総合原価計算(等級別・組別・工程別)
同じ規格の製品を作り続ける工場では、注文ごとではなく1か月分をまとめて原価を計算します。ボックス図で数量を整理し、完成品換算量から平均法・先入先出法で原価を配分する型を、正常仕損の度外視法、等級別・組別・工程別まで含めて固めていきましょう。
この単元で身につくこと
- ボックス図で月初・当月投入・完成・月末の数量を整理し、完成品換算量を材料費と加工費に分けて計算できます。
- 平均法と先入先出法で、完成品原価と月末仕掛品原価を計算できます。
- 正常仕損の度外視法と、等級別・組別・工程別総合原価計算の基本の型を使えます。
まずイメージ:1か月分をまとめて計算し、完成品と月末仕掛品に分ける
前の単元「個別原価計算と仕損費」は注文ごとに原価を集計しましたが、飲料や部品のように同じ製品を大量に作り続ける工程では、注文という区切りがありません。そこで総合原価計算では、1か月間に発生した原価をまとめて集計し、それを「当月に完成した製品」と「月末にまだ作りかけの仕掛品」に分けます。計算はいつも「数量整理→完成品換算量→単位原価→配分」の4段階で、最初の数量の土台が崩れると後ろがすべて崩れます。
月末仕掛品は作りかけなので、完成品と同じ1個として数えるわけにはいきません。そこで進み具合(進捗度)を掛けて「完成品の何個分か」に換算します。この換算後の数量が完成品換算量で、総合原価計算のすべての計算の分母になります。
原価計算の基礎から確認するなら、原価計算初級の「製品別の原価集計(個別・総合)」へ戻れます。
数量整理とボックス図——完成品換算量を作る
最初の仕事は数量の整理です。「月初仕掛品+当月投入=完成品+月末仕掛品」という関係を、仕掛品勘定をかたどったボックス図に書き込みます。例として、月初仕掛品200個(加工進捗50%)・当月投入1,000個・完成品900個・月末仕掛品300個(加工進捗40%)、材料は工程の始点で投入という月を考えます。まず数量だけのボックス図を作り、左右の合計が一致することを確かめます。
次に完成品換算量です。ポイントは材料費と加工費を別々に換算することにあります。材料は工程の始点で一括投入されることが多いので、月末仕掛品でも材料は100%入っており、数量をそのまま使えます。一方、賃金や電力のような加工費は加工が進むほどかかるので、「数量×進捗度」で換算します。月末仕掛品300個(進捗40%)の加工費は300×40%=120個分、月初仕掛品200個(進捗50%)は200×50%=100個分です。加工費のボックス図には、この換算量だけを書き込みます。
確認:ボックス図は材料費用と加工費用の2枚に分け、それぞれ左右の合計一致を確かめてから単位原価の計算へ進みます。
平均法と先入先出法——どの原価で単価を作るか
数量がそろったら単位原価を計算しますが、その前に決めることが1つあります。月初仕掛品の原価を「当月の原価と混ぜるか、混ぜないか」です。混ぜるのが平均法、混ぜないのが先入先出法です。
平均法は、月初仕掛品原価と当月製造費用を合算し、(完成品数量+月末仕掛品の換算量)で割って平均単価を作ります。月初分も当月分も同じ単価になるので、計算がシンプルです。先入先出法は「先に入ったものから先に仕上げる」と考え、月初仕掛品はそのまま完成品になったとみなします。単価は当月製造費用だけを当月投入の完成品換算量で割って作り、月初仕掛品の原価は平均せずにそのまま完成品原価へ持ち込みます。材料は一括投入なら100%、加工は進捗の割合で換算するという数え方は、どちらの方法でも共通です。
| 項目 | 平均法 | 先入先出法 |
|---|---|---|
| 単価の分子 | 月初仕掛品原価+当月製造費用 | 当月製造費用のみ |
| 単価の分母 | 完成品数量+月末仕掛品の換算量 | 当月投入の完成品換算量(完成−月初換算+月末換算) |
| 月初仕掛品原価の扱い | 当月分と混ぜて平均する | 混ぜずに完成品原価へそのまま持ち込む |
どちらの方法でも、計算の最後に「完成品原価+月末仕掛品原価=月初仕掛品原価+当月製造費用」が成り立つかを検算します。原価は増えも減りもせず、完成品と月末仕掛品に分かれるだけだからです。
確認:混ぜるなら平均法、混ぜないなら先入先出法。単価を作る前に、問題文の方法名を必ず確認しましょう。
ユイ先入先出法でも、つい単価の計算に月初仕掛品の原価を足してしまいそうになります。
サクラ先生先入先出法の単価は当月製造費用だけで作ります。月初仕掛品は先に仕上がる前提なので、その原価は平均せず、そのまま完成品原価へ持ち込むのがルールです。
ユイ月初の原価を混ぜて割るのは平均法のほう、と覚えればよいですか?
