総合原価計算(加重平均法/先入先出法)
等価完成量→単位当たり原価→完成・月末の配賦へ、表の型で速度を上げていきましょう。
このページの使い方
- 先に見る:用語集:平均法/先入先出、等価完成量
- 後で解く:ドリル(総合原価)
- つなぎ:標準原価計算の差異
本文骨子
はじめに
総合原価計算は、工程で作り続ける製品の原価を流れの単位で集計する方法です。月末に残る「途中の品物」を完成に言い換えた数(等価完成量)を作ってから配賦するのが要点です。
理解の道筋
まず数量整理表で投入・完成・月末を整えます。次に、材料と加工を分けて等価完成量を求めます。材料は期首一括投入が多く等価100%になりやすく、加工は進捗%で換算します。その後、単位原価=(期首+当月)÷(完成等価+月末等価)で価格を決め、完成・月末へ配ります。
手を動かす視点
テンプレートに沿って上から順に埋めると、計算は機械的に流れます。材料/加工の二本立てを崩さず、合計が一致するかを都度確かめましょう。
まとめ(要点)
- 数量整理表で全体(投入・完成・月末)を整える。
- 材料/加工で等価完成量を別々に求める。
- 単位原価で完成・月末へ配賦(加重平均/先入先出)。
単位原価の式(早見)
| 区分 | 加重平均法 | 先入先出法 |
|---|---|---|
| 材料の単位原価 | (期首材料原価+当月材料原価)÷(完成等価+月末等価) | 当月材料原価 ÷(当月完成等価+月末等価) |
| 加工の単位原価 | (期首加工原価+当月加工原価)÷(完成等価+月末等価) | 当月加工原価 ÷(当月完成等価+月末等価) |
ミニ例
加重平均:完成900、月末300(加工40%)。材料等価=900+300×1.0=1,200、加工等価=900+300×0.4=1,020。単位原価を求め、完成・月末へ配賦。
解説(導出の手順)
- 数量整理:投入=完成+月末が成り立つか確認します(本例は前提として成立)。
- 等価完成量:材料は一括投入で100%、加工は進捗40%。材料等価=900+300×1.0、加工等価=900+300×0.4。
- 単位原価:材料・加工ごとに(期首+当月)÷(完成等価+月末等価)で算定します。
- 配賦:完成=各単位原価×完成等価、月末=各単位原価×月末等価。材料・加工を別々に計算して合計します。
完全版(数値つき・加重平均法)
与件:完成900、月末300(材料100%・加工40%)。期首原価=材料120,000・加工80,000、当月原価=材料600,000・加工510,000。
| 区分 | 材料 | 加工 |
|---|---|---|
| 完成等価 | 900 | 900 |
| 月末等価 | 300×1.0=300 | 300×0.4=120 |
| 合計 | 1,200 | 1,020 |
| 区分 | 分子(期首+当月) | 分母(等価) | 単位原価 |
|---|---|---|---|
| 材料 | 120,000+600,000=720,000 | 1,200 | 600 |
| 加工 | 80,000+510,000=590,000 | 1,020 | 578.431… |
| 区分 | 材料 | 加工 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 完成 | 600×900=540,000 | ≈578.431×900=520,588 | 1,060,588 |
| 月末 | 600×300=180,000 | ≈578.431×120=69,412 | 249,412 |
メモリヒント:材料/加工は別々に計算/数量整理→等価→単位原価→配賦の順にテンプレで埋めると早いです。
完全版(数値つき・先入先出法・別例)
与件:期首仕掛200(材60%・加30%)、当月投入1,000、完成900、月末仕掛300(材100%・加40%)。
期首原価=材料120,000・加工60,000、当月原価=材料600,000・加工480,000。
- 当月等価(FIFO):期首の未完部分だけ+当月の開始完了+月末の等価を数えます。
- 材料:期首(100−60)%×200=80、開始完了=(900−200)×100%=700、月末=300×100%=300 → 合計1,080
- 加工:期首(100−30)%×200=140、開始完了=700、月末=300×40%=120 → 合計960
- 当月単位原価(当月原価だけ使用):
- 材料=600,000 ÷ 1,080 = 555.555…
- 加工=480,000 ÷ 960 = 500
- 配賦:
- 期首仕掛の完成に必要=材80×555.555≈44,444、加140×500=70,000
- 開始完了(700)=材700×555.555≈388,889、加700×500=350,000 → 合計738,889
- 月末(300,40%)=材300×555.555≈166,667、加120×500=60,000 → 合計226,667
- 完成品原価(FIFO)=期首原価180,000+期首未完の追加114,444+開始完了738,889≈1,033,333。
- 検算:総原価=期首180,000+当月1,080,000=1,260,000。完成1,033,333+月末226,667≈1,260,000(一致)。
メモリヒント:FIFOは「当月分だけで単位原価」→期首は持込原価+未完分の追加として扱います。
1分で型
- 数量整理表で投入=完成+月末を確認する
- 等価完成量=仕掛の進捗率を掛けて完成品換算
- 加重平均法/先入先出法で単位原価→完成・月末へ配賦
この章のゴール
- 等価完成量の算定ができる
- 加重平均/先入先出の単位当たり原価を求められる
- 完成品・月末仕掛への配賦を説明できる
学ぶ順番
- 数量の整理(投入・完成・月末)
- 等価完成量の計算
- 単位原価→配賦額の算定
取り違え注意
- 材料は一括投入が多い=材料の進捗は100%が多い
- 先入先出は期首仕掛を先に完成させる前提
- 数量整理で「投入=完成+月末」が崩れていないか
- 段階投入:材料は期首一括・加工は期間均等が与件の定番=等価の扱いが異なる
そのまま手を動かす5問
- 数量整理表を空欄で書く(区分だけ)
- 材料は期首一括投入—月末材料の等価は?
