部門別原価計算(直接配賦法・相互配賦法)

工場の製造間接費を部門ごとに集計し、補助部門の費用を直接配賦法・相互配賦法(簡便法)で製造部門へ配るまでの流れを固めていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:部門ごとに集めてから配ると原価が正確になる

工場には、切削や組立のように製品を直接加工する製造部門と、動力・修繕・工場事務のように製造部門を支える補助部門があります。部門別原価計算は、「保全部門や動力部門にかかった費用を、製造部門XとYへどう配るのが妥当か」という現場の問いに答えるしくみです。工場全体で1本の配賦率を使うと、機械を多く使う製品も手作業中心の製品も同じ率で配賦されてしまいます。部門ごとに製造間接費を集計してから配れば、部門の作業の性質に合った率を使えるので、製品原価がより正確になります。

直接配賦法と相互配賦法(簡便法)の流れの違い 直接配賦法は補助部門AとBの費用を製造部門XとYへだけ配ります。相互配賦法(簡便法)は、第1次で補助部門どうしにも配り、第2次で受け入れた分を製造部門だけへ配ります。 直接配賦法:補助部門どうしは無視して、製造部門へだけ配る 補助部門A 補助部門B 製造部門X 製造部門Y 1回の配賦で終了(補助部門どうしの矢印はなし) 相互配賦法(簡便法):第1次は全部門へ、第2次は製造部門だけへ 第1次:割合どおり全部門へ 補助部門A 補助部門B 製造部門X 製造部門Y 第2次:受入分を製造部門だけへ Aの受入分 Bの受入分 製造部門X 製造部門Y 第2次を終えると、補助部門の費用はすべて製造部門X・Yに集まります

図の見方:どちらの方法でも、最後は補助部門の費用がすべて製造部門X・Yに集まります。違いは「補助部門どうしのやり取りを計算に入れるかどうか」だけです。

部門別計算の目的と第1次集計

部門別原価計算は2つの目的で行います。1つは配賦の精度を高めることです。部門別の配賦率を使えば、機械中心の部門は機械運転時間、手作業中心の部門は直接作業時間と、部門の実態に合った基準で製品へ配賦できます。もう1つは、部門ごとに費用を集計して責任の所在を明らかにし、原価の管理に役立てることです。

手順の最初は第1次集計(一次配賦)です。どの部門で発生したかが直接分かる部門個別費はその部門へ賦課し、複数の部門にまたがって発生する部門共通費(工場建物の減価償却費や電力料など)は、占有面積や電力消費量といった配賦基準で各部門へ配賦します。この段階で、製造部門にも補助部門にも金額が集まります。

次が第2次集計(補助部門費の配賦)です。補助部門に集まった費用を製造部門へ移します。2級で出題される方法は直接配賦法相互配賦法(簡便法)の2つです。どちらでも配賦基準は因果関係で選びます。動力部門費なら電力消費量、修繕部門費なら修繕時間のように、費用が増える原因と結び付いた基準を使います。

確認:一次=費目を各部門へ(個別費は賦課・共通費は配賦)、二次=補助部門費を製造部門へ。いま部門費配賦表のどの段階を埋めているのかを常に意識しましょう。

直接配賦法——補助部門どうしは無視して1回で配る

直接配賦法は、補助部門どうしのサービスのやり取りを無視して、補助部門費を製造部門だけへ配る方法です。たとえば補助部門Aの費用12,000円を、製造部門X・Yへの提供割合6:4で配るなら、Xへ12,000円×6/10=7,200円、Yへ12,000円×4/10=4,800円です。1回の配賦で終わるので計算が速く、試験でも頻出です。

配賦のあとは必ず検算します。配賦は費用を配り直すだけなので、配賦後の合計=配賦前の補助部門費合計が成り立ちます。合計が合わなければ、比率の分母か掛け算のどこかにミスがあります。

