税効果会計(引当金・減価償却・その他有価証券の一時差異)
会計のルールと税務(法人税)のルールは、費用や収益を認めるタイミングが少しずれることがあります。このズレをそのままにすると、損益計算書の税引前当期純利益と法人税等の金額がうまく対応しません。税効果会計は、繰延税金資産・繰延税金負債という科目でこのズレを橋渡しし、税金費用を会計上の利益に合わせる手続きです。引当金・減価償却・その他有価証券の3つの場面を軸に、順を追って身につけていきましょう。
この単元で身につくこと
- 一時差異(将来解消するズレ)と永久差異(解消しないズレ)を区別できます。
- 将来減算一時差異から繰延税金資産を認識し、法人税等調整額で調整できます。
- その他有価証券の評価差額金に税効果を適用できます。
まずイメージ:税金の「期ずれ」を橋渡しする
法人税等は、会計上の利益ではなく税務上の課税所得に税率をかけて計算します。ところが、会計で今期の費用にした金額が、税務では今期の損金として認められないことがあります。すると、その期は税金を多めに払うことになり、税引前当期純利益に対して法人税等が重く見えてしまいます。税効果会計は、このズレが将来解消することに注目し、多めに払った税金を繰延税金資産(税金の前払い)として資産に立て、利益と税金費用を対応させます。
図の見方:①差異が発生した年度は、会計が先に費用にする一方で税務が損金と認めないため税金が増え、その分を繰延税金資産に計上します。②税務でも損金と認められる年度にこの資産を取り崩し、両年度をならすと税金費用が会計上の利益に対応します。
税効果会計の目的と一時差異
会計と税務のズレには2種類あります。一時差異は、いまはズレていても将来必ず解消するズレです。たとえば貸倒引当金の繰入超過や減価償却の償却超過は、税務が認めるタイミングが遅れているだけで、いずれ損金に算入されて差異が消えます。これに対し永久差異は、交際費の損金不算入や受取配当金の益金不算入のように、将来も解消しないズレです。税効果会計の対象になるのは一時差異だけで、永久差異には税効果を適用しません。
| 区分 | 代表例 | 税効果 |
|---|---|---|
| 一時差異 | 貸倒引当金の繰入超過、減価償却の償却超過、その他有価証券の評価差額 | あり(繰延税金資産・繰延税金負債を計上) |
| 永久差異 | 交際費の損金不算入、受取配当金の益金不算入 | なし(適用しない) |
一時差異はさらに、解消するときに課税所得を減らす「将来減算一時差異」と、増やす「将来加算一時差異」に分かれます。将来減算一時差異は税金の前払いなので繰延税金資産を、将来加算一時差異は税金の後払いなので繰延税金負債を計上します。2級では、貸倒引当金・減価償却・その他有価証券の3つの場面を押さえれば十分です。
確認:将来解消するなら一時差異(税効果あり)、解消しないなら永久差異(税効果なし)。差異が解消時に課税所得を減らすなら繰延税金資産、増やすなら繰延税金負債です。
繰延税金資産(貸倒引当金・減価償却)
将来減算一時差異の代表が、貸倒引当金の繰入超過と減価償却の償却超過です。どちらも、会計では今期の費用にしたのに、税務では今期の損金として認められない(限度額を超えた)分が生じます。この超過額に法定実効税率をかけた金額を繰延税金資産として計上し、相手科目は法人税等調整額とします。
たとえば法定実効税率を30%とし、貸倒引当金の繰入のうち40,000円が損金不算入になったとします。繰延税金資産は40,000×30%=12,000円で、仕訳は(借)繰延税金資産 12,000/(貸)法人税等調整額 12,000です。法人税等調整額は、貸方に立つと法人税等を減らす(税引後の利益を増やす)調整で、損益計算書では法人税等のすぐ下に表示します。差異が解消した年度には、逆の仕訳(借)法人税等調整額/(貸)繰延税金資産で取り崩します。
確認:将来減算一時差異は「税金の前払い」。超過額×税率を繰延税金資産に計上し、相手は法人税等調整額。解消時に反対仕訳で戻します。
その他有価証券評価差額金の税効果
その他有価証券は期末に時価で評価しますが、その評価差額は損益計算書を通さず、その他有価証券評価差額金として純資産に直接計上します(全部純資産直入法)。この評価差額にも税効果を適用しますが、ここが大事な分かれ目です。評価差額そのものがP/Lを通さないので、税効果の相手科目も法人税等調整額ではなく、その他有価証券評価差額金で調整します。
取得原価100,000円のその他有価証券が期末に時価120,000円になったとします。評価差益は20,000円。将来この含み益が実現すると課税所得が増える(将来加算)ので、繰延税金負債=20,000×30%=6,000円を計上し、純資産に載せる評価差額金は税効果を差し引いた20,000−6,000=14,000円になります。仕訳は(借)その他有価証券 20,000/(貸)繰延税金負債 6,000・その他有価証券評価差額金 14,000です。評価差損のときは借方・貸方が逆になり、繰延税金資産が立ちます。なお、持分法や連結上の税効果は簿記1級の範囲です。
確認:その他有価証券の税効果は法人税等調整額を使いません。評価差益なら繰延税金負債、差額金は税効果控除後の純額(20,000−6,000=14,000)。P/Lを通さない点が引当金・減価償却との違いです。
ユイ繰延税金資産と繰延税金負債は、どちらを立てるか迷ってしまいます。
サクラ先生差異が解消する年度に、課税所得が減るか増えるかで決めます。今期に税金を多めに払う将来減算なら「前払い」で資産、逆に今期は少なく将来増える将来加算なら「後払い」で負債です。
ユイ貸倒引当金の繰入超過は将来減算だから、繰延税金資産ですね。