サクラ先生はい。「混ぜるなら平均法、混ぜないなら先入先出法」です。分子に何を入れたかを指差し確認してから割り算しましょう。
正常仕損・減損の度外視法
「塗装工程で不良が出ました。一定の割合で出る正常な仕損です」「月末の仕掛は材料100%・加工50%の進捗で、途中で正常仕損が出ています」——現場からはこうした報告が上がってきます。加工に失敗した不合格品を仕損、蒸発や目減りで数量が減ることを減損といい、通常の操業でも避けられない範囲のものを正常仕損・正常減損と呼びます。
正常仕損・正常減損の原価は、良品(完成品や月末仕掛品)を作るために必要なコストとして良品の原価に含めます。2級で使う計算方法が度外視法です。度外視法では、仕損品への原価をわざわざ別建てで計算せず、仕損の分もまとめて良品に負担させます。たとえば工程の終点で正常仕損50個が発生した場合、月末仕掛品はまだ終点を通過しておらず仕損を出していないので、仕損費は完成品だけに負担させます。具体的には、単価を(完成品+仕損+月末仕掛品の換算量)で計算し、完成品原価を「単価×(完成品+仕損)」として仕損分を完成品に含めます。
負担先の判定基準は発生点です。仕損の発生点を月末仕掛品が通過していなければ完成品のみ負担、通過していれば(発生点が月末仕掛品の進捗より前なら)完成品と月末仕掛品の両者負担になります。まず問題文から発生点を探しましょう。
なお、仕損品の原価をいったん分離して把握する非度外視法や、異常仕損費・異常減損費の処理は1級(簿記1級)の範囲です。
確認:正常仕損・減損は良品の原価へ。度外視法では分母に仕損を含めて単価を作り、発生点と月末仕掛品の進捗を比べて負担先を決めます。
等級別・組別・工程別総合原価計算
単一製品・単一工程の型を押さえたら、製品や工程が複数あるバリエーションに広げます。いずれも「基本の型+ひと工夫」で解けます。
等級別総合原価計算——等価係数と積数で按分する
同じ種類の製品で、サイズや品質など等級だけが違う場合(S・M・Lサイズの製品など)は等級別総合原価計算を使います。まず全体を1本の総合原価計算で計算し、完成品総合原価を等価係数(基準製品を1とした原価負担の割合)に数量を掛けた積数の比で各等級に按分します。たとえば等級製品A(等価係数1.0・完成300個)とB(等価係数0.8・完成250個)で完成品総合原価が250,000円なら、積数はA 300×1.0=300、B 250×0.8=200で、A:B=300:200です。
| 製品 | 完成量 | 等価係数 | 積数 | 按分原価 | 単位原価 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 300個 | 1.0 | 300 | 150,000 | 500円/個 |
| B | 250個 | 0.8 | 200 | 100,000 | 400円/個 |
| 合計 | 550個 | 500 | 250,000 |
Aの按分原価は250,000×300/500=150,000円(単位原価500円)、Bは250,000×200/500=100,000円(単位原価400円)です。単位原価の比(500円:400円)が等価係数の比(1.0:0.8)と一致していれば正しく按分できています。
組別総合原価計算——組ごとに分けて計算する
同じ工場で種類の異なる製品(組)を作る場合は組別総合原価計算です。各組に跡付けできる組直接費はそのまま各組へ賦課し、跡付けできない組間接費は機械運転時間などの基準で各組へ配賦します。そのあとは、組ごとに普通の総合原価計算を行うだけです。たとえば組製品X・Yの組直接費(直接材料費)がX 200,000円・Y 150,000円、組間接費(加工費)120,000円を機械運転時間X 40時間:Y 20時間で配賦すると、Xへ80,000円・Yへ40,000円です。月初・月末仕掛品がなく完成量がX 100個・Y 50個なら、Xの完成品原価は280,000円(単位原価2,800円)、Yは190,000円(単位原価3,800円)になります。
工程別総合原価計算(累加法)——前工程費をバトンのように渡す
切削→組立のように工程が2つ以上続く場合は工程別総合原価計算です。2級で学ぶ累加法では、まず第1工程の完成品(完了品)原価を計算し、それを第2工程へ振り替えます。「第1工程の当月完了品の原価が500,000円になりました。第2工程に渡します」という場面の仕訳は次のとおりで、受け取った第2工程ではこの500,000円を前工程費という費目で扱います。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 仕掛品〔第2工程〕 | 500,000 | 仕掛品〔第1工程〕 | 500,000 |