補助部門が実際にはお互いにサービスを提供し合っていても、直接配賦法では計算に入れません。この割り切りが「計算は速いが精度は粗い」という直接配賦法の性格を作っています。問題文に補助部門間の提供割合が書かれていても、指定された方法が直接配賦法なら、それは使わない資料です。

確認:直接配賦法=補助部門から製造部門へのみ・1回で終了。「使わない資料が混ざっている」ことを前提に、まず方法名を確認しましょう。

相互配賦法(簡便法)——第1次は全部門へ、第2次は製造部門だけへ

補助部門どうしのやり取りをある程度反映したいときに使うのが相互配賦法です。2級で出題されるのは、第1次・第2次の2回の配賦で締める簡便法です。

手順は2段階です。第1次配賦では、各補助部門の費用を、製造部門にも他の補助部門にも、サービス提供割合どおりに配ります。第2次配賦では、第1次で他の補助部門から受け入れた金額を、今度は製造部門だけへ配ります。このとき補助部門への割合は使わず、製造部門への割合だけを取り出して比率を作り直します(たとえばX 50%・Y 30%なら、5:3に読み替えます)。

第2次集計が終わると、製造間接費はすべて製造部門に集まります。あとは前の単元「製造間接費と予定配賦」と同じ流れで、部門ごとの予定配賦率(部門費予算÷部門の基準操業度)を計算し、製品(製造指図書)へ配賦します。

確認:第1次は割合どおり全部門へ、第2次は受入分を製造部門のみへ。2回で必ず締める、が簡便法の型です。

補助部門どうしの配賦を連立方程式で厳密に解く方法(純粋の相互配賦法)や、配賦順序を決めて一方向に流す方法(階梯式配賦法)は1級の範囲です。

ユイ相互配賦法って、連立方程式を解くんですか?

サクラ先生それは1級で学ぶ方法です。2級の相互配賦法は、第1次と第2次の2回の配賦で締める簡便法なので、方程式は使いません。

ユイ第2次で気をつけることはありますか?

サクラ先生受け入れた金額を製造部門だけへ配ることです。補助部門へ配り続けると、計算がいつまでも終わらなくなってしまいます。

例題で型をつかむ

例題1(直接配賦法の通し計算)

第1次集計の結果、補助部門Aの部門費は12,000円、補助部門Bの部門費は6,000円であった。製造部門X・Yへのサービス提供割合は、補助部門AがX 60%・Y 40%、補助部門BがX 30%・Y 70%である。直接配賦法により、製造部門X・Yへの配賦額を求めなさい。

  1. 方法を確認する:直接配賦法なので、補助部門どうしの提供は計算に入れず、製造部門への割合だけで配ります。
  2. 補助部門A費を配る:Xへ12,000円×60%=7,200円、Yへ12,000円×40%=4,800円です。
  3. 補助部門B費を配る:Xへ6,000円×30%=1,800円、Yへ6,000円×70%=4,200円です。
  4. 集計して検算する:Xは7,200+1,800=9,000円、Yは4,800+4,200=9,000円。合計18,000円で、配賦前の補助部門費合計(12,000+6,000)と一致します。
例題1の答え(直接配賦法の配賦表)
配賦元製造部門X製造部門Y合計
補助部門A費(6:4)7,2004,80012,000
補助部門B費(3:7)1,8004,2006,000
配賦額合計9,0009,00018,000

ここで迷ったら:割合の分母を確認しましょう。直接配賦法では製造部門への提供割合だけで比率を作ります(X 60%・Y 40%はそのまま6:4です)。最後の検算(合計18,000円)まで含めて型にしましょう。

例題2(相互配賦法(簡便法)の通し計算)

第1次集計の結果、補助部門Aの部門費は12,000円(サービス提供割合:補助部門B 20%・製造部門X 50%・製造部門Y 30%)、補助部門Bの部門費は6,000円(提供割合:補助部門A 20%・製造部門X 30%・製造部門Y 50%)であった。相互配賦法(簡便法)により、製造部門X・Yへの最終的な配賦額を求めなさい。

