固定資産と減価償却

備品や車両運搬具などの固定資産は、購入した期に全額を費用にせず、使う期間にわたって少しずつ費用化していきます。取得から減価償却、売却までの流れを、例題とミニ演習で順番に身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:固定資産の一生を追いかける

備品や車両運搬具のように、長期間使う目的で購入した資産を固定資産と呼びます。固定資産は「買ったときに全額を費用にする」のではなく、使う期間にわたって少しずつ価値が減っていくと考え、その減少分を毎期の費用として計上します。この単元では、固定資産を取得したときの処理から、決算ごとの減価償却、そして手放すとき(売却)の損益計算までを、ひとつの流れとして追いかけていきます。

図解:取得→減価償却→売却の流れ

固定資産のライフサイクル:取得、減価償却、売却の3段階 固定資産は取得原価で計上し、毎期末に減価償却を行い、売却時に帳簿価額と売却価額の差を売却損益として処理することを示した図。 ① 取得 購入代価+付随費用 (運送費・据付費など) =取得原価 ② 減価償却(毎期末) 定額法で年間償却費を計算 間接法:減価償却累計額へ 期中取得は月割で按分 ③ 売却 帳簿価額=取得原価 −減価償却累計額 売却価額との差が損益 ポイント:売却の前に、売却日までの当期分の減価償却費を月割で計上します そのうえで帳簿価額と売却価額を比べ、売却益・売却損を求めます

図の見方:①で取得原価が決まり、②で毎期末に減価償却を積み重ね、③で手放すときに帳簿価額と売却価額を比べます。売却の直前には、必ずその期の分の減価償却を月割で計上してから比べる点がポイントです。

取得原価の考え方

備品や車両運搬具などの固定資産を取得したときは、購入代価だけでなく、その資産を使えるようにするまでにかかった費用(付随費用)もあわせて取得原価に含めます。付随費用の代表例は、運送費・据付費・購入手数料などです。

確認:付随費用は「その資産を使い始めるために必要だった支出か」で判断し、費用(諸経費)としてではなく取得原価に含めます。

減価償却(定額法・間接法・月割)

固定資産は使用にともなって価値が減っていくと考え、その減少分を毎期の費用として計上します。この処理が減価償却費で、3級では主に定額法を使います。

減価償却費を計上するときは、固定資産そのものを直接減らすのではなく、減価償却累計額という勘定に価値の減少分を積み立てていきます(間接法)。減価償却累計額は資産のマイナスを表す評価勘定で、貸借対照表では固定資産の取得原価から差し引いて帳簿価額を表示します。

確認:仕訳は「借方 減価償却費/貸方 減価償却累計額」の組合せで固定です。貸方が固定資産そのものになることはありません(直接法との違い)。

売却(帳簿価額と売却価額の差)

固定資産を売却するときは、まず売却日までの当期分の減価償却費を月割で計上し、帳簿価額(取得原価−減価償却累計額)を確定させます。そのうえで、売却価額と帳簿価額を比べ、売却価額の方が高ければ固定資産売却益、低ければ固定資産売却損を計上します。

売却時の判定
比較結果科目(貸借どちらに出るか)
売却価額 > 帳簿価額差額が利益固定資産売却益(貸方・収益)
売却価額 < 帳簿価額差額が損失固定資産売却損(借方・費用)

表の読み方:売却価額と帳簿価額のどちらが大きいかで、利益になるか損失になるかが決まります。帳簿価額の計算を間違えると損益の金額もずれるため、当期分の償却計上を忘れないことが大切です。

例題で型をつかむ

例題1(取得と初年度の月割償却)

備品600,000円を購入し、運送費20,000円とあわせて代金は未払いとした(×2年10月1日取得、決算日は×3年3月31日)。耐用年数5年・残存価額ゼロ、定額法・間接法により、取得時と決算時の仕訳を示しなさい。

  1. 取得原価を確定する:備品本体600,000円に付随費用(運送費)20,000円を足し、取得原価620,000円とします。
  2. 取得時の仕訳を決める:備品(資産)の増加は借方、未払金(負債)の増加は貸方に計上します。
  3. 当期の使用月数を数える:10月1日から3月31日までは6か月です。
  4. 決算時の仕訳を決める:年間償却費620,000円÷5年=124,000円を月割し、124,000円×6/12=62,000円を計上します。
例題1の答え(取得時→決算時)
タイミング借方科目借方金額貸方科目貸方金額
取得時備品620,000未払金620,000
決算時減価償却費62,000減価償却累計額62,000

