連結会計(資本連結・非支配株主持分・のれん・成果連結・未実現利益消去・連結精算表)
親会社と子会社は法律上は別の会社ですが、実質的には1つの企業集団です。連結会計は、この集団をまとめて1組の財務諸表に表す手続きです。まず親会社と子会社の個別財務諸表を合算し、そこから集団内部の重複を取り除きます。ここでは、支配獲得時の資本連結(投資と資本の相殺)から、非支配株主持分・のれん、そして成果連結(内部取引と未実現利益の消去)、連結精算表までを、2級の範囲で順に身につけていきましょう。
この単元で身につくこと
- 支配獲得時に、親会社の投資(子会社株式)と子会社の資本を相殺消去できます。
- 非支配株主持分と、連結上ののれんを算定できます。
- 連結会社間取引と未実現利益(棚卸資産・土地)を消去できます。
まずイメージ:集団の「内部の重複」を取り除く
連結財務諸表は、親会社と子会社の個別財務諸表を単純に合算しただけでは正しくなりません。合算すると、親会社が持つ子会社株式と子会社の資本、集団内での売り買い、集団内に残る利益などが二重に含まれてしまうからです。そこで、合算した金額から集団内部の重複を消し込みます。支配獲得時の投資と資本を消すのが資本連結、当期の内部取引や未実現利益を消すのが成果連結で、投資が子会社の純資産を上回る差額はのれんになります。
図の見方:左が親会社の投資(子会社株式)、右が子会社の資本(純資産)です。この2つを相殺し、投資が純資産を上回る差額をのれんとします。100%取得ならこの形、80%取得のような部分所有では、右の純資産のうち親会社以外の分が非支配株主持分になります。
連結の全体像と資本連結(100%)
連結は「合算 → 消去」の2段階で考えます。まず親会社と子会社の個別財務諸表を合算し、次に集団内部の重複を消去します。消去のうち、支配獲得時に行うのが資本連結です。親会社の投資(子会社株式)と、子会社の資本(資本金・利益剰余金など)は、集団の中で見れば同じものの表と裏なので、相殺して消します。
子会社株式100%を取得したケースで考えます。親会社の投資と子会社の純資産(=資本の合計)を相殺し、投資のほうが大きい差額をのれんとして計上します。仕訳は、借方に子会社の資本(資本金・利益剰余金)とのれん、貸方に子会社株式を並べます。のれん=投資−子会社純資産、という関係は合併のときと同じ考え方です。
確認:資本連結は投資(子会社株式)と子会社の資本の相殺。100%取得なら、のれん=投資−子会社純資産。借方に資本+のれん、貸方に子会社株式です。
非支配株主持分とのれん(部分所有)
子会社株式を100%ではなく、たとえば80%だけ取得した場合を考えます。連結では子会社の資産・負債を全部取り込むので、そのうち親会社以外の株主(非支配株主)に属する部分を、非支配株主持分として純資産に区別して示します。非支配株主持分=子会社純資産×非支配株主の持分割合です。親会社80%なら、非支配株主は20%です。
部分所有ののれんは、投資と、子会社純資産のうち親会社の持分割合に対応する額との差で求めます。のれん=投資−子会社純資産×親会社持分割合です。純資産の全額と比べるのではない点が、100%取得との違いです。相殺仕訳は、借方に子会社の資本の全額とのれん、貸方に子会社株式と非支配株主持分を並べます。
確認:非支配株主持分=純資産×非支配割合。部分所有ののれん=投資−純資産×親会社割合。純資産の全額ではなく、親会社の持分に対応する額と投資を比べます。
成果連結(取引消去・未実現利益の消去)
支配を獲得した後は、当期の集団内部の取引も消去します。これを成果連結といいます。1つ目は内部取引の相殺です。親会社と子会社の間の売上高と売上原価、売掛金と買掛金などは、集団の外から見れば取引が存在しないのと同じなので、両建てで相殺します。
2つ目は未実現利益の消去です。集団内部で商品を売り買いし、それが期末在庫として集団内に残っていると、その在庫には集団外へまだ売れていない利益(未実現利益)が含まれています。この分を消します。仕訳は(借)売上原価/(貸)商品で、未実現利益=集団内在庫×売上総利益率です。土地を集団内で売買して外部に売っていない場合も、同じ考え方で売却損益を消去します。2級では、未実現利益の消去は棚卸資産と土地を押さえれば十分です。
未実現利益は、売った向きで負担者が変わります。ダウンストリーム(親会社→子会社)では、親会社が全額を負担し、非支配株主持分への按分は行いません。アップストリーム(子会社→親会社)では、利益が子会社側で生じているため、未実現利益を全額消去したうえで、その一部(未実現利益×非支配株主の持分割合)を非支配株主持分にも負担させます。本支店会計で学ぶ内部利益の消去(簿記1級の範囲)とも考え方が似ていますが、この未実現利益の消去自体は2級の出題範囲です。なお、持分法や連結上の税効果、在外子会社の換算は簿記1級の範囲です。