- 加工の月末進捗60%—等価は?
- 加重平均で単位原価を出す手順を一言で。
- 完成・月末への配賦を式で書く。
参考解答(折りたたみ)
1) 数量整理表(区分)
投入/完成品/月末仕掛(進捗%)の3行で整理します。材料と加工を列で分け、投入=完成+月末の関係を崩さないのがコツ。
2) 材料は期首一括投入—月末材料の等価は?
多くの場合100%。材料は期首に全量投入済みの前提が与えられることがあり、その場合、月末仕掛の材料は完成換算で100%とみなします。
3) 加工の月末進捗60%—等価は?
60%。加工は進捗率をそのまま等価に用います。
4) 加重平均で単位原価を出す手順
(期首原価+当月原価)÷(完成等価+月末等価)。材料と加工を別々に計算し、単位当たり原価を求めます。
5) 完成・月末への配賦の式
完成配賦=単位原価×完成等価、月末配賦=単位原価×月末等価(材料・加工それぞれ実施)。最後に合計が投入原価と一致するか照合します。
やさしい読み替え
- 等価完成量=「途中の製品を完成品に言い換えた数」
- 平均法=「全部まとめて割る」/先入先出=「先に入った分から仕上げる」
数量整理表(テンプレート)
| 区分 | 材料 | 加工 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 投入 | |||
| 完成品 | |||
| 月末仕掛(進捗%) |
等価完成量と単位原価(テンプレート)
| 区分 | 材料 | 加工 | 合計原価 | 単位原価 |
|---|---|---|---|---|
| 等価完成量 | ||||
| 単位当たり原価 |
対話でつかむ:等価完成量と加重平均/先入先出
講師/学習者の会話で、「数量整理→等価完成量→単位原価→配賦」の一筆書きを確認します。
学習者:最初にやることは数量整理表、で合っていますか?
講師:はい。投入=完成+月末の関係を材料・加工で分けて確認します。ここで迷うと後ろがすべて崩れます。
学習者:等価完成量は、仕掛の進捗で完成品に換算する考え方ですね。
講師:そのとおり。材料が期首一括投入なら材料の進捗は100%が多い、一方で加工は進捗%を掛けます。
学習者:加重平均法と先入先出法の違いは?
講師:加重平均は期首仕掛の原価を当月投入に混ぜて平均。先入先出は期首分を先に仕上げ、当月投入は当月進捗分だけを評価します。
学習者:単位原価を出したら、完成品と月末仕掛に配賦ですね。
講師:はい。表の見出し(材料/加工)に合わせて単位原価×数量(等価完成量)を掛けるだけ。最後に合計が一致するか照合します。
学習者:計算の型を崩さないのが一番の近道、と。
講師:まさに。手を動かす順番を固定化し、数字を順に埋めていけば失点が減ります。
関連リンク
補足:仕損・減損・副産物(軽量版)
- 正常仕損(正常減損):完成品原価に含める(平均法では完成等価へ吸収)。
- 異常仕損(異常減損):異常仕損損失として期間費用(別計上)。
- 副産物:実現価額(見積正味売却価額)を主産物原価から控除(簡便法)。
数値ミニ例(平均法・正常仕損あり)
完成950、正常仕損50、月末300(加工40%)。正常仕損は完成換算に含め、材料等価=950+50+300、加工等価=950+50+300×0.4で等価を作ります。
異常仕損20が別途発生のときは、当該20に対応する原価を異常仕損損失へ。
数値ミニ例(副産物の控除・簡便法)
副産物の見積正味売却価額が12,000なら、完成品原価から12,000控除して主産物原価を算定(副産物売上は通常「雑収入」)。