在庫の評価(移動平均・先入先出・棚卸減耗・評価損)

同じ商品でも、仕入れた時期によって単価は変わります。そこで、払い出した分の原価と月末に残る在庫の金額を、決めた方法で計算します。商品有高帳を使う移動平均法・先入先出法から、決算で計上する棚卸減耗損・商品評価損までを順に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:単価を1本に決めてから払い出す

1個300円で仕入れた商品と、1個360円で仕入れた商品が倉庫に混ざると、「今売れた150個はいくらで払い出すのか」がすぐには決まりません。そこで、払出単価をどう決めるかのルール(移動平均法(在庫単価)先入先出法)を先に決め、その単価で払出原価と月末在庫を計算します。単価と数量の動きを1枚に記録するのが商品有高帳です。

商品有高帳(移動平均法・受入と払出のたびに残高単価を更新)
日付摘要受入数量受入金額払出数量払出金額残高数量残高単価残高金額
6/1前月繰越10030,00010030030,000
6/10仕入20072,000300340102,000
6/20売上(払出)15051,00015034051,000

図の見方:受入のたびに残高単価を計算し直すのが移動平均法です。6/10の受入後、残高単価は(30,000+72,000)÷300=340円になり、6/20の払出150個はこの340円で計算します。

商品有高帳と移動平均法

移動平均法は、仕入(受入)のたびに平均単価を計算し直す方法です。平均単価は次の式で求めます。

平均単価 =(直前の残高金額 + 受入金額)÷(直前の残高数量 + 受入数量)

月初100個@300円(30,000円)に、6/10の仕入200個@360円(72,000円)が加わると、残高は300個・102,000円になり、平均単価は102,000÷300=340円です。6/20に150個を払い出すと、払出原価は150×340=51,000円、月末在庫は150個×340=51,000円になります。単純に300円と360円を足して2で割る(330円)のではなく、金額と数量の合計から求める点に注意します。

確認:移動平均法は「受入のたびに単価をならす」方法。払出も月末在庫も、そのときの残高単価を使います。

先入先出法

先入先出法(FIFO)は、「先に仕入れたものから先に払い出す」と考える方法です。単価をならさず、古い層から順に払い出します。同じ与件(月初100個@300円、6/10仕入200個@360円)で150個を払い出すと、まず月初の100個@300円(30,000円)を払い出し、足りない50個は6/10仕入分@360円(18,000円)から払い出すので、払出原価は30,000+18,000=48,000円です。月末在庫は残った150個=すべて6/10仕入分@360円なので、150×360=54,000円になります。

移動平均法と先入先出法の比較(150個払出・月初100個@300/6/10仕入200個@360)
項目移動平均法先入先出法
払出原価(150個)51,000(@340)48,000(100個@300+50個@360)
月末在庫(150個)51,000(@340)54,000(@360)
払出+月末102,000102,000

どちらの方法でも「払出原価+月末在庫=仕入れた総額(30,000+72,000=102,000円)」は変わりません。方法によって、その102,000円を払出と月末にどう振り分けるかが違うだけです。物価が上がっているとき、先入先出法は古い(安い)単価が先に費用になるので、月末在庫は新しい(高い)単価で大きめに残ります。

確認:先入先出法は古い層から払い出す。月末在庫には新しい単価が残る、と向きをそろえて覚えます。

棚卸減耗損と商品評価損

決算では、帳簿上の在庫と、実際に数えた在庫(実地棚卸)を突き合わせます。ここで2種類の損失が出ることがあります。棚卸減耗損は、紛失・破損などで数量が帳簿より減っている分の損失で、原価で評価します。商品評価損は、時価(正味売却価額)が原価より下がったときに、単価の下落分だけ帳簿価額を切り下げる損失です。

棚卸減耗損 =(帳簿数量 − 実地数量)× 原価商品評価損 = 実地数量 ×(原価 − 正味売却価額)。数量の差か単価の差かで、掛ける相手が変わります。帳簿150個@340円・実地145個・正味売却価額@320円なら、棚卸減耗損=(150−145)×340=1,700円、商品評価損=145×(340−320)=2,900円です。仕訳では、どちらも繰越商品を減らします。

棚卸減耗損・商品評価損の仕訳(帳簿150個@340・実地145個・正味売却価額@320)
損失借方科目借方金額貸方科目貸方金額
棚卸減耗損(数量差)棚卸減耗損1,700繰越商品1,700
商品評価損(単価差)商品評価損2,900繰越商品2,900

確認:減耗は「横(数量)」、評価損は「縦(単価)」。先に数量の差(減耗)を実地数量まで減らし、そのうえで単価の差(評価損)を実地数量に掛けます。

ユイ棚卸減耗損と商品評価損、どちらも同じ在庫の話なのに、掛ける数量が違うのが混乱します。

サクラ先生順番で考えると整理できます。まず数量のズレ(減耗)を帳簿数量から実地数量まで減らし、そのあと残った実地数量に単価の下落(評価損)を掛けます。

ユイだから評価損は帳簿の150個ではなく、実地の145個に掛けるのですね。

サクラ先生そのとおりです。もう手元にない5個分に評価損を計上しても意味がないので、実地数量に掛けます。「減耗が先、評価損が後」と順序で覚えましょう。

例題で型をつかむ

例題1(移動平均法と先入先出法の比較)

