貸倒引当金
売掛金などが「将来、回収できないかもしれない」リスクに備えて、期末に見積計上する評価勘定です。関連:売掛金/貸倒損失/試算表
この論点は日商簿記3級でよく出題されます。「期末に見積」「貸方残」「回収不能は引当金→不足分は貸倒損失」の順番を押さえましょう。
結論(何のための勘定?)
- 貸倒引当金は、売掛金などを差し引き表示するための勘定です(評価勘定)。
- 将来の貸倒れを見積もって期末に計上し、損益をならします。
- 実際に回収不能が確定したら、まず引当金を取り崩し、不足分だけを貸倒損失にします。
判断のコツ
- 貸倒引当金を使うのは、基本的に期末の決算整理(見積)と、回収不能の確定(取り崩し)です。
- 期末は「必要な引当金残高」を計算し、現在の残高(貸方残)と比較して差額だけを仕訳します。
- 増やすときは「貸倒引当金繰入(費用)」を使い、減らすときは「貸倒引当金戻入(収益)」で調整します。
- 貸倒が起きたら、引当金の範囲内は引当金で処理し、足りない分だけ貸倒損失です。
クイックリファレンス
| 分類 | 評価勘定(売掛金などのマイナス表示) |
|---|---|
| 残高 | 原則、貸方残 |
| 表示 | 貸借対照表で「売掛金 − 貸倒引当金」のように差し引き表示 |
| 関連 | 売掛金、貸倒損失 |
「評価勘定=元の資産を“差し引く”ための勘定」です。ここを言えると混乱が減ります。
代表仕訳(決算整理と貸倒処理)
| 日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算日 | 設定(増)貸倒引当金繰入 | 30,000 | 貸倒引当金 | 30,000 |
| 決算日 | 調整(減)貸倒引当金 | 5,000 | 貸倒引当金戻入 | 5,000 |
| 6/10 | 貸倒(確定)貸倒引当金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
表の見方:期末は「必要額に合わせて調整」、貸倒が確定したら「引当金で取り崩し」です。引当金が足りないときは、不足分だけを貸倒損失にします。
よくあるミス
- 引当金を「資産」だと思って借方残にしてしまう(引当金は原則、貸方残です)。
- 貸倒が確定したのに、引当金を使わず最初から貸倒損失で処理してしまう。
- 期末の調整で「必要額」ではなく「売掛金残高」そのものを計上してしまう。
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ミニ演習(貸倒引当金)
1) 必要な引当金が30,000円で、現在の貸倒引当金残高が20,000円(貸方残)でした。決算整理仕訳は?
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不足10,000円を追加します。(借)貸倒引当金繰入 10,000 /(貸)貸倒引当金 10,000。2) 必要な引当金が30,000円で、現在の残高が35,000円(貸方残)でした。決算整理仕訳は?
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過大5,000円を減らします。(借)貸倒引当金 5,000 /(貸)貸倒引当金戻入 5,000。3) 売掛金20,000円が回収不能で確定し、引当金残高は十分あります。仕訳は?