本支店会計(本店勘定・支店勘定・未達整理)

支店を持つ会社では、本店と支店がそれぞれ帳簿を付けながら、内部の取引を記録し合います。その要になるのが、たがいを映す鏡のような本店勘定支店勘定です。ここでは、この2つの勘定が対称になる仕組みから、決算での未達取引・在途商品の整理、そして本支店合併後の財務諸表の作成までを、順に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:本店勘定と支店勘定は鏡

本店と支店は、同じ会社の中にありながら、それぞれ独立した帳簿を付けます。そこで、内部のやりとりを記録するために、本店の帳簿には支店勘定を、支店の帳簿には本店勘定を置きます。この2つは、たがいを映すのような関係です。本店が支店へ何かを送れば、本店の支店勘定と支店の本店勘定が、貸借を逆にして同じ金額だけ動きます。だから、内部取引がすべて正しく記録されていれば、支店勘定の残高と本店勘定の残高は必ず一致します。まずこの「鏡」のイメージを持っておきましょう。

図の見方:左は本店の帳簿にある支店勘定、右は支店の帳簿にある本店勘定です。1つの内部取引が、両方の勘定に貸借を逆にして記録されます。残高が一致しないときは、どちらかの記録が抜けているか、未達取引が起きています。

本店勘定・支店勘定(対称の仕組み)

本店の帳簿の支店勘定は、本店から見た「支店への投資・立替」を表し、支店の帳簿の本店勘定は、支店から見た「本店からの元手」を表します。内部取引が起きると、この2つは必ずペアで動きます。たとえば本店が支店へ現金を送ると、本店では支店勘定が増え(借方)、現金が減ります(貸方)。支店では現金が増え(借方)、本店勘定が増えます(貸方)。本店の支店勘定は借方、支店の本店勘定は貸方に同額が記録され、貸借が逆になります。

この対称性があるので、本店の支店勘定の残高と、支店の本店勘定の残高は、貸借を逆にして必ず一致します。逆にいえば、残高がずれていたら、内部取引のどこかに記録漏れやタイミングのずれ(未達)があるという合図です。銀行勘定調整表で当社と銀行の残高を突き合わせたのと同じ感覚で、本店と支店の残高を突き合わせます。

確認:本店の支店勘定と支店の本店勘定は、1つの内部取引を貸借逆に記録した鏡です。正しく記録されていれば残高は一致します。ずれは記録漏れか未達の合図です。

未達取引と在途商品

本店と支店の間の取引は、一方がすでに記録していても、もう一方にはまだ届いていない(記録できていない)ことがあります。これを未達取引といいます。たとえば、本店が支店へ商品を発送して支店勘定を増やしたのに、支店にはまだ商品が届かず本店勘定を増やせていない、という状態です。このときは、決算にあたってまだ記録していない側だけで、未達分を記録します。両方で記録すると二重になってしまうので、どちら側が未達かを見極めるのが大切です。

発送した商品が期末に輸送中で支店に届いていない状態は、在途商品(未達商品)と呼びます。ただし、在途商品はこの状態を表す用語で、標準勘定科目ではありません。支店側では(借)仕入/(貸)本店と記帳し、同額を支店の期末商品にも含めます。これで、支店の本店勘定の残高が本店の支店勘定の残高に追いつき、両者が一致します。

未達取引は、商品の発送だけで起こるとは限りません。本店が支店の負担する費用を立て替えて支払ったのに、支店側でまだ記録していない場合や、支店が本店へ送金したのに本店側でまだ受け取りを記録していない場合も、同じ考え方で整理します。まず「どちらの取引が、どちら側でまだ記録されていないか」を一つずつ確かめ、記録していない側だけで計上するという原則は変わりません。

確認:未達取引は、まだ記録していない側だけで計上します。両者で計上すると二重になります。輸送中の商品は「在途商品」という状態ですが、仕訳では支店側で仕入を借方、本店を貸方に記帳し、期末商品にも含めます。

本支店合併後の財務諸表

未達取引を整理し、本店の支店勘定と支店の本店勘定の残高が一致したら、本店と支店はそれぞれ、収益・費用の各勘定を損益勘定に振り替えて当期純損益を確定させ、帳簿を締め切ります。資産・負債・純資産の勘定だけが、翌期へ繰り越されます。