前工程費は第2工程の始点で全量投入される材料と同じ扱いで、月末仕掛品でも進捗にかかわらず100%です。第2工程では「前工程費+第2工程の加工費」で総合原価計算を行い、その完了品原価をさらに次へ渡していきます。前工程の原価を順に積み上げていくので累加法と呼びます。
なお、同じ原料を加工すると工程の分岐点で製品Aと製品Bに分かれ、分岐点までの加工コストは共通——このように同一工程から必然的に別種の製品が生まれるとき、これらを連産品といいます。また、主産物の製造に伴って生まれる価値の低い物品を副産物といいます。連産品の計算と副産物の処理・評価は1級(簿記1級)の範囲です。
確認:等級別=1本で計算して積数で按分、組別=組直接費は賦課・組間接費は配賦して組ごとに計算、工程別(累加法)=前工程費を始点投入の材料と同じ扱いで次工程へ。
ユイ等級別と組別は、どちらも製品が複数あって混同してしまいます。
サクラ先生見分けの軸は製品の種類です。同じ種類でサイズや品質だけが違うなら等級別、そもそも別の種類の製品なら組別です。
ユイだから等級別は最後に按分で分けて、組別は最初から分けて計算するのですね。
サクラ先生そのとおりです。同じ種類だから1本で計算して等価係数で分けられる、別の種類だから組ごとに計算するしかない、と理由ごと覚えましょう。
例題で型をつかむ
当月の生産データは、月初仕掛品200個(加工進捗50%)・当月投入1,000個・完成品900個・月末仕掛品300個(加工進捗40%)で、材料は工程の始点で投入している。月初仕掛品原価は材料費120,000円・加工費80,000円、当月製造費用は材料費600,000円・加工費532,000円である。平均法により、完成品原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
- 数量整理を確認する:月初200+投入1,000=完成900+月末300(左右とも1,200個)です。
- 完成品換算量を数える:材料は始点投入なので完成900+月末300=1,200個。加工費は完成900個分+月末120個分(300×40%)=1,020個分です。
- 平均単価を計算する:材料費(120,000+600,000)÷1,200=600円、加工費(80,000+532,000)÷1,020=600円です。
- 月末仕掛品原価を計算する:材料300×600=180,000円、加工120×600=72,000円で、計252,000円です。
- 完成品原価を計算する:材料900×600=540,000円、加工900×600=540,000円で、計1,080,000円です。検算は1,080,000+252,000=1,332,000円が総原価(200,000+1,132,000)と一致することを確かめます。
| 摘要 | 材料費 | 加工費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 月初仕掛品原価 | 120,000 | 80,000 | 200,000 |
| 当月製造費用 | 600,000 | 532,000 | 1,132,000 |
| 合計 | 720,000 | 612,000 | 1,332,000 |
| 月末仕掛品原価 | 180,000 | 72,000 | 252,000 |
| 完成品総合原価 | 540,000 | 540,000 | 1,080,000 |
完成品単位原価は1,080,000÷900=1,200円です。
ここで迷ったら:加工費の月末仕掛品は必ず換算量120個分で計算します。300個のまま単価を掛けると月末仕掛品原価が大きくなりすぎ、検算の合計も合わなくなります。
当月の生産データは、月初仕掛品200個(材料の進捗60%・加工の進捗30%)・当月投入1,000個・完成品900個・月末仕掛品300個(材料の進捗100%・加工の進捗40%)で、材料は加工の進行に応じて投入している。月初仕掛品原価は材料費120,000円・加工費60,000円、当月製造費用は材料費594,000円・加工費480,000円である。先入先出法により、完成品原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
- 当月投入の完成品換算量を数える:材料は月初の残り200×(100%−60%)=80、当月に着手して完成した分900−200=700、月末300×100%=300で、合計1,080個分です。加工費は200×(100%−30%)=140、700、300×40%=120で、合計960個分です。
- 当月単価を計算する:材料費594,000÷1,080=550円、加工費480,000÷960=500円です。分子は当月製造費用だけを使います。
- 月末仕掛品原価を計算する:材料300×550=165,000円、加工120×500=60,000円で、計225,000円です。
