T字勘定と転記

仕訳を勘定ごとに書き写す転記のルールと、T字勘定を使って残高を読み取る方法を、例題とミニ演習で身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:仕訳を勘定ごとに書き写す

前の単元「伝票と証ひょう」までは、1つの取引をどう仕訳にするかを練習してきました。しかし、仕訳帳に取引を書いただけでは、「現金がいまいくら残っているか」「買掛金があといくら残っているか」のような、科目ごとの状況はまだ分かりません。仕訳を勘定科目ごとに書き写す作業を転記といい、書き写す先を元帳といいます。

仕訳から試算表までの3つの場所
仕訳帳元帳(T字勘定)合計残高試算表
取引を日付順に記録科目ごとに借方・貸方を集計全部の科目を1枚で確認
前の単元までで練習済みこの単元で練習次の単元で練習

図の見方:仕訳帳に書いた1行を、関係する科目の数だけT字勘定に書き写すのが転記です。全部の科目を転記し終えたら、次の単元で試算表にまとめます。

転記のルール

転記のルールはとてもシンプルです。仕訳の借方科目は元帳の借方へ、貸方科目は元帳の貸方へ、そのまま同じ側に書き写します。左右を入れ替えないことが大原則です。転記のときは、日付・相手科目・金額の3つを書きます。相手科目とは「仕訳のもう一方の科目名」のことで、今書いている勘定そのものの名前は相手科目欄には入りません。

確認:転記のあとに「相手科目は今の勘定と違う名前になっているか」を声に出して確認すると、取り違えを防げます。

T字勘定の読み方と残高

元帳は、勘定科目ごとにアルファベットのT字勘定に見立てて書くと分かりやすくなります。左側が借方、右側が貸方です。借方合計と貸方合計を求め、その差額が「残高」です。差額は、金額が大きい方の側に残ります。資産費用は通常借方に残高が出て、負債純資産収益は通常貸方に残高が出ます。これは、単元「簿記の基本と5要素」で確認した仲間分けと同じ向きです。

図の見方:貸方合計55,000から借方合計15,000を引くと40,000。大きい方の側(貸方)に残高が残るので、買掛金は貸方残40,000です。買掛金は負債なので、通常は貸方残になります。

諸口の使い方

1つの仕訳で、借方または貸方に2つ以上の科目が並ぶことがあります(複合仕訳)。この場合、相手科目が1つに決まらない側の勘定では、個別の科目名の代わりに「諸口」(しょくち)と書きます。

確認:迷ったら「この行の反対側は、科目が1つか、2つ以上か」を先に数えます。1つならその科目名、2つ以上なら諸口です。

例題で型をつかむ

例題1(現金売上の転記実況)

次の仕訳を、現金勘定と売上勘定へ転記しなさい。(借)現金 20,000/(貸)売上 20,000

  1. 借方科目を確認する:借方は「現金」20,000です。
  2. 現金勘定の借方へ書く:相手科目「売上」、金額20,000を現金勘定の借方(左側)に記入します。
  3. 貸方科目を確認する:貸方は「売上」20,000です。
  4. 売上勘定の貸方へ書く:相手科目「現金」、金額20,000を売上勘定の貸方(右側)に記入します。

ここで迷ったら:転記する側は仕訳の借方・貸方とそろえます。相手科目は「今書いている勘定ではない、もう一方の科目名」です。

例題2(諸口を使う転記実況)

次の仕訳を、現金・売掛金・売上の各勘定へ転記しなさい。(借)現金 10,000・売掛金 50,000/(貸)売上 60,000

  1. 借方科目「現金」を転記する:現金勘定の借方へ、相手科目「売上」、金額10,000を記入します。
  2. 借方科目「売掛金」を転記する:売掛金勘定の借方へ、相手科目「売上」、金額50,000を記入します。
  3. 貸方科目「売上」を転記する:借方側は現金・売掛金の2科目に分かれているため、相手科目は1つに決まりません。
  4. 諸口を使う:売上勘定の貸方へ、相手科目「諸口」、金額60,000(10,000+50,000)を記入します。

ここで迷ったら:相手科目が2つ以上に分かれるときは「諸口」。1つに決まるときは相手科目名をそのまま書きます。現金・売掛金それぞれの側は相手が「売上」1つなので、諸口にはしません。

よくあるミス

相手科目を自分の科目と取り違える相手科目欄に、今転記している勘定そのものの名前を書いてしまうミスです。仕訳の借方・貸方の両方を見てしまうと起こります。「今書いている勘定ではない、もう一方の科目」を必ず確認してから書きましょう。
諸口にすべきところを科目名にしてしまう相手科目が2つ以上に分かれるのに、片方の科目名だけを書いてしまうミスです。複合仕訳の一部だけを見て転記すると起こります。相手科目が1つに決まるかどうかを、書く前に必ず数えましょう。
貸借を左右逆に転記する借方科目を元帳の貸方へ、貸方科目を借方へ書いてしまうミスです。T字勘定の左右を意識せず、仕訳の見た目のまま書き写すと起こります。「借方は左、貸方は右」と声に出しながら転記しましょう。

ミニ演習(4問・即時採点)

Q1. 仕訳の借方に書かれた科目は、元帳のどちら側へ転記しますか?(答えを見る)

借方です。借方科目は借方へ、貸方科目は貸方へ、そのまま同じ側に転記します。

Q2. (借)備品50,000/(貸)未払金50,000 を備品勘定へ転記するとき、相手科目欄に書く科目は?(答えを見る)

未払金です。相手科目は「今記入している勘定ではない、もう一方の科目」を書きます。

Q3. (借)現金10,000・売掛金50,000/(貸)売上60,000 を売上勘定へ転記するとき、相手科目欄に書く内容は?(答えを見る)

諸口です。借方側が現金・売掛金の2科目に分かれるため、売上勘定では相手科目をまとめて「諸口」と書きます。

Q4. 買掛金勘定:借方15,000(支払)、貸方55,000(仕入)。残高はどちら側でいくらですか?(答えを見る)

貸方残40,000です。貸方合計55,000から借方合計15,000を引くと40,000。買掛金は負債なので通常貸方残になります。

転記は「借方は借方へ、貸方は貸方へ」を機械的に守るだけの作業です。相手科目は1つならその科目名、2つ以上なら諸口。最後にT字勘定の合計と残高を確認しましょう。

3級では、複数の補助簿を使い分けながら総勘定元帳へ転記する方法を学びます。3級の「転記とT字勘定」で確認できます。

対応する演習