転記とT字勘定

仕訳を総勘定元帳へ転記するルールと、T字勘定を使って残高を読み取る方法を、例題とミニ演習で身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:仕訳を勘定ごとに書き写す

仕訳は取引を記録する最初の一歩ですが、そのままでは「現金がいくら残っているか」のような勘定ごとの状況が分かりません。仕訳を勘定科目ごとに書き写す作業が転記で、書き写す先が総勘定元帳です。転記のルールはとてもシンプルで、仕訳の借方科目は元帳の借方へ、貸方科目は元帳の貸方へ、そのまま同じ側に写すだけです。下の図で、仕訳から元帳への対応を確認しましょう。

図解:仕訳から元帳への転記

仕訳から総勘定元帳への転記フロー 仕訳帳の借方科目は総勘定元帳の借方へ、貸方科目は貸方へ、同じ側にそのまま転記することを示した図。 仕訳帳 総勘定元帳(各勘定のT字) 借方科目:現金 金額 10,000 貸方科目:売上 金額 10,000 現金勘定の借方へ 相手科目:売上/10,000 売上勘定の貸方へ 相手科目:現金/10,000 ポイント:借方科目は借方へ、貸方科目は貸方へ。左右を入れ替えないことが転記の大原則です。

図の見方:左が仕訳帳の1行、右が転記先の総勘定元帳です。借方科目は借方の箱へ、貸方科目は貸方の箱へ、同じ高さのまま横に写すとイメージすると覚えやすくなります。

転記のルール

転記では、日付・相手科目・金額の3つを元帳に書き写します。相手科目とは「仕訳のもう一方の科目名」のことです。今書いている勘定そのものの名前は相手科目欄には入りません。

確認:転記の直後に「相手科目は今の勘定と違う名前になっているか」を声に出して確認すると、取り違えを防げます。

T字勘定の読み方

総勘定元帳は、勘定科目ごとにアルファベットのT字勘定に見立てて書くと分かりやすくなります。左側が借方、右側が貸方です。合計を出し、差額を残る側に書いたものが「残高」です。買掛金(負債)の例で確認しましょう。

図の見方:貸方合計100,000から借方合計40,000を引くと60,000。大きい方の側(貸方)に残高が残るので、買掛金は貸方残60,000です。買掛金は負債なので、通常は貸方残になります。

複数行仕訳の転記(諸口)

1つの仕訳で、借方または貸方に2つ以上の科目が並ぶことがあります(複合仕訳)。この場合、相手科目が1つに決まらない側の勘定では、個別の科目名ではなく「諸口」を使います。

確認:迷ったら「この行の反対側は、科目が1つか、2つ以上か」を先に数えます。1つならその科目名、2つ以上なら諸口です。

転記が終わったら、仕訳の借方合計・貸方合計と、各勘定へ書き写した金額の合計が一致しているかをざっと確かめる習慣をつけましょう。1本の仕訳から2つ以上の勘定へ書き写すため、写し漏れが1つあるだけで、後の試算表で貸借が合わなくなります。転記は「仕訳の左右をそのまま運ぶ」作業だと意識すると迷いが減ります。

例題で型をつかむ

例題1(現金売上の転記実況)

次の仕訳を、現金勘定と売上勘定へ転記しなさい。(借)現金 50,000/(貸)売上 50,000

  1. 借方科目を確認する:借方は「現金」50,000です。
  2. 現金勘定の借方へ書く:相手科目は「売上」、金額50,000を現金勘定の借方(左側)に記入します。
  3. 貸方科目を確認する:貸方は「売上」50,000です。
  4. 売上勘定の貸方へ書く:相手科目は「現金」、金額50,000を売上勘定の貸方(右側)に記入します。

ここで迷ったら:転記する側は仕訳の借方・貸方とそろえます。相手科目は「今書いている勘定ではない、もう一方の科目名」です。

例題2(諸口を使う転記)

次の仕訳を、現金・売掛金・売上の各勘定へ転記しなさい。(借)現金 30,000・売掛金 90,000/(貸)売上 120,000

  1. 借方科目「現金」を転記する:現金勘定の借方へ、相手科目「売上」、金額30,000を記入します。
  2. 借方科目「売掛金」を転記する:売掛金勘定の借方へ、相手科目「売上」、金額90,000を記入します。
  3. 貸方科目「売上」を転記する:借方側は現金・売掛金の2科目に分かれているため、相手科目は1つに決まりません。
  4. 諸口を使う:売上勘定の貸方へ、相手科目「諸口」、金額120,000(30,000+90,000)を記入します。

ここで迷ったら:相手科目が2つ以上に分かれるときは「諸口」。1つに決まるときは相手科目名をそのまま書きます。現金・売掛金それぞれの側は相手が「売上」1つなので、諸口にはしません。

よくあるミス

相手科目を自分の科目と取り違える相手科目欄に、今転記している勘定そのものの名前を書いてしまうミスです。仕訳の借方・貸方の両方を見てしまうと起こります。「今書いている勘定ではない、もう一方の科目」を必ず確認してから書きましょう。
諸口にすべき所を科目名にする相手科目が2つ以上に分かれるのに、片方の科目名だけを書いてしまうミスです。複合仕訳の一部だけを見て転記すると起こります。相手科目が1つに決まるかどうかを先に数えてから書きましょう。
貸借を左右逆に転記する借方科目を元帳の貸方へ、貸方科目を借方へ書いてしまうミスです。T字勘定の左右を意識せず、仕訳の見た目のまま書き写すと起こります。「借方は左、貸方は右」と声に出しながら転記しましょう。

ミニ演習(4問・即時採点)

Q1. 仕訳の貸方に書かれた科目は、元帳のどちら側へ転記しますか?(答えを見る)

貸方です。借方科目は借方へ、貸方科目は貸方へ、そのまま同じ側に転記します。

Q2. (借)備品100,000/(貸)未払金100,000 を備品勘定へ転記するとき、相手科目欄に書く科目は?(答えを見る)

未払金です。相手科目は「今記入している勘定ではない、もう一方の科目」を書きます。

Q3. (借)現金40,000・売掛金60,000/(貸)売上100,000 を売上勘定へ転記するとき、相手科目欄に書く内容は?(答えを見る)

諸口です。借方側が現金・売掛金の2科目に分かれるため、売上勘定では相手科目をまとめて「諸口」と書きます。

Q4. 買掛金勘定:借方40,000(支払)、貸方100,000(仕入)。残高はどちら側でいくらですか?(答えを見る)

貸方残60,000です。貸方合計100,000から借方合計40,000を引くと60,000。買掛金は負債なので通常貸方残になります。

転記は「借方は借方へ、貸方は貸方へ」を機械的に守るだけの作業です。相手科目は1つならその科目名、2つ以上なら諸口。最後にT字勘定の合計と残高を確認しましょう。

対応する演習