そのうえで、本店と支店それぞれの損益計算書・貸借対照表を合算し、会社全体の財務諸表を作ります。本店の支店勘定と支店の本店勘定は、会社内部の債権・債務にすぎず、会社全体から見れば外部に対する資産や負債ではないため、合算するときに相殺消去します。合算後に残るのは、外部との取引から生じた資産・負債・収益・費用だけです。

なお、本店が支店へ商品を送るときに、原価へ利益を上乗せした振替価格を使っている場合、支店の期末在庫にはその上乗せ分(内部利益)が残ります。この内部利益を付加する処理と、その消去は、簿記1級の範囲です。2級では、内部利益が付加されていない前提(振替価格=原価)で出題されます。

確認:帳簿を締め切ってから、本店・支店の財務諸表を合算します。本店勘定・支店勘定は内部の債権債務なので相殺消去し、合算後は外部との取引だけが残ります。内部利益の処理は1級の範囲です。

ユイ未達取引は、本店と支店の両方で記録するのですか?

サクラ先生いいえ、まだ記録していない側だけで記録します。片方はすでに記録済みなので、両方で計上すると二重になってしまいます。

ユイどちらが未達かを、先に見分ければよいのですね。

サクラ先生そのとおりです。「どちらがまだ記録していないか」を確かめてから、その側だけで整理します。

ユイ本店の支店勘定と、支店の本店勘定は、合併後の財務諸表では消えてしまうのですか?もったいない気がします。

サクラ先生消えるのではなく、相殺するだけです。本店から見た支店勘定も、支店から見た本店勘定も、会社の内部でやり取りした記録にすぎません。

ユイ会社全体で見れば、外部に対する資産や負債ではない、ということですね。

サクラ先生そのとおりです。合併後の財務諸表は会社全体を1つの会社として表すので、内部だけの債権・債務は相殺消去し、外部との取引から生じた資産・負債だけを残します。

例題で型をつかむ

例題1(本店勘定・支店勘定の対称)

本店は支店へ現金100,000円を送付し、支店はこれを受け取った。本店の帳簿と支店の帳簿、それぞれの仕訳を示しなさい。

  1. 本店の動きを読む:本店は現金が減り、支店への立替(支店勘定)が増えます。(借)支店100,000/(貸)現金100,000。
  2. 支店の動きを読む:支店は現金が増え、本店からの元手(本店勘定)が増えます。(借)現金100,000/(貸)本店100,000。
  3. 対称を確かめる:本店の支店勘定は借方100,000、支店の本店勘定は貸方100,000で、貸借が逆になります。
  4. 残高を確認する:支店勘定と本店勘定は、どちらも100,000で残高が一致します(鏡)。
例題1の答えの仕訳
帳簿借方科目借方金額貸方科目貸方金額
本店支店100,000現金100,000
支店現金100,000本店100,000

ここで迷ったら:本店では支店勘定が借方、支店では本店勘定が貸方です。貸借が逆になるのが鏡の関係。残高が一致するかで検算します。

例題2(未達取引・在途商品)

本店は支店へ商品100,000円(振替価格は原価と同じ)を発送し、支店勘定を増やした。しかし決算日現在、この商品は輸送中で支店に届いていない(未達)。支店側で必要な決算整理仕訳を示しなさい。

  1. 状況を読む:本店はすでに支店勘定を増やしていますが、支店は商品が届いていないので本店勘定を増やせていません。未達なのは支店側です。
  2. 未達側だけで計上する:記録していない支店側だけで整理します。両方で計上すると二重になります。
  3. 標準科目で記帳する:支店側で(借)仕入100,000/(貸)本店100,000と記帳します。「在途商品」は輸送中という状態を表す用語で、勘定科目には使いません。
  4. 期末商品へ含める:未達商品100,000円を支店の期末商品にも含め、仕入だけを増やして売上原価を過大にしないようにします。
  5. 残高を合わせる:これで支店の本店勘定が、本店の支店勘定に追いつき、両者の残高が一致します。
例題2の答えの仕訳(支店側)
借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入100,000本店100,000

ここで迷ったら:未達は「まだ記録していない側」だけで整理します。本店はすでに記録済みなので、本店側で追加の仕訳はしません。両者で計上しないよう注意します。

例題3(合併貸借対照表・本店勘定と支店勘定の相殺消去)