サクラ先生そのとおりです。「前払いか後払いか」で資産・負債を見分けます。
例題で型をつかむ
決算にあたり貸倒引当金を繰り入れたが、そのうち40,000円は税務上の損金として認められなかった(損金不算入)。法定実効税率は30%である。税効果会計の仕訳を示しなさい。
- 取引を読む:会計では費用にしたが、税務では今期の損金と認められない40,000円があります(将来減算一時差異)。
- 差異の性質を決める:将来、損金に認められて解消するので税効果あり。税金を前払いした形なので繰延税金資産です。
- 金額を計算する:繰延税金資産=損金不算入額40,000×法定実効税率30%=12,000円。
- 4列に並べる:(借)繰延税金資産 12,000/(貸)法人税等調整額 12,000。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 12,000 | 法人税等調整額 | 12,000 |
ここで迷ったら:一時差異の金額(40,000)ではなく、それに税率をかけた12,000を計上します。相手科目は損益項目である法人税等調整額です。
当期の減価償却費を会計上300,000円計上したが、税務上の償却限度額は250,000円であった。超過額は損金不算入となる。法定実効税率は30%である。税効果会計の仕訳を示しなさい。
- 取引を読む:会計償却300,000のうち、税務限度250,000を超える分が損金不算入です(将来減算一時差異)。
- 差異の性質を決める:将来、税務の償却が追いついて解消するので税効果あり。繰延税金資産です。
- 金額を計算する:超過額=300,000−250,000=50,000。繰延税金資産=50,000×30%=15,000円。
- 4列に並べる:(借)繰延税金資産 15,000/(貸)法人税等調整額 15,000。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 繰延税金資産 | 15,000 | 法人税等調整額 | 15,000 |
ここで迷ったら:会計上の償却額300,000全体ではなく、限度額を超えた50,000だけが一時差異です。これに税率をかけた15,000が繰延税金資産です。
決算にあたり、その他有価証券(取得原価100,000円)を期末の時価120,000円に評価替えする。全部純資産直入法により、税効果を適用する。法定実効税率は30%である。仕訳を示しなさい。
- 取引を読む:時価120,000−取得原価100,000=評価差益20,000。その他有価証券なので評価差額はP/Lを通しません。
- 税効果を決める:含み益は将来加算一時差異。繰延税金負債=20,000×30%=6,000円。
- 差額金を計算する:純資産に載せる評価差額金=評価差益20,000−繰延税金負債6,000=14,000円。
- 4列に並べる:(借)その他有価証券 20,000/(貸)繰延税金負債 6,000・その他有価証券評価差額金 14,000。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| その他有価証券 | 20,000 | 繰延税金負債 その他有価証券評価差額金 | 6,000 14,000 |
ここで迷ったら:相手科目に法人税等調整額を使わないこと。その他有価証券の評価差額はP/Lを通さないので、税効果も評価差額金の中で調整します。差額金は税引後の14,000です。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 税効果会計の対象になるのはどれですか?(答えを見る)
将来解消する一時差異です。交際費の損金不算入や受取配当金の益金不算入は永久差異で、将来も解消しないため対象外です。将来解消するかどうかで見分けます。
Q2. 貸倒引当金の繰入のうち40,000円が損金不算入となった。法定実効税率30%のとき、計上する繰延税金資産はいくらですか?(答えを見る)
12,000円です。一時差異40,000円×法定実効税率30%=12,000円。差異の金額そのものではなく、税率をかけた額を計上します。相手科目は法人税等調整額です。
Q3. 将来減算一時差異が生じたときに計上する科目と相手科目の組み合わせはどれですか?(答えを見る)
繰延税金資産と法人税等調整額です。将来減算は税金の前払いなので繰延税金資産を計上し、相手は損益項目の法人税等調整額です。将来加算なら繰延税金負債になります。
Q4. その他有価証券(取得原価100,000円)を期末時価120,000円に評価替えする。法定実効税率30%のとき、純資産に計上するその他有価証券評価差額金はいくらですか?(答えを見る)
14,000円です。評価差益20,000円から繰延税金負債20,000×30%=6,000円を差し引いた14,000円が評価差額金です。P/Lを通さないので税効果も評価差額金の中で調整します。
Q5. 減価償却について、会計上の償却費300,000円、税務上の償却限度額250,000円のとき、一時差異となる金額はいくらですか?(答えを見る)
50,000円です。限度額を超えた300,000−250,000=50,000円が一時差異です。会計上の償却額全体ではありません。これに税率をかけた15,000円が繰延税金資産になります。
税効果会計は、会計と税務の一時差異だけを対象に、税金費用を会計上の利益へ対応させます。貸倒引当金や減価償却の将来減算一時差異は、超過額×税率を繰延税金資産に計上し、相手科目は法人税等調整額です。その他有価証券の評価差額は損益を通さないため、税効果も評価差額金の中で調整する点が違います。次の単元では、株式会社会計を学びます。