仕訳の標準型

仕訳は「取引 → 増減 → 左右 → 4列」の順で考えると迷いません。この型を、例題とミニ演習で身につけていきましょう。

この単元で身につくこと

まずイメージ:仕訳はすべての出発点

簿記の記録は、すべて仕訳から始まります。仕訳が仕訳帳から総勘定元帳試算表へと流れていくので、ここが崩れると後の集計もすべて崩れます。本試験でも第1問は仕訳15問(45点)で、合否の中心です。

手順はいつも同じ4ステップです。下の図で流れをつかみましょう。

図解:仕訳を決める4ステップ

仕訳判断の基本フロー 取引内容を読み、増えるものと減るものを決め、借方と貸方を判定し、最後に4列仕訳へ並べる手順を示した図 1. 取引を読む 何を受け取り、何を渡したか 現金・売掛金・売上などを拾う 2. 増減を決める 増える勘定 / 減る勘定 5要素の増減ルールで判断 3. 左右を決める 資産・費用の増加は借方 負債・純資産・収益の増加は貸方 4. 4列に並べる 借方科目|金額|貸方科目|金額 左右の金額が一致するか確認 迷ったら「現金がどう動いたか」から逆算します 受け取るなら資産増で借方、支払うなら資産減で貸方。掛けなら現金の代わりに売掛金・買掛金へ置き換えます。

この図で先に見る点: 仕訳は 取引を読む → 増減を決める → 借方/貸方を決める → 4列に置く の順で考えます。いきなり左右を決めず、まず何が増えて何が減るかを言葉で確認すると崩れません。

5要素の増減ルール

すべての勘定科目は「資産・負債・純資産・収益・費用」のどれかに属し、仲間ごとに増える側が決まっています。

5要素の増減ルールと代表的な勘定科目
分類増減の方向代表例
資産借方で増加/貸方で減少現金普通預金売掛金受取手形備品 など
負債借方で減少/貸方で増加買掛金支払手形未払金 など
純資産借方で減少/貸方で増加資本金 など
収益借方で減少/貸方で増加売上受取利息 など
費用借方で増加/貸方で減少仕入・給料・水道光熱費 など

表の読み方:まず「どの仲間か」を決め、次に増えたか減ったかを見ます。左右(借方・貸方)は最後に自動的に決まります。

迷ったら「現金がどう動いたか」から逆算します。受け取れば資産の増加=借方、支払えば資産の減少=貸方です。

左右のイメージは、勘定をアルファベットのTの形に見立てると覚えやすくなります。左が借方、右が貸方です。

図の見方:現金は資産なので、増えた金額を左(借方)、減った金額を右(貸方)に記入します。

「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」という言葉自体に深い意味はありません。ひらがなの「り」は書き終わりが左へ、「し」は右へ伸びることから、「かり」は左・「かし」は右、と覚えるのが定番です。左右の名前だと割り切って、判断は「仲間→増減→左右」の手順に任せましょう。

4列の書式

「掛け」という言葉の扱いはつまずきやすいので、先に整理しておきましょう。

ユイ「掛け」と出てきたら、ぜんぶ売掛金でいいんですか?

サクラ先生商品を売った代金なら売掛金、商品を仕入れた代金なら買掛金です。同じ「掛け」でも向きで科目が変わります。

ユイ備品を月末払いで買ったときは…買掛金ですか?

サクラ先生そこがつまずきどころです。買掛金は商品仕入の後払い専用で、商品以外の後払いは未払金を使います。「何の代金か」を先に確認しましょう。

例題で型をつかむ

例題1(複数行の仕訳)

商品を売り上げ、代金120,000円のうち30,000円は現金で受け取り、残額は掛けとした。

  1. 取引を読む:受け取ったのは現金30,000円と「あとで受け取る権利」90,000円。渡したのは商品(売上120,000円)です。
  2. 増減を決める:現金(資産)が増、売掛金(資産)が増、売上(収益)が増。
  3. 左右を決める:資産の増加は借方、収益の増加は貸方。
  4. 4列に並べる:借方が2行になるので、合計120,000円が貸方と一致するかを確認します。
例題1の答え(借方2行の複数行仕訳)
借方科目金額貸方科目金額
現金30,000売上120,000
売掛金90,000

ここで迷ったら:借方が複数行になっても、左右の合計が一致していれば正しく書けています。「掛け」は代金の後日精算で、売った側が持つ権利は売掛金です。

例題2(買掛金と未払金の区別)

事務用のデスク(備品)50,000円を購入し、代金は月末に支払うことにした。

  1. 取引を読む:受け取ったのは備品。支払いはまだなので「あとで払う義務」が発生しています。
  2. 増減を決める:備品(資産)が増、未払金(負債)が増。
  3. 左右を決める:資産の増加は借方、負債の増加は貸方。
  4. 4列に並べる:借方 備品 50,000 / 貸方 未払金 50,000。
例題2の答え
借方科目金額貸方科目金額
備品50,000未払金50,000

ここで迷ったら:同じ後払いでも、商品仕入なら買掛金、商品以外なら未払金です。問題文の「何を買ったか」を先に確認しましょう。

よくあるミス

「費用はお金が減るから貸方」と考えてしまう費用は借方で増える要素です。お金の減少(貸方の現金)と費用の発生(借方)は別の行の話なので、勘定ごとに「仲間→増減→左右」を独立に判定しましょう。
買掛金と未払金を取り違える買掛金は商品仕入の後払い専用です。備品・車両など商品以外の後払いは未払金。問題文の「何を買ったか」に印を付けると防げます。
貸借の合計不一致に気づかない複数行の仕訳で起きやすいミスです。書き終えたら必ず借方合計=貸方合計を電卓で確認する習慣にしましょう。

ミニ演習(5問・即時採点)

Q1. 商品20,000円を現金で販売した。正しい仕訳は?(答えを見る)

借方 現金 20,000 / 貸方 売上 20,000。現金(資産)の増加は借方、売上(収益)の増加は貸方です。

Q2. 商品80,000円を掛けで仕入れた。正しい仕訳は?(答えを見る)

借方 仕入 80,000 / 貸方 買掛金 80,000。商品の掛け仕入は買掛金を使います。

Q3. 買掛金60,000円を普通預金から支払った。正しい仕訳は?(答えを見る)

借方 買掛金 60,000 / 貸方 普通預金 60,000。負債の減少は借方です。

Q4. 備品30,000円を購入し、代金は翌月末払いとした。正しい仕訳は?(答えを見る)

借方 備品 30,000 / 貸方 未払金 30,000。商品以外の後払いは未払金です。

Q5. 貸付金100,000円が利息2,000円とともに現金で返済された。正しい仕訳は?(答えを見る)

借方 現金 102,000 / 貸方 貸付金 100,000・受取利息 2,000。受け取った現金の総額が借方です。

仕訳は「取引 → 増減 → 左右 → 4列」の順で機械的に決めます。迷ったら現金の動きから逆算し、「掛け」は商品なら売掛金・買掛金、商品以外の後払いは未払金。最後に必ず貸借の金額一致を確認しましょう。

対応する演習