アップストリームの消去仕訳は、2本のセットで覚えます。たとえば、S社(P社の持分割合80%・非支配株主20%)がP社へ商品を販売し、P社の期末在庫にS社が付けた未実現利益20,000円が含まれているとします。1本目は未実現利益の全額消去で、(借)売上原価 20,000/(貸)商品 20,000。ここまではダウンストリームと同じです。2本目が非支配株主への按分で、消去した20,000×非支配株主の持分割合20%=4,000円を、(借)非支配株主持分 4,000/(貸)非支配株主に帰属する当期純利益 4,000 と処理します。ダウンストリームでは、この2本目は行いません。
確認:内部取引(売上高・売上原価、債権債務)は相殺。期末在庫の未実現利益=在庫×利益率を(借)売上原価/(貸)商品で消去。ダウンは親が全額、アップは2本目の(借)非支配株主持分/(貸)非支配株主に帰属する当期純利益で非支配株主にも按分します。
連結精算表の読み方
資本連結・成果連結の結果は、連結精算表にまとめます。連結精算表は左から右へ、「個別財務諸表(親会社と子会社の合算)→ 修正・消去(連結修正仕訳の借方・貸方)→ 連結財務諸表(合算に修正消去を加減した結果)」という順で並びます。この順に金額を追うと、のれんや非支配株主持分がどこから現れるのかが見えてきます。
| 科目 | 個別を合算 | 修正・消去 | 連結財務諸表 |
|---|---|---|---|
| 子会社株式 | 親会社に計上 | 貸方で相殺消去 | 消える(0) |
| のれん | 個別にはない | 借方で計上 | 資産に表示 |
| 非支配株主持分 | 個別にはない | 貸方で計上 | 純資産に表示 |
| 売上高・売上原価 | 単純合算 | 内部取引を相殺 | 集団外の取引だけ |
確認:連結精算表は「合算 → 修正・消去 → 連結」の順に読みます。子会社株式は消え、のれんと非支配株主持分は修正・消去の欄から現れます。
ユイ子会社株式を80%しか持っていないとき、残りの20%はどう扱うのですか?
サクラ先生残り20%は、親会社以外の株主(非支配株主)の持分です。連結では子会社の資産・負債を全部取り込むので、そのうち非支配株主に属する分を「非支配株主持分」として純資産に区別して示します。
ユイだから、子会社の純資産×20%が非支配株主持分になるのですね。
サクラ先生そのとおりです。まず親会社の割合の残りを確認すると、割合の取り違えを防げます。
ユイ未実現利益の消去で、非支配株主にも負担させるのはどんなときですか?
サクラ先生子会社から親会社へ売ったアップストリームのときです。利益が子会社側で生じているので、非支配株主にも持分割合だけ負担させます。親会社から子会社へ売ったダウンストリームでは、親会社が全額を負担します。
ユイ売った向きで負担者が変わるのですね。
サクラ先生そうです。「どちらが売り手か」をまず確認します。
例題で型をつかむ
なお、例題1・2は、支配獲得日のS社の資産・負債の帳簿価額が時価と一致している(評価差額が生じない)前提です。これは簿記2級の出題前提でもあり、支配獲得時の資産・負債の時価評価(評価差額の計上)や段階取得は簿記1級の範囲です。
P社は支配獲得日にS社の発行済株式の100%を600,000円で取得した。同日のS社の純資産は、資本金400,000円と利益剰余金150,000円である。支配獲得日の連結修正仕訳(投資と資本の相殺消去)を示しなさい。
- 子会社純資産を求める:資本金400,000+利益剰余金150,000=550,000。
- のれんを求める:100%取得なので、のれん=投資600,000−子会社純資産550,000=50,000。
- 左右を決める:子会社の資本(資本金・利益剰余金)とのれんを借方、投資(子会社株式)を貸方に置きます。
- 4列に並べる:(借)資本金400,000・利益剰余金150,000・のれん50,000/(貸)子会社株式600,000。借方・貸方とも600,000で一致します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 利益剰余金 のれん | 400,000 150,000 50,000 | 子会社株式 | 600,000 |
ここで迷ったら:100%取得では、子会社純資産の全額(550,000)と投資(600,000)を比べます。差額50,000がのれん。非支配株主がいないので、非支配株主持分は生じません。
P社は支配獲得日にS社の発行済株式の80%を480,000円で取得した。同日のS社の純資産は、資本金400,000円と利益剰余金150,000円である。支配獲得日の連結修正仕訳を示しなさい。
- 子会社純資産を求める:資本金400,000+利益剰余金150,000=550,000。
- 非支配株主持分を求める:純資産550,000×非支配20%=110,000。
- のれんを求める:投資480,000−純資産550,000×親会社80%(=440,000)=40,000。