- 完成品原価を計算する:総原価1,254,000円(月初180,000+当月1,074,000)から月末225,000円を差し引いて1,029,000円です。内訳で確かめると、月初の持込原価180,000円+月初を仕上げる分(80×550+140×500=114,000円)+当月着手完成分(700×550+700×500=735,000円)=1,029,000円で一致します。
| 摘要 | 材料費 | 加工費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 月初仕掛品原価 | 120,000 | 60,000 | 180,000 |
| 当月製造費用 | 594,000 | 480,000 | 1,074,000 |
| 合計 | 714,000 | 540,000 | 1,254,000 |
| 月末仕掛品原価 | 165,000 | 60,000 | 225,000 |
| 完成品総合原価 | 549,000 | 480,000 | 1,029,000 |
ここで迷ったら:単価の分子に月初仕掛品原価を足したら平均法になってしまいます。また、月初仕掛品の換算量は「残りの進捗(100%−月初進捗)」で数える点が先入先出法の独特なところです。
当月の生産データは、月初仕掛品なし・当月投入1,100個・完成品1,000個・月末仕掛品50個(加工進捗40%)で、材料は工程の始点で投入している。工程の終点で正常仕損50個が発生した。当月製造費用は材料費660,000円・加工費535,000円である。正常仕損費は度外視法により完成品に負担させる。完成品原価と月末仕掛品原価を求めなさい。
- 数量整理を確認する:投入1,100=完成1,000+仕損50+月末50です。
- 負担先を判定する:仕損は終点発生で、月末仕掛品(進捗40%)は発生点を通過していないため、完成品のみ負担です。
- 完成品換算量を数える:材料は完成1,000+仕損50+月末50=1,100個。加工費は完成1,000個分+仕損50個分(終点発生なので進捗100%)+月末20個分(50×40%)=1,070個分です。
- 単価を計算する:材料費660,000÷1,100=600円、加工費535,000÷1,070=500円です。
- 配分する:月末仕掛品は材料50×600+加工20×500=30,000+10,000=40,000円。完成品は仕損分を含めて材料(1,000+50)×600=630,000円、加工(1,000+50)×500=525,000円の計1,155,000円です。検算は1,155,000+40,000=1,195,000円=当月製造費用の合計で一致します。
ここで迷ったら:度外視法・完成品負担では、仕損の換算量を分母に入れたうえで、仕損分の原価を完成品に上乗せします。月末仕掛品に仕損を負担させるかどうかは、発生点と月末仕掛品の進捗の比較で決まります。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 月末仕掛品300個(加工進捗40%)の加工費の完成品換算量は何個分ですか?(答えを見る)
120個分です。加工費は数量×進捗度で換算するので、300×40%=120個分になります。材料が始点投入なら材料は300個のままです。
Q2. 平均法の単位原価の分子はどれですか?(答えを見る)
月初仕掛品原価+当月製造費用です。平均法は月初分と当月分を混ぜて平均単価を作ります。
Q3. 先入先出法で単価の計算に使う原価はどれですか?(答えを見る)
当月製造費用のみです。月初仕掛品原価は平均せず、そのまま完成品原価へ持ち込みます。
Q4. 等級製品A(等価係数1.0・300個)とB(等価係数0.8・250個)に完成品総合原価250,000円を按分すると、Bの完成品原価はいくらですか?(答えを見る)
100,000円です。積数はA 300・B 200なので、B=250,000×200/500=100,000円(単位原価400円)です。
Q5. 第1工程の完了品原価500,000円を第2工程へ振り替える仕訳はどれですか?(答えを見る)
(借)仕掛品〔第2工程〕500,000/(貸)仕掛品〔第1工程〕500,000です。第2工程ではこれを前工程費として、始点投入の材料と同じように扱います。
総合原価計算は「数量整理→完成品換算量→単位原価→配分」の順で進め、材料費と加工費は必ず別々に計算します。平均法は月初原価を混ぜて平均し、先入先出法は当月製造費用だけで単価を作ります。正常仕損・減損は度外視法で良品に負担させ、等級別は積数で按分、組別は組ごとに計算、工程別(累加法)は前工程費を次工程へ渡します。次の単元では、原価のものさしを先に決める標準原価計算を学びます。