  1. 第1次配賦(割合どおり全部門へ):A費12,000円→補助部門B 2,400円・X 6,000円・Y 3,600円。B費6,000円→補助部門A 1,200円・X 1,800円・Y 3,000円。
  2. 第2次の比率を作り直す:Aの製造部門への割合はX 50%・Y 30%なので5:3、BはX 30%・Y 50%なので3:5です。
  3. 第2次配賦(受入分を製造部門のみへ):Aの受入分1,200円→X 750円・Y 450円。Bの受入分2,400円→X 900円・Y 1,500円。
  4. 集計して検算する:X=6,000+1,800+750+900=9,450円、Y=3,600+3,000+450+1,500=8,550円。合計18,000円で総額が保存されています。
例題2の答え(相互配賦法(簡便法)の配賦表。補助部門費の動きだけを示します)
摘要製造部門X製造部門Y補助部門A補助部門B
第1次配賦(A費12,000)6,0003,6002,400
第1次配賦(B費6,000)1,8003,0001,200
第2次配賦(A受入分1,200)750450
第2次配賦(B受入分2,400)9001,500
配賦額合計9,4508,550

ここで迷ったら:第2次で補助部門への割合(20%)を使わないことが最大のポイントです。1,200円×5/8=750円のように、製造部門への割合だけで作り直した比率で按分します。最後にX+Y=18,000円の保存を確かめましょう。

よくあるミス

第1次集計と第2次集計を混同する名前が似ているために起こるミスです。第1次集計は費目を各部門へ集める段階(個別費は賦課・共通費は配賦)、第2次集計は補助部門費を製造部門へ移す段階です。部門費配賦表のどの行を埋めているのか、段階を声に出して確かめてから計算しましょう。
第2次配賦でも補助部門へ配り続ける第1次と同じ割合表をそのまま使い回すために起こるミスです。簡便法の第2次は製造部門だけが配り先です。製造部門への割合だけで比率を作り直してから(X 50%・Y 30%→5:3)按分しましょう。
因果関係の弱い配賦基準を選ぶ資料にある数字を深く考えずに使うと起こるミスです。動力部門費を面積で配ると、電気をほとんど使わない部門にも大きく配賦されてしまいます。「その費用は何に比例して増えるか」を確認し、動力なら電力消費量、修繕なら修繕時間を選びましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 部門別原価計算で、部門共通費を各部門へ配る手続きはどの段階ですか?(答えを見る)

第1次集計(一次配賦)です。部門個別費の賦課と部門共通費の配賦で、各部門に費用を集める段階です。

Q2. 直接配賦法の特徴として正しいものはどれですか?(答えを見る)

補助部門どうしのやり取りを無視して、製造部門だけへ配ることです。1回の配賦で終わるため計算が速い方法です。

Q3. 2級で出題される相互配賦法(簡便法)の第2次配賦では、どこへ配りますか?(答えを見る)

製造部門のみです。第1次で他の補助部門から受け入れた金額を、製造部門への割合で作り直した比率で配ります。

Q4. 補助部門A費12,000円を、製造部門X 50%・製造部門Y 30%・補助部門B 20%の割合で第1次配賦したとき、製造部門Xへの配賦額はいくらですか?(答えを見る)

6,000円です。第1次配賦は提供割合どおりなので12,000円×50%で計算します。

Q5. 補助部門費の配賦が終わったあとの検算として正しいものはどれですか?(答えを見る)

製造部門への配賦額合計が、配賦前の補助部門費合計と一致することを確かめます。配賦は費用を配り直すだけなので総額は変わりません。

部門別原価計算は、一次集計で部門個別費・部門共通費を各部門へ集め、二次配賦で補助部門費を製造部門へ移します。直接配賦法は補助部門どうしを無視して1回で、相互配賦法(簡便法)は第1次で全部門へ・第2次で製造部門だけへ配って締めます。配賦後は総額の保存を検算し、部門別の予定配賦率で製品への配賦へつなげましょう。

対応する演習