決算整理と締切
決算では、日々の記帳だけでは正しくならない残高を整え、収益と費用を損益勘定に集めてから締め切ります。決算整理事項を8項目のマップで見渡したうえで、経過勘定・貯蔵品・締切の流れを順番に確認していきましょう。
この単元で身につくこと
- 決算整理事項を8つの項目に分けて列挙できます。
- 経過勘定(前払費用・前受収益・未収収益・未払費用)を仕訳できます。
- 貯蔵品の決算整理仕訳ができ、当座借越の振替は担当単元で確認できます。
- 損益振替から繰越利益剰余金への締切の流れを説明できます。
まずイメージ:決算は「整えてから締める」作業
試算表を作っただけでは、決算はまだ終わりません。期中の記帳だけでは捉えきれなかったズレ(経過勘定など)を直し、見積り直しが必要な残高(貸倒引当金・減価償却など)を整えて、はじめて正しい期間損益になります。そのうえで、収益と費用を損益勘定に集約して締め切ります。この単元では、決算整理事項を8項目のマップで見渡したあと、そのうち貯蔵品と経過勘定を詳しく扱い、最後に締切の流れまで確認します。
決算整理の全体像(8項目マップ)
決算整理事項は、次の8項目に整理できます。それぞれの詳しい仕訳は担当する単元で確認できます。このページでは、③貯蔵品と⑦経過勘定、そして決算整理全体を損益振替でどう締めくくるかを担当します。
①現金過不足の精算と②当座借越の振替は現金・預金と現金過不足の単元で確認済みです。④売上原価の算定は売上原価と三分法の単元、⑤貸倒引当金の見積りは貸倒引当金の単元、⑥減価償却は固定資産と減価償却の単元、⑧法人税等は株式会社の資本・配当・税金の単元、消費税は消費税(税抜方式)の単元でそれぞれ仕訳を確認できます。
図の見方:8項目のうち、色の濃い③貯蔵品と⑦経過勘定がこのページの担当です。残り6項目は矢印の代わりに文中リンクで示した単元にまとまっています。決算整理の全体量に圧倒されそうなときは、まずこの地図で「今どこを勉強しているか」を確認しましょう。
経過勘定4兄弟
前払費用・前受収益・未収収益・未払費用は、まとめて経過勘定と呼ばれます。現金を受け払いするタイミングと、費用・収益が発生するタイミングにズレがあるとき、決算でそのズレを正しい期間に振り分けるための勘定です。
| 勘定 | 方向 | 典型例 |
|---|---|---|
| 前払費用 | 資産(借方) | 保険料・家賃などの前払い分(次期の費用を先に支払った) |
| 前受収益 | 負債(貸方) | 受取家賃などの前受け分(次期の収益を先に受け取った) |
| 未収収益 | 資産(借方) | 受取利息などの未収分(当期の収益がまだ入金されていない) |
| 未払費用 | 負債(貸方) | 支払家賃・給料などの未払い分(当期の費用がまだ支払われていない) |
表の読み方:「これから先の期間の分」を前払・前受、「もう発生しているのにまだ動いていない分」を未収・未払と考えると整理しやすくなります。資産になるか負債になるかは、前払費用・未収収益が資産、前受収益・未払費用が負債と覚えましょう。
決算整理で計上した経過勘定は、翌期首になったら再振替仕訳(決算整理仕訳の借方・貸方を逆にした仕訳)を行い、もとの費用・収益の勘定に戻します。再振替を忘れると、経過勘定の残高が翌期以降も試算表に残ったままになってしまいます。
現金の収支と発生時期にズレが生じる ② 決算整理
前払・前受・未収・未払を計上 ③ 翌期首
再振替仕訳でもとの費用・収益に戻す
図の見方:①→②→③の順に進みます。②で経過勘定として計上した金額は、③でそのまま逆向きに振り戻すため、②と③は必ずセットで発生すると覚えておきましょう。
貯蔵品(切手・収入印紙)
郵便切手や収入印紙は、購入したときに通信費・租税公課として費用処理するのが通例です。ただし、決算日に未使用のまま残っている分は、まだ費用として使い切っていないため、資産である「貯蔵品」に振り替えます。翌期首には、経過勘定と同じように再振替仕訳を行い、もとの費用の勘定に戻します。
| 場面 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算整理 | 貯蔵品 | 5,000 | 通信費 | 2,000 |
| 租税公課 | 3,000 |
表の読み方:未使用の切手・印紙の合計5,000円を貯蔵品(資産)に振り替え、もとの費用科目(通信費・租税公課)を減らします。翌期首には、この仕訳の借方・貸方を逆にした再振替仕訳を行います。
損益振替と繰越利益剰余金(締切の流れ)
決算整理がすべて終わったら、収益・費用の各勘定残高を「損益」勘定に集約します。収益は借方に、費用は貸方に記入して振り替えます。損益勘定の貸借差額が当期純利益(または当期純損失)で、これを繰越利益剰余金へ振り替えて当期の損益計算を締めくくります。資産・負債・純資産の各勘定は、金額をそのまま次期へ繰り越します。