- 4列に並べる:(借)資本金400,000・利益剰余金150,000・のれん40,000/(貸)子会社株式480,000・非支配株主持分110,000。借方・貸方とも590,000で一致します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 利益剰余金 のれん | 400,000 150,000 40,000 | 子会社株式 非支配株主持分 | 480,000 110,000 |
ここで迷ったら:非支配株主持分は純資産×20%=110,000(親会社の80%ではありません)。のれんは、純資産の全額ではなく親会社持分に対応する額440,000と投資480,000を比べた40,000です。
当期、P社はS社へ商品200,000円を販売した(P社の売上総利益率は20%)。期末にS社が保有する在庫のうち、P社から仕入れた分が60,000円ある。また、期末にP社のS社に対する売掛金が50,000円ある。連結上必要な、内部取引の相殺・未実現利益の消去・債権債務の相殺の仕訳を示しなさい。
- 内部売上高を相殺する:P社の売上高200,000とS社の売上原価200,000は集団内部の取引なので相殺。(借)売上高200,000/(貸)売上原価200,000。
- 未実現利益を求める:期末在庫60,000×売上総利益率20%=12,000。(借)売上原価12,000/(貸)商品12,000。
- 債権債務を相殺する:P社の売掛金50,000とS社の買掛金50,000を相殺。(借)買掛金50,000/(貸)売掛金50,000。
- 負担者を確かめる:親会社→子会社のダウンストリームなので、未実現利益は親会社が全額負担し、非支配株主持分への按分はありません。
| 消去 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 内部売上高 | 売上高 | 200,000 | 売上原価 | 200,000 |
| 未実現利益 | 売上原価 | 12,000 | 商品 | 12,000 |
| 債権債務 | 買掛金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 |
ここで迷ったら:未実現利益は在庫の金額60,000ではなく、それに利益率をかけた12,000です。ダウンストリームなので非支配株主への按分は不要。もし子会社→親会社のアップストリームなら、12,000を消したうえで、2本目の(借)非支配株主持分/(貸)非支配株主に帰属する当期純利益 で非支配株主にも持分割合だけ負担させます。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 資本連結で相殺消去する組み合わせはどれですか?(答えを見る)
親会社の投資(子会社株式)と子会社の資本です。支配獲得時に、投資と子会社の資本金・利益剰余金を相殺し、差額をのれんとします。売上高と売上原価の相殺や債権債務の相殺は、成果連結で行います。
Q2. P社がS社株式100%を600,000円で取得した。S社の純資産は資本金400,000円と利益剰余金150,000円である。のれんはいくらですか?(答えを見る)
50,000円です。のれん=投資600,000−子会社純資産(400,000+150,000=550,000)=50,000円。投資が純資産を上回る差額がのれんです。
Q3. P社がS社株式80%を取得した。S社の純資産が550,000円のとき、非支配株主持分はいくらですか?(答えを見る)
110,000円です。非支配株主持分=子会社純資産550,000×非支配20%=110,000円。親会社の80%ではなく、残りの20%で計算します。
Q4. P社がS社株式80%を480,000円で取得した。S社純資産は550,000円である。連結上ののれんはいくらですか?(答えを見る)
40,000円です。のれん=投資480,000−子会社純資産550,000×親会社80%(=440,000)=40,000円。純資産全額ではなく、親会社の持分割合に対応する額と投資を比べます。
Q5. 親会社が子会社へ販売した商品が子会社の期末在庫に残り、未実現利益が12,000円ある(ダウンストリーム)。連結上の消去仕訳はどれですか?(答えを見る)
(借)売上原価12,000/(貸)商品12,000です。期末在庫に含まれる未実現利益を消去します。ダウンストリームなので親会社が全額負担し、非支配株主持分への按分は行いません。
連結会計は、親会社と子会社を1つの企業集団とみなし、個別財務諸表を合算してから内部の重複を消去します。資本連結では投資と資本を相殺してのれん・非支配株主持分を求め(部分所有ののれんは投資−純資産×親会社割合)、成果連結では内部取引と未実現利益(棚卸資産・土地)を消去します。これらを連結精算表にまとめると、連結財務諸表ができあがります。