |
| 期末材料棚卸高 | |
| 直接材料費 | |
| 直接労務費 | |
| 製造間接費 | |
| 当期製造費用合計 | |
| 期首仕掛品棚卸高 | |
| 総製造原価 | |
| 期末仕掛品棚卸高 | |
| 製造原価(完成品原価) |
勘定連絡図の「仕掛→製品」を報告書の形式に表したものです。期首・期末の位置と、当期投入との関係を確認しましょう。
本文骨子
はじめに
勘定連絡図は在庫の通り道を上から見た地図です。材料・賃金・間接費は仕掛品に集まり、完成で製品へ、販売で売上原価へ移ります。
理解の道筋
各勘定で期首+当期増加−期末=当期減少が成り立つかを確かめるだけで、試算表と自然に一致します。仕訳を丸暗記せず、流れの位置で振替の型を当てはめましょう。
手を動かす視点
完工は製品/仕掛品、販売は売上原価/製品。この二つを流れの位置に置ければ十分です。
まとめ(要点)
- 材料・賃金・間接費は仕掛品に集約。
- 完成で製品へ、販売で売上原価へ振替。
- 期首+当期増加−期末=当期減少を各勘定で確認。
仕訳の型(勘定連絡:早見)
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 材料払出 | 仕掛品 | 材料 |
| 賃金計上(直接) | 仕掛品 | 賃金 |
| 製造間接費の配賦 | 仕掛品 | 製造間接費 |
| 完工 | 製品 | 仕掛品 |
| 販売(原価振替) | 売上原価 | 製品 |
ミニ例
期首仕掛20,000、当期投入100,000、完工で80,000を製品へ、期末仕掛40,000。製品から販売で60,000を売上原価へ。連絡図と試算表残高が一致するかを照合。
解説(勘定で確認する手順)
- 仕掛品:期首20,000+当期投入100,000−完工80,000=期末40,000(一致)。
- 製品:仕掛→製品へ80,000が増加。販売で60,000が売上原価へ移るので、(期首+受入−出庫=期末)の関係で残高を確認します。
- 売上原価:製品からの振替60,000が当期費用として計上されます。
- 各勘定で期首+当期増加−期末=当期減少が成り立つか、連絡図と金額を照合します。
完全版(数値つき・勘定連絡)
| 勘定 | 式 | 確認 |
|---|---|---|
| 仕掛品 | 20,000+100,000−80,000 | =40,000(期末) |
| 製品 | 受入80,000−出庫60,000 | =20,000(期末) |
| 売上原価 | 製品からの振替 | =60,000(当期費用) |
メモリヒント:完工=製品/仕掛、販売=売上原価/製品。各勘定で期首+増加−期末=減少を確認します。
演習はミニ問題へ。
取り違え注意
- 期首・期末の位置(各勘定での「増減」関係)
- 製造間接費は仕掛に配賦済み(直接費と混同しない)
- 連絡図と試算表金額の照合を忘れない
そのまま手を動かす5問
- 材料・賃金・間接費は最初どこへ?
- 完工時の振替仕訳は?
- 販売時の振替仕訳は?
- 期末に仕掛が残る場合の確認点は?
- 試算表と連絡図の突合せは何を比較?
参考解答(折りたたみ)
1) 材料・賃金・間接費は最初どこへ?
仕掛品です(間接費は予定配賦で仕掛へ)。
2) 完工時の振替仕訳は?
製品/仕掛品(完成した製品の分だけ仕掛から製品へ移します)。
3) 販売時の振替仕訳は?
売上原価/製品(販売した分だけ製品から売上原価へ)。売上計上(売掛金/売上高)は別仕訳です。
4) 期末に仕掛が残る場合の確認点は?
期首+当期投入−完工=期末の関係が各勘定で成り立つかを確認します。
5) 試算表と連絡図の突合せは何を比較?
各勘定の残高(仕掛・製品・売上原価 等)が連絡図の集計と一致するかを比較します。
やさしい読み替え
- 仕掛=「作り中の箱」、製品=「作り終えた箱」
- 完成=「仕掛の箱から製品の箱へ移す」
- 販売=「製品の箱から売上原価の箱へ移す」
図解:勘定連絡の基本図
対話でつかむ:仕掛→製品→売上原価
講師/学習者の会話で、勘定が流れる順番を口で追って固定化します。
学習者:材料・賃金・間接費はまずどこへ?
講師:すべて仕掛品に集まります(間接費は予定配賦で乗る)。
学習者:製品ができたら?
講師:完成時に製品へ振替。ここで仕掛品が減り、製品が増えます。
学習者:販売したら?
講師:売上計上と同時に売上原価へ振替。製品が減って売上原価が増えます。
学習者:期末は仕掛や製品が残ることも。
講師:はい。連絡図では期首+当期増加−期末=当期減少の関係が各勘定で成り立つかを確認します。
学習者:試算表と突き合わせるコツは?
講師:連絡図の合計と試算表残高が一致するか、流れと数字の両面で照合することです。
物語の俯瞰は「第8話:勘定連絡図」で流れを通し読みできます。
関連リンク
突合せチェックリスト
- 仕掛:期首+当期投入−完工=期末になっているか
- 製品:受入(完工)−出庫(売上原価)=期末になっているか
- 売上原価:製品からの振替額と一致しているか
- 製造間接費:配賦差異の処理(損益か比例配分か)が一貫か
- 連絡図の小計・合計が試算表の残高と一致するか