ここで迷ったら:付随費用は取得原価に含め、使用を始めた月から決算日までの月数で月割します。1か月未満の端数は問題文の指示に従いましょう。

例題2(期中売却と売却損の計算)

車両運搬具(取得原価900,000円、耐用年数6年、残存価額ゼロ、定額法・間接法、期首時点の減価償却累計額450,000円)を、期首から6か月後の×3年9月30日に350,000円で売却し、代金は現金で受け取った(決算日は毎年3月31日)。当期分の減価償却費の計上とあわせて、売却時の仕訳を示しなさい。

  1. 当期の使用月数を数える:期首から売却日までは6か月です。
  2. 当期分の減価償却費を計算する:年間償却費900,000円÷6年=150,000円を月割し、150,000円×6/12=75,000円を計上します。
  3. 売却時点の帳簿価額を求める:取得原価900,000円−(期首の累計額450,000円+当期償却費75,000円)=375,000円です。
  4. 売却損益を求める:売却価額350,000円が帳簿価額375,000円より25,000円低いため、固定資産売却損25,000円が生じます。
例題2の答え(当期償却→売却)
タイミング借方科目借方金額貸方科目貸方金額
当期償却減価償却費75,000減価償却累計額75,000
売却時減価償却累計額525,000車両運搬具900,000
現金350,000
固定資産売却損25,000

ここで迷ったら:売却の仕訳を書く前に、必ず売却日までの当期分の減価償却費を先に計上します。帳簿価額は「取得原価−(期首の累計額+当期償却費)」で求めましょう。

よくあるミス

付随費用を費用として処理してしまう運送費や据付費を「経費だから費用科目で処理する」と考えてしまうミスです。取得原価に何を含めるかを意識せず、支出=費用と機械的に結びつけると起こります。「その資産を使えるようにするまでにかかった支出か」を確認し、該当すれば取得原価に含めましょう。
直接法で仕訳を書いてしまう減価償却費を計上するとき、貸方に固定資産そのものを置いて直接減らしてしまうミスです。3級で扱う間接法(減価償却累計額を使う方法)を忘れると起こります。仕訳の貸方は必ず減価償却累計額にする、と型で覚えておきましょう。
売却時に当期分の償却を計上し忘れる期首時点の帳簿価額のまま売却価額と比べてしまい、売却損益の金額を誤るミスです。売却の仕訳を先に考えてしまうと起こります。売却の仕訳を書く前に、必ず売却日までの当期分の減価償却費を月割で計上しましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 備品の本体価格500,000円、購入手数料10,000円、据付費15,000円を支払い、代金は未払いとした。取得原価はいくらか?(答えを見る)

525,000円です。取得原価は購入代価に付随費用(購入手数料・据付費など)を加えた金額になります。

Q2. 取得原価480,000円、耐用年数6年、残存価額ゼロの備品を定額法で償却する。年間の減価償却費はいくらか?(答えを見る)

80,000円です。残存価額ゼロの定額法では、年間償却費=取得原価÷耐用年数で求めます(480,000÷6=80,000)。

Q3. 定額法・間接法で減価償却費を計上する仕訳の貸方科目はどれか?(答えを見る)

減価償却累計額です。間接法では固定資産そのものを直接減らさず、減価償却累計額という評価勘定に価値の減少分を積み立てます。

Q4. 帳簿価額200,000円の備品を180,000円で売却し、代金を現金で受け取った。生じる損益はどれか?(答えを見る)

固定資産売却損20,000円です。売却価額180,000円が帳簿価額200,000円より20,000円低いため、差額は売却損になります。

Q5. 減価償却累計額の説明として正しいものはどれか?(答えを見る)

固定資産の価値減少を累計した、資産のマイナスを表す評価勘定です。取得原価そのものでも、当期の費用そのものでもない点に注意しましょう。

固定資産は、購入代価に付随費用を加えた取得原価で計上します。減価償却は定額法・間接法(減価償却累計額)で計算し、期中取得は月割で按分します。売却時は、当期分の償却を計上したうえで帳簿価額と売却価額を比べ、差額を固定資産売却益・売却損として処理します。

対応する演習