| 場面 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 収益の振替 | 売上 等 | 500,000 | 損益 | 500,000 |
| 費用の振替 | 損益 | 420,000 | 仕入 等 | 420,000 |
| 純利益の振替 | 損益 | 80,000 | 繰越利益剰余金 | 80,000 |
表の読み方:収益・費用をいったん損益勘定に集め、その差額(当期純利益)を繰越利益剰余金へ振り替えます。この一連の仕訳を締切仕訳と呼び、翌期はゼロから収益・費用の記録を始めます。
例題で型をつかむ
当期の8月1日に向こう1年分の保険料24,000円を現金で支払い、支払時に全額を保険料として計上していた(当期の決算日は3月31日)。決算にあたり、このうち次期分(4か月分)を前払費用として繰り延べる。決算整理仕訳を示しなさい。
- 期間を確認する:8月1日に支払った1年分24,000円のうち、当期分は8月〜3月の8か月分、次期分は4月〜7月の4か月分です。
- 次期分の金額を計算する:24,000円×4/12=8,000円です。
- 勘定を決める:次期分は当期の費用ではないため、保険料(費用)を減らし、前払費用(資産)を増やします。
- 仕訳を書く:借方 前払費用8,000/貸方 保険料8,000。
| 場面 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算整理 | 前払費用 | 8,000 | 保険料 | 8,000 |
ここで迷ったら:「これから先の期間の分」だから資産(前払費用)で借方に置く、という向きを思い出しましょう。反対に保険料(費用)を増やす向きに書いてしまうミスに注意します。
当期末までに支払家賃60,000円分の使用期間がすでに経過しているが、支払いは翌期に行う契約のため、当期はまだ1円も支払っていない。決算整理仕訳と、翌期首の再振替仕訳を示しなさい。
- 状況を確認する:当期分の家賃はすでに発生済みですが、まだ支払っていません。
- 勘定を決める:費用(支払家賃)を計上し、対応する未払費用(負債)を計上します。
- 決算整理仕訳を書く:借方 支払家賃60,000/貸方 未払費用60,000。
- 翌期首を考える:再振替仕訳として、決算整理仕訳の借方・貸方を逆にします。
| 場面 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|---|
| 決算整理 | 支払家賃 | 60,000 | 未払費用 | 60,000 |
| 翌期首(再振替) | 未払費用 | 60,000 | 支払家賃 | 60,000 |
ここで迷ったら:未払費用は「もう発生しているのに、まだ払っていない」費用です。前払費用と逆向きになる点、そして翌期首に必ず再振替を行う点をセットで覚えましょう。
よくあるミス
ミニ演習(5問・即時採点)
Q1. 当期の9月1日に向こう1年分の地代36,000円を現金で支払い、支払時に全額を支払地代として計上した(決算日は3月31日)。決算日時点で次期分5か月分を前払処理する。仕訳は?(答えを見る)
借方 前払費用15,000/貸方 支払地代15,000です。9月〜3月の7か月分が当期の費用で、4月〜8月の5か月分が次期分です。36,000円×5/12=15,000円が次期分にあたります。
Q2. 当期分の給料の未払いが12,000円ある(まだ仕訳していない)。決算整理仕訳は?(答えを見る)
借方 給料12,000/貸方 未払費用12,000です。すでに発生済みの費用で、支払いだけが翌期になるため未払費用(負債)を計上します。
Q3. 受取家賃のうち次期分24,000円を前受けとして繰り延べる。決算整理仕訳は?(答えを見る)
借方 受取家賃24,000/貸方 前受収益24,000です。次期の収益を先に受け取っているため、収益を減らし前受収益(負債)を計上します。
Q4. 期末に未使用の収入印紙4,000円が残っていた(購入時に租税公課として処理済み)。決算整理仕訳は?(答えを見る)
借方 貯蔵品4,000/貸方 租税公課4,000です。未使用分は資産である貯蔵品に振り替えます。
Q5. 損益勘定で計算された当期純利益は、最終的にどの勘定へ振り替えるか?(答えを見る)
繰越利益剰余金です。損益勘定の貸借差額(当期純利益)を繰越利益剰余金へ振り替えて、当期の損益計算を締めくくります。
決算整理は8項目に整理でき、このページでは貯蔵品と経過勘定(前払費用・前受収益・未収収益・未払費用)の決算整理仕訳と、翌期首の再振替仕訳をセットで扱いました。最後に収益・費用を損益勘定へ振り替え、当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替えて締め切ります。