A商品について、6月1日の前月繰越は100個@300円、6月10日の仕入は200個@360円であった。6月20日に150個を払い出したとき、(1)移動平均法と(2)先入先出法それぞれの払出原価と月末在庫の金額を求めなさい。

  1. 受入をそろえる:受入合計は100個@300=30,000円と200個@360=72,000円で、合わせて300個・102,000円です。
  2. 移動平均法:平均単価=102,000÷300=340円。払出150×340=51,000円、月末150×340=51,000円です。
  3. 先入先出法:払出は古い層から、100個@300+50個@360=30,000+18,000=48,000円。月末は残り150個@360=54,000円です。
  4. 照合する:どちらも「払出+月末=102,000円」で一致します。
例題1の答え
項目移動平均法先入先出法
払出原価(150個)51,00048,000
月末在庫(150個)51,00054,000

ここで迷ったら:先入先出法で払出150個を全部360円で計算しないこと。古い100個@300円を先に払い出し、残りの50個だけ360円です。移動平均法は330円(単純平均)ではなく340円(加重平均)です。

例題2(棚卸減耗損と商品評価損)

決算日のA商品は、帳簿棚卸数量150個・原価@340円である。実地棚卸をしたところ実地数量は145個、正味売却価額は@320円であった。棚卸減耗損と商品評価損を計算し、仕訳を示しなさい。

  1. 取引を読む:数量は150個から145個へ5個減り、単価は原価340円から正味売却価額320円へ20円下がっています。
  2. 棚卸減耗損(数量差):(帳簿150−実地145)×原価340=5×340=1,700円です。
  3. 商品評価損(単価差):実地145×(原価340−正味売却価額320)=145×20=2,900円です。
  4. 4列に並べる:どちらも繰越商品を減らします。(借)棚卸減耗損 1,700/(貸)繰越商品 1,700、(借)商品評価損 2,900/(貸)繰越商品 2,900。

ここで迷ったら:評価損を帳簿150個に掛けないこと。数量の差(減耗)を先に落とし、残った実地145個に単価の下落を掛けます。減耗は原価で、評価損は正味売却価額との差で計算します。

よくあるミス

移動平均で仕入のたびに単価を更新し忘れる前の残高単価のまま払い出してしまうミスです。移動平均法は受入のたびに「(直前残高金額+受入金額)÷(直前残高数量+受入数量)」で単価を作り直します。仕入があったら必ず平均単価を計算し直す、と手順を固定しましょう。
先入先出で古い層から払い出さない新しい単価でまとめて計算してしまうミスです。先入先出法は「先に入ったものから先に出す」ので、払出はいちばん古い層から順に埋めます。月末在庫には新しい単価が残る、と結果の向きで確かめられます。
棚卸減耗損と商品評価損を取り違える掛ける相手を間違えるミスです。減耗は数量の差(帳簿−実地)×原価、評価損は単価の差(原価−正味売却価額)×実地数量です。「減耗が先、評価損が後」で順に処理し、評価損は実地数量に掛けると覚えます。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 月初100個@300円、当月仕入200個@360円のとき、移動平均法の平均単価はいくらですか?(答えを見る)

340円です。平均単価=(30,000+72,000)÷(100+200)=340円。単価を単純に平均して330円としないよう、金額と数量の合計で割ります。

Q2. 月初100個@300円・当月仕入200個@360円の在庫から、先入先出法で150個払い出したとき、払出原価はいくらですか?(答えを見る)

48,000円です。古い層から、100個×300+50個×360=30,000+18,000=48,000円。51,000円は移動平均法の払出額、54,000円は先入先出法の月末在庫です。

Q3. 帳簿150個・実地145個・原価@340円のとき、棚卸減耗損はいくらですか?(答えを見る)

1,700円です。棚卸減耗損=(帳簿150−実地145)×原価340=1,700円。数量の減りを原価で評価します。2,900円は商品評価損(単価差)です。

Q4. 実地145個・原価@340円・正味売却価額@320円のとき、商品評価損はいくらですか?(答えを見る)

2,900円です。商品評価損=実地145×(原価340−正味売却価額320)=2,900円。単価の下落分を実地数量に掛けます。1,700円は棚卸減耗損(数量差)です。

Q5. 棚卸減耗損と商品評価損の違いとして正しいものはどれですか?(答えを見る)

棚卸減耗損は数量の差、商品評価損は単価(正味売却価額の下落)の差です。減耗は横(数量)、評価損は縦(単価)と覚えると、掛ける相手を取り違えません。

在庫の評価では、移動平均法(受入のたびに加重平均単価を作る)と先入先出法(古い層から払い出す)で払出原価と月末在庫を計算します。どちらでも「払出+月末=仕入総額」は一致します。決算では、棚卸減耗損(数量の差×原価)と商品評価損(単価の差×実地数量)を区別して繰越商品を切り下げます。次の単元では、いつ・いくらの売上を計上するかを決める収益認識を学びます。

対応する演習