決算整理後、本店の帳簿の支店勘定は借方100,000円、支店の帳簿の本店勘定は貸方100,000円で一致した。本支店合併貸借対照表を作成するとき、これらの勘定はどのように扱うか答えなさい。

  1. 状況を確認する:未達整理がすんだあとなので、本店の支店勘定(借方100,000)と支店の本店勘定(貸方100,000)の残高が一致しています。
  2. 性質を考える:これらは本店・支店という同じ会社の内部でやり取りした債権・債務で、会社全体から見れば外部に対する資産・負債ではありません。
  3. 相殺消去する:合併貸借対照表を作るときは、本店の支店勘定と支店の本店勘定を相殺し、どちらも計上しません。
  4. 残りを確認する:合併後の貸借対照表には、外部との取引から生じた資産・負債だけが残ります。
例題3の答え(本店勘定・支店勘定の相殺消去)
帳簿勘定金額合併貸借対照表での扱い
本店支店(借方)100,000相殺消去(計上しない)
支店本店(貸方)100,000相殺消去(計上しない)

ここで迷ったら:本店勘定・支店勘定は、会社内部の資金・商品のやり取りを記録するための勘定です。合併貸借対照表は会社全体を1つの会社として表すので、内部の債権・債務は相殺消去し、外部に対する資産・負債だけを残します。

よくあるミス

本店勘定と支店勘定の残高一致(鏡)を崩す片方だけを動かして、もう片方を動かし忘れると起きます。内部取引は、本店の支店勘定と支店の本店勘定に、貸借を逆にして同額を記録します。記録後に両者の残高が一致するかを確かめると、崩れに気づけます。
未達取引を本店と支店の両方で計上するどちらが未達かを見極めないと起きます。すでに記録している側はそのままにして、まだ記録していない側だけで整理します。両方で計上すると二重になります。「どちらがまだ記録していないか」を先に確認すると防げます。
本店勘定・支店勘定を相殺せずに合併貸借対照表へそのまま載せる本店勘定・支店勘定は会社内部の債権・債務なので、合併貸借対照表を作るときは相殺消去します。両方をそのまま資産・負債として残すと、会社全体の資産・負債が実際より多く見えてしまいます。未達整理を終え、本店・支店の残高が一致したことを確認してから相殺する、という順序を守ると防げます。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 本店が支店へ現金100,000円を送った。本店の帳簿での仕訳はどれですか?(答えを見る)

(借)支店100,000/(貸)現金100,000です。本店は現金が減り、支店への立替を表す支店勘定が増えます。

Q2. 本店が支店へ現金100,000円を送った。支店の帳簿での仕訳はどれですか?(答えを見る)

(借)現金100,000/(貸)本店100,000です。支店は現金が増え、本店からの元手を表す本店勘定が増えます。本店の支店勘定と貸借が逆になり、残高が一致します。

Q3. 本店の帳簿の支店勘定と、支店の帳簿の本店勘定の関係として正しいのはどれですか?(答えを見る)

貸借を逆にして残高が一致します(鏡の関係)。1つの内部取引が両方の勘定に貸借逆で記録されるためです。残高がずれていたら、記録漏れか未達のサインです。

Q4. 本店が発送した商品が、決算日に支店へ未達である。整理として正しいのはどれですか?(答えを見る)

まだ記録していない支店側で(借)仕入/(貸)本店と記帳し、同額を期末商品にも含めます。本店はすでに記録済みなので、両方で計上すると二重になります。

Q5. 本支店合併貸借対照表を作成するとき、本店の支店勘定(借方100,000円)と支店の本店勘定(貸方100,000円)は、どのように扱いますか?(答えを見る)

貸借を相殺し、合併後の財務諸表には計上しません。本店勘定・支店勘定は会社内部の債権・債務で、会社全体から見れば外部に対する資産・負債ではないためです。

本支店会計では、本店の支店勘定と支店の本店勘定が、1つの内部取引を貸借逆に記録した鏡です。正しく記録されていれば残高は一致し、ずれは記録漏れや未達の合図になります。未達取引はまだ記録していない側だけで整理し(輸送中の商品は在途商品)、決算では帳簿を締め切ってから本店・支店の財務諸表を合算し、本店勘定・支店勘定を相殺消去して会社全体の財務諸表を作ります(内部利益の処理は1級の範囲です)。

対応する演習