補助部門費の配賦法(直接法・階梯法・相互法)

一次配賦→補助部門費の配賦→製造間接費へ、の順でプロセスをつないでいきます。

このページの使い方

本文骨子

はじめに

部門配賦は、工場の費用を流れとして理解すると腑に落ちます。まず費目(電力費・保全費など)を各部門の器へ集め、その後、補助部門の費用を製造部門へ流していく――この二段構えです。

理解の道筋

最初の段階(一次配賦)では、集計の起点を整えるだけ。次の段階(補助配賦)で方法が分かれます。直接法は補助→製造だけに注目、階梯法は配る順番を決めて一方向に流し、相互法は補助どうしのやり取りも反映して平衡点を求めます。

手を動かす視点

配る基準は因果関係が強いもの(修理時間・kWh など)を選び、合計が崩れないよう計算の手順を守ります。求めたい精度と手間のバランスで手法を選ぶのが実務の勘所です。

まとめ(要点)

手法の比較(早見)

手法 補助同士の扱い 計算手間 精度 試験での扱い
直接法 無視(補助→製造のみ) 低〜中 頻出・計算が速い
階梯法 片方向(決めた順に流す) 配賦順序の指示に注意
相互法 双方向(連立/反復で平衡) 指示通りに設定・計算

ミニ例

直接法:補助A12,000・補助B6,000、使用比率 A→X:Y=6:4、B→X:Y=3:7。A配賦:X7,200/Y4,800、B配賦:X1,800/Y4,200 → X合計9,000/Y合計9,000(製造間接費に加算)。

解説(直接法の計算手順)
  1. 対象の確認:直接法は補助→製造部門だけを見ます(補助同士は無視)。
  2. 補助Aの配賦:総額12,000を比率6:4でX:Yへ。X=12,000×6/10=7,200、Y=12,000×4/10=4,800
  3. 補助Bの配賦:総額6,000を比率3:7でX:Yへ。X=6,000×3/10=1,800、Y=6,000×7/10=4,200
  4. 製造部門集計:X=7,200+1,800=9,000、Y=4,800+4,200=9,000。それぞれの製造間接費に加算します。

因果関係のある配賦基準(修理時間・kWh など)を使い、合計金額が一致しているかを最後に確認します。

完全版(数値つき・直接法)
部門 金額 使用比率(→X:Y)
補助A12,0006:4
補助B6,0003:7
配賦元XY
補助A7,2004,80012,000
補助B1,8004,2006,000
合計(X/Y)9,0009,00018,000

メモリヒント:直接法は補助→製造のみ。合計金額の保存を最後に確認します。

1分で型

この章のゴール

  • 部門別集計表の読み・書きができる
  • 直接法/相互(反復)法の計算手順を説明できる
  • 配賦基準の選択理由を述べられる

学ぶ順番

  1. 一次配賦(製造・補助部門へ)
  2. 補助部門費の配賦(直接/相互・反復)
  3. 製造部門の製造間接費へ集約

取り違え注意

そのまま手を動かす5問

  1. 一次配賦と補助配賦の違いを一言で。
  2. 直接法のメリット/デメリットを一言で。
  3. 階梯法の配賦順序は何で決める?
  4. 相互法は何で解く?(ヒント:連…)
  5. 動力部門の基準に面積は適切?(Yes/No:理由)

参考解答(折りたたみ)

1) 一次配賦と補助配賦の違い

一次配賦=費目→各部門補助配賦=補助→製造部門(補助同士の扱いは手法で異なる)。

2) 直接法のメリット/デメリット

メリット:計算が簡単・迅速。デメリット:補助同士のやり取りを無視→精度が落ちる。

3) 階梯法の配賦順序は何で決める?

一般にサービス提供量(例:修理時間, kWh)の大きい順や、問題の指示に従います。順序が結果に影響する点に注意。

4) 相互法は何で解く?

連立方程式(厳密)または反復計算(近似)。補助間の双方向のやり取りを反映します。

5) 動力部門の基準に面積は適切?(Yes/No)

No。因果関係が弱いからです。動力ならkWh・電力使用量など、測定可能で再現性のある基準を使います。

やさしい読み替え

図解:補助部門→製造部門への配賦

補助部門A・Bから製造部門X・Yへの配賦図(直接/段階/相互)
因果関係のある配賦基準(時間・kWh など)で流す。

完全版:階梯法(数値つき)

配賦順序を決め、先に配った補助費を後続に乗せてから配ります。

与件と配賦手順

与件:補助A12,000(B 20%・X 50%・Y 30%)、補助B6,000(X 30%・Y 70%)。
順序:A→B(サービス提供量の大きいAを先に配る想定)。

  1. A配賦:B2,400、X6,000、Y3,600。Bの原価は8,400に増加。
  2. B配賦(Aへは戻さない):X8,400×0.3=2,520、Y8,400×0.7=5,880
  3. 結果:X6,000+2,520=8,520、Y3,600+5,880=9,480(合計18,000で保存)。

メモリヒント:順序は指示またはサービス量の多い補助から。先配賦の補助費は後段に乗る点が直接法との違いです。

完全版:相互法(数値つき・連立)

補助同士のやり取りを連立方程式で厳密に反映します。

与件と解法

与件:補助A初期12,000、配分先(B 10%・X 50%・Y 40%)/補助B初期6,000、配分先(A 20%・X 30%・Y 50%)。

  1. 連立設定:A=12,000+0.2B、B=6,000+0.1A。
  2. :A=13,469.39、B=7,346.94(四捨五入)。
  3. 最終配賦
    • A→X:0.5×A=6,734.69、A→Y:0.4×A=5,387.76
    • B→X:0.3×B=2,204.08、B→Y:0.5×B=3,673.47
    X合計8,938.77、Y合計9,061.23(合計18,000)。

メモリヒント:相互法は補助→補助も含むため、総額(A,B)を未知数にして解きます。丸めは最終で調整します。

対話でつかむ:補助部門配賦の流れ

講師/学習者の会話で、一次配賦→補助部門配賦→製造部門集約の全体像を短く押さえます。

学習者:まず一次配賦とは?

講師:費目別の発生額を、各部門に最初に割り付ける段階です。電力費ならメーター読みに基づいて動力・組立・保全部門へ。

学習者:次が補助部門配賦(サービス→製造)ですね。

講師:はい。方法は直接法階梯法(相互/反復を近似)・相互配賦法(連立)など。試験では指示された方法に従います。

学習者:直接法は簡単だけど、補助同士のやり取りは無視する、と。

講師:そのとおり。階梯法は配賦順序を決めて、先に配った補助費が後続の製造部門へ乗っていく点に注意です。

学習者:基準の選び方は?

講師:因果関係を優先。保全部門なら修理時間、動力部門ならkWhなど。測定可能で再現性があることも条件です。

学習者:最後は製造部門に集約された額が製造間接費になる、と。

講師:はい。そこからは予定配賦ページの流れ(配賦率→配賦額→差異)へ接続します。

具体的な会議シーンは「第4話:補助部門配賦」で確認できます